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29話:悪役令嬢と追跡ミッション②

殿下たちは楽しそう。

視線の先には花畑でキャッキャウフフ。

町遊びではない、正真正銘のデートでしてよ。


その一方で、ワタクシたちは気まずいですわ。


例のカップルジュースの件。

ふとしたときに思い出してしまいますもの!


「あ、アベル?」


「なんだい、アイリ。」


「なんでも、ありませんわ、呼んでみた、だけですの。」


「そ、そうか、ハハッ。」


くぅ~~~!

なんと会話すればよいのでして!


頼みのメイディも、なぜか機嫌が悪いですわね。

先ほどから無言ですし、笑顔なのに目が笑っておりませんし……。

どうしたのでしょう?


「……。」


「……。」


「……。」


誰も話さない。


殿下たちだけが、花畑の向こうで楽しそうに笑っている。


……なんだか、尾行しているこちらの方が疲れてきましたわ。


まぁ、ミッションは完了みたいなところもありますし、終わってしまってもよろしいかもしれませんわね。あの二人が幸せなら、それでオッケーなわけですもの。


「アベル、メイディ、そろそろ帰り―――」


そのとき――


「――あら?」


聞き覚えのある声が耳に届いた。


ワタクシは反射的に振り返る。


そこにいたのは、豪奢なドレスを身にまとった一人の令嬢。


メリアレネ・ハースヴァン公爵令嬢。


「アイリーン様ではありませんの。」


……よろしくありませんわ。


今、この御方に殿下とリシィを見られるとマズイですわ!


「き、奇遇ですわねぇ!」


「なんでアナタがここに?」


「そそそそそそそ、それはぁ!」


急なことで、舌もうまく回らない。


そうこうしているうちに、その目線はアベルを捉えた。


「それに…? えッ!? あなたは!? 殿下の護衛の…どうしてここに?」


「そ、そう、護衛だ。護衛で来ている!」


「ということは、殿下もおりますの?」


ヒィィィィィッッ!


なんて受け答えしてやがりますの!?

緊急事態に使えない男ですわねぇ!


メイディが殿下たちを隠す位置にサッと移動。

優秀な部下に負けてはおりませんわ。


唸れ! ワタクシの灰色の脳細胞!


「ワタクシたち、デート中ですの!」


「「えっ!?」」


なんでアベルまで驚くのですの!

くっ、メリアレネ様が怪しんでおりますわ!


これはもう、秘儀『オタクは早口で喋る戦法』ですわ!


「ワタクシ、護衛を依頼という体裁で、デートにかこつけましたのよ?」


「ハァ!?」


「ガランデ家は兄が継ぐ予定で、しかも、貧弱な兄ですから家格を上げようなんて気はまったくない。ですので政略結婚は皆無……ワタクシは自由恋愛をしてもよいと言われておりますの。そこで視野を広げて観察していましたら……ほら、アベルって殿下のせいで隠れがちですが、どちらかと言えば整った部類の顔立ちをされているでしょう? それに騎士を目指す者ですから、筋肉だって素晴らしいものを持っていますの。ワタクシ、アベルの大殿筋と上腕二頭筋が好みですので、このように…気付いたら触りまくりの毎日ですわ。アベルに並んでも恥ずかしくないよう、ワタクシ自身も最近になって筋肉を鍛え始めたりもしましてよ。あっ、ハースヴァン様には譲る気はございませんわよ、この筋肉はワタクシのモノ…もしも同族だと言うのならば戦争ですわ! 相手がいくら公爵家だったとしても、例え貴族界から追放されようとも、この愛を止めることだけはできませんもの!」


「い、いらないわよ! あなた一人で勝手にしなさい!」


「あら、その返事はその返事で、アベルが認められていないみたいで癪に触りますわね。……ずっとワタクシは『にこやか爽快イケメン』こそが至高だと思っておりましたが、『チョロくて不遇で平凡でカワイイ系だけども、いざとなったら頼りになってなんやかんや優秀の部類だったりするギャップ』というものに魅力を感じ始めましてね。そういえば――――」


「もう分かったわよ! 惚気話なんて聞きたくもないですわ!」


メリアレネ様は忌々しそうにワタクシたちを睨みつけると、ドレスを翻して去って行った。まるでこの場から早く去りたいかのように、護衛を置き去りにしてズンズンと。


あっ、躓きましたわ。


「……。」


「……。」


「……。」


足音が完全に遠ざかったことを確認し、ワタクシはようやく肩の力を抜く。


「ふぅ……危機一髪でしたわ。」


「上手く誤魔化せた、のかな。」


「たぶん大丈夫ですわ。少なくとも、殿下とリシィには気付いておりませんでしたもの。」


これで任務達成ですわ。


……そう思った、そのとき。


「アイリ……。」


「なにかしら?」


「僕を、チョロくて不遇で平凡でカワイイ系だと思っていたの?」


「………ンン、コホン。」


さ、さぁ~て! リシィたちはどうなりましたかしら~!


【皆さまへ】


コチラの作品を読んで楽しんだら、高評価をしてくださると嬉しいです。


そして、何よりも嬉しいのは作品に対する直接の言葉です。

なので、コメントしてくださるともっともっと嬉しいです。


よろしくお願いします!


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