2話:悪役令嬢とお礼参り
実はこの学園、学力でクラスが分けられておりますの。
入学早々に選別だなんて、随分とせっかちな学校ですこと。
ですが、まあ、さすが『学力第一』を謳う学園ということでしょうか。
Aクラスは名の知れた名家ばかりだと、そんな噂を耳にしますわ。
一応は『学力さえあれば誰でも入れる』となっているらしいですけれど、実質は貴族と大商家の天下ですわね。子供というのは育った環境で決まるもの、どう足掻いたって覆せない残念な事実ですわ。
さて、肝心のワタクシはですが……
……Dクラス、ですの。
ABC、Dのクラス。
E以下のクラスはなくてよ?
もう!
買収した教師の笑顔を返してほしいですわっ!
はぁ……まったく、あの方は演技派でしたのね。
今回は見抜けなかったワタクシの負けと致しましょう。
……ですが、ご覧になって?
周りの方々がワタクシを見てヒソヒソしておりますわよ。
"あれは悪役令嬢!?オーラを感じる!!"となっているはずですわ。
そうでしょう? そうと言ってくださいまし?
『あれが噂の一攫千金令嬢か…初めて見た。』
『Dクラスのくせに堂々としてるな…伯爵家だろ?』
『肝が据わってないと賭博では勝てないってことなのね?』
『…あの髪型、古いなぁ。』
……ほほう?
ワタクシが聞こえないとお思いで?
まぁ? ワタクシは敢えてDクラスに入っただけですから?
本気を出してしまうと、皆が絶望してしまいますの。
ワタクシなりの優しさってやつですわ?
べ、別におバカってわけでは…ない…そう、ないのでしてよ。
試験勉強の内容がもうすでに頭から抜け落ちてるなど…ぐっ…。
「ふんっ、好きなように言えばいいのですわ! そんなことよりも朝に会ったあの娘はどこの…襟ピンの色的に同学年であることは確かなのですが。」
DECにはいなかったですし、Bにすら…ということは…!?
『――困ったら、相談してね。』
『はっ、はい! ありがとうございます!』
おっと、やはりAクラスにおられましたわ。
可愛くて優しいのに、賢いまで付いているなんて羨ましいですわ。
これだとまるで、最強人間てんこ盛りお得セットですわね。
今ならなんと、学生というオプションまで付きますわ。
しかし、彼女とお話されている金髪のカッコいい男性……どこかで見たことあるような。ってまさか、あのお方はダレン王子殿下ではなくて!? 世事に疎いワタクシでもさすがに分かりましてよ! 国王陛下の次男ですわ!
しかし、王子と天使が並んでいると…絵になりますわねぇ。
ここにスケッチブックがあれば描いてましたのに残念ですわ。
『チッ、平民風情がAクラスに入りやがって。』
『キィィィィ! 殿下の隣にいるなんて許さない!』
『ただの肉屋の娘だって聞いたぜ。』
ふむふむ…それにしても…悪態を吐く人が多いみたいですわね。
予想通りではございますが、随分と嫌われている様ですの。
そう言えば、大商家以外で平民出身の方は一人だけとの話でしたが、まさかあの方がそうだったのですわね。ハァ、能力に貴賤は関係ないということを、皆さまはご理解できないようですわね。
まぁでも、殿下派閥以外の誰かが後ろ盾になればまだマシなのかもしれませんが、そのような酔狂な方はおられないのでしょう。殿下の彼女を見つめる目もなんだか熱っぽいですし、これから大波乱が起きることは確実ですもの。
ん…?
あれ…待ってくださいまし?
シンナの大奮闘記に当てはめて考えますと…。
彼女のポジションはシンナということではございません?
男爵どころか平民とは、ヒロイン格はシンナより高いですわね。
ふっ、ヒロインと王子が揃うなんて……悪役令嬢の魂が騒ぎますわ。
ワタクシの方が不利な盤面ですが、ひっくり返してこそですもの。
「しかし…お礼を申し上げに来たのに、さすがの私もこれに入ることはできませんわ。しばらく落ち着いてから出直すといたしましょう。」
お礼代わりにワタクシが後ろ盾になって差し上げることも考えましたが、未来のライバルであるというのならば話は違いますわね。少し心が痛み…って、悪役令嬢がこんな気持ちを抱いてはいけませんわ!
もちろんのこと、感謝はしていますわ。
ですがコレはコレ、ソレはソレ。
名前はまだ知らないけれど、あなたはワタクシが倒しますわ!
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