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22話:悪役令嬢と出歯亀根性

最近、気になることがありますの。


殿下とリシィの距離感がやけに近い。


物理的な距離感とは精神的な距離感、しかも王子という立場なら尚更のはずなのに、殿下は異性の中でリシィだけに近距離を許しておりますの。悪役令嬢測量術で言いますと親密度はレベル14――親友以上恋人未満ですわね。


あと、ワタクシとアベルを二人っきりにさせようとしてきますの。


「ふ~む、もしかすると、殿下の計画は……。」


ワタクシは現在、アベルといっしょに生徒会資料室で探し物最中。対して殿下とリシィは生徒会倉庫の方で探し中。すぐ見つけなければならないわけでもないものを、他の生徒会役員が不在の時にわざわざ探している――その理由など一択しかありませんわ。


ずばり!


色恋沙汰ですわ!


「えっと、計画って?」


ワタクシの呟きにアベルが反応。

この真面目さんめ、きちんと探していますわね。


「最近、ワタクシたちは仲が良い……ということに間違いはないですけど、殿下はその仲をさらに深めさせようと動いている。それはアベルもお気づきでしょう?」


「まぁ、うん、そうだけど。」


「どうしてなのか、お分かりで?」


「………仲が良いのは素晴らしい事だから?」


か~~ッ! この融通の利かない鈍感男め!

あの殿下がそんな浅はかなわけございませんでしょうに!

ダメダメのダメ、ゼロ点の解答ですわ!


「仲が良いのはワタクシたちだけでない。殿下とリシィもですわ。」


「何が言いたい。」


「ワタクシの予想では、殿下の片想い。」


「えっ!? まさかのそっち!」


「だが殿下は王子で、リシィは平民。公にはできません。」


「あぁ、うん。」


「そこでッ! ワタクシたちの関係を気にしているということにすれば、二人が裏でどれほどイチャコラしようとも誤魔化すことができる……そういう計画なのでしてよッ! 言わば隠れ蓑ってやつですわッ!」


「な、なるほどッ!」


まぁ、別にワタクシもアベルといるのは嫌なことではありませんし、殿下にはテスト勉強を手伝ってくださったという御礼がありますもの、感情的な問題は決してございまんわ。


ですが、リシィはワタクシの舎弟ですわよ?


隠れてコソコソするにしても、ワタクシには報告するというのが『筋を通す』というものでございましょう? そして、ワタクシの目が届く範囲でイチャコラするべきなのですわ。面白そうですので、ちょっかい掛けたい……あっ、これが大本命の理由ですわね、オホホホ!


決めましたわ!

ワタクシ、愛のキューピットになりますわ!

他人の恋愛事情をかき乱す、これぞ悪役令嬢!


「アベル様はどうしたいのでして? 殿下の臣下でございましょう? 例え殿下が将来としては王弟という立場になるから、そこまで家格は気にする必要もないと言えども……リシィは平民ですわよ。」


「う~ん、殿下の何かを求めて仕えているというわけでもないから、個人としては家格よりも人柄を重要視してほしい気持ちではある……個人としては、ね。協力はしたいけど、無理してまではってところかなぁ。」


なるほど、少なくとも学生の間だったり、愛人関係だったりならといったところ。でしたら、ワタクシが交渉すれば味方にはなってくれそうですわね。念頭に入れておきますわ。


そうとなれば、不可能ではなさそうですわね。


やりきってみせますわぁ!



 ― ― ― ― ― ―



ということで、いつものメイディへの相談タイムですわ。


「恋の発展方法を教えてくださいまし、メイディ。」


「…………恋、ですか。」


すると、彼女は立ち上がってどこかへ行き、戻って来たかと思いましたら包丁と砥石を手にしておりましたわ。シャ~コシャ~コという一定のリズムから放たれる圧力は、さしものワタクシも話しかけられないほど真剣ですの。


最近、メイディが包丁を研いでいる姿を頻繁に見ますわ。

しかも、このように鬼気迫る……いえ、鬼気すら逃げるほど。


メイドとしての矜持ってことですわね。

プロフェッショナルとして道具の手入れは厳格に。


「あ、あの、メイディ…?」


しばらくの沈黙、ワタクシは勇気を振り絞って話しかける。

邪魔はしたくありませんが、話が進まないのはもっとダメですわ。


「先ほどの相談……お嬢様の恋を成就するため、でしょうか。」


「え? どうしてそのような話になりまして? ワタクシ自身としましては、今のところ『恋愛』という言葉からはかけ離れた人間でしてよ? まぁ、確かにいろんな人を『キープ』状態にしようと画策していますが、なんだか乗り気になれそうな人にはまだ出会えておりませんの。」


「………あれ?」


「ん?」


この感じ、おそらく、何か誤解が生じていましたわね。


だとしたらその誤解内容は会話から察するに、ワタクシの恋愛事情だということで間違いないでしょう。いやはや、一切と言えるほどに皆無な状況の中、どうしてそんなことに……。


ハッ! もしかしたらこれも殿下の策略というやつですの!? 将を射んと欲すればまず馬を射よ、ならぬ、パーフェクト悪役令嬢を射んと欲すればまずパーフェクト敏腕メイドを射よ……『ワタクシとアベルの関係を気にしている計画』の地盤を固めるために、メイディに対してデマを流していたのでは!?


とんでもない男ですわ。

とんでもないですわ、殿下。

恐ろしいほどの腹黒男よ。


ですが、間一髪で悪役令嬢が阻止しきった。

デマ情報を正すことには成功しましたわ。


「ワタクシが気にしているのは、殿下とリシィですわよ。」


こっちが嘘偽りのない本当の情報。

ワタクシではなく、殿下の恋愛事情。

悪役令嬢に誤解などはありませんわ。


その言葉にメイディは研いでいた包丁をカランと落とす。しばらくの間を茫然としておりましたが、すぐにハッと気づいて包丁と砥ぎ石を拾うとどこかへと向かう。戻って来る頃には手ぶらだった。


「ならば、ご協力いたしましょう。」


澄み渡った青い空のような表情。

まるで世界平和でも訪れたかのようですわね。

メイディの憂いが無くなったのなら、良きですわ。


「かの御二人のご関係がこじれてしまうことがあってはいけません。主の友好事情を守るのも、メイドの仕事でございますので。」


はへ~、そんなこともメイドの職務でしたのね。

ワタクシ、知りませんでしたわ。


「それと、もしもお嬢様の今後に、気になる殿方が現れた場合は、この私めにまずはご報告ください。相手の人柄や好みなどを調べておくのも、メイドの仕事でございますので。」


はへ~、そんなこともメイドの職務でしたのね。

ワタクシ、知りませんでしたわ。


「最後に、もしも、仮に、可能性として、殿方に泣かされるようなことがございましても、私に………任せてください。始末…ンン、ゴホン…抹殺、いえ違います、消滅、撲滅、破壊………とにかく、何かしらするのもメイドの仕事でございますので。」


はへ~、そんなこともメイドの職務でしたのね。

ワタクシ、知りませんでしたわ。


さすがメイディですわ!



【皆さまへ】


コチラの作品を読んで楽しんだら、高評価をしてくださると嬉しいです。


そして、何よりも嬉しいのは作品に対する直接の言葉です。

なので、コメントしてくださるともっともっと嬉しいです。


よろしくお願いします!


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