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21話:悪役令嬢と仲良し集団

最近、いろんな人に話しかけられるようになりましたの。縄張り意識の高い方々からは相変わらずの敵対関係ではありますけれど、そうではない温厚な方々が寄って来るのですわよね~。


これはつまり、アレですわね。


悪役令嬢も派閥争いの仲間入り、ってことですわね!


きっとあの方々は温厚すぎるがゆえに、貴族界の雌豹の狩場に臆してしまい、ワタクシのように最強の存在の庇護下に入りたいと思っているのですわ。ふ~、ワタクシの一番舎弟はリシィでございますが、そろそろ二番手以降も決めていかないといけませんわねぇ。


ワタクシ、器の大きさには自信がありますわ。

百人でも千人でも、抱え込んでさしあげましてよ。

オ~~ホッホッホッホ!


と、そんな風に思っていましたら早速、視界の奥から温厚令嬢集団が歩いてこられましたわ。どうやら、ワタクシに用事があるようで、こちらに真っ直ぐ行進中ですの。


「「「おはようございます。ガランデ様。」」」


「ごきげんようですわ。あの…ワタクシに…御用でも…?」


「はい、そうなのでございます。まずはこちらを。」


そう言うと一番先頭の御方――同じ伯爵位出身で二学年上のサーラ・レピスタ様――は小脇に抱えていた本をワタクシにお見せするのでした。なになに…え~っと……タイトルは『真実の愛のリンディーナ』……知りませんわねぇ。


「レピスタ様、こちらは?」


「今、流行りのラブロマンス小説ですわ!」


「はぁ…?」


「それがですねぇガランデ様、悪役令嬢が主人公なのです!」


「え!?」


悪役令嬢が!?

聞き捨てなりませんわ!


「主人公のリンディーナという令嬢がですね、いろんな方面に突っかかったり押し退けたりして、人から嫌われ恐れられているんです。そのせいで婚約破棄までされたあげく、辺境の冴えない男と政略結婚することになってしまう。物語としては、ここからがスタートなんです。」


「ほ、ほぉ。悪役令嬢が落ちた後の話なのですね。」


「ですが、本当の彼女は……お節介焼きでありながら素直になれない……って性格だったんです! つまり勘違い! 嫌われは勘違いによるものだったんです! で、その魅力に一番最初に気付いたのが新たな結婚相手で、相手はリンディーナという沼にハマってしまうんです! 万人受けする可愛さではないんです、『嫌いな人は嫌いだけど、分かる人には分かる可愛いさ』ってところが魅力的なんですよぉ~~! キャッ!」


ふ~ん、それはちょっと読みたくなりますわねぇ。

言ってしまえばリンディーナはエセ悪役令嬢ということみたいですし、ワタクシが誰かに蹴落とされるようなこともございませんが、それでも『悪役令嬢』が題材でございましょう?


いえ、決して、もしもの事態のためではございませんわ?


「それは面白そうですわね。」


「ガランデ様ならそう言うと思いましたわ! お貸ししますので読んでくださいな! そして、私たちといっしょに語らいを致しましょう! 実は最近、私たちも悪役令嬢の良さに気付いてきたんですの!」


な・ん・で・す・と!


悪役令嬢の良さに気付いたですって!?


はは~ん、なるほど。これでやっと理解出来ましたわ。つまり、この方々はワタクシの庇護下に入りたかったというわけではなく、パーフェクト悪役令嬢なワタクシに憧れていたということでしたのね?


ムフ、ムフフフ…。


そんなときでした――


「楽しそうだね。何を話していたんだい?」


「「「きゃっ! 殿下!」」」


そこに登場したのはダレン殿下とアベル様。

レピスタ様たちは頬を赤く染め、満面の笑みですわね。

久しぶりに殿下のモテモテ具合を目の当たりにしましたわ。


「殿下、今はガランデ様とこちらの本について話をしておりましたの。ご存じでしょうか?」


「読んだことないなぁ。ラブロマンス系かい?」


「はい!」


殿下は本を手に取ると、パラパラとめくる。

どうやら趣味ではないようで、殿下はすぐに本を返した。

しかし、横から見ていたアベル様は反応したのだった。


「あっ、この本、僕も読んでいますよ。」


「「「「え!? アベル様が!?」」」」

「アベル、君が読むのかい!?」


アベル様が本を?


しかもこのようなジャンルを?


ワタクシたちは全員が茫然とし、思考処理がなかなか追い付かない様子。アベル様はそんなことを意にも返さないが如く、淡々と口を開くのでしたわ。


「だってこれは、悪役令嬢が主人公ですよね?」


「はい。」


「その…なんというか…言葉にするのは恥ずかしいけど、僕はガランデ嬢の生き様が……好ましい…そう、好ましい! 好ましいと感じるようになったんだ! 昔は、僕も、憧れを目指そうとした時期があったから!」


「「「「ほう?」」」」


「それで、ちょ、あの、悪役令嬢モノを読み始めたということで…。」


え? ワタクシが…好ましい?

しかも、憧れを目指そうとしたことが?

な、なにを言っておりますの…。


「「「きゃ~! やっぱり! そうだと思っていましたわ!」」」

「あぁ、これで確定だね。アベルはやはり…フフッ。」


「さすがに言葉にすると、恥ずかしいですね…。」


「まぁよろしいではございませんの! ガランデ様も嬉しいですわよね! ねぇ! あ、あれ…ガランデ様? その表情は、どの感情でして? えっと、あの、現実に戻ってきてください、ガランデ様。」



まさか――



まさか――



――アベル様が『悪役令息』を夢見たことがあったなんて!



ワタクシ、ちっとも気が付きませんでしたわ。ですがよくよく考えれば、殿下の護衛をするとなれば、悪役令息などもってのほかでございますものね。憧れを取るか、主君を取るか、きっとアベル様も苦渋の決断だったことでしょう。


このアイリーン、アベル様の無念をしかと胸に刻みましてよ!


「アベル様、いえ、アベル。」


「あっ、はい。」


「ワタクシのことは今後、アイリーンもしくはアイリとお呼びなさい! 敬称など不要、馴れ馴れしくとも結構でございますわ! この悪役令嬢が許可しますもの!」


「あ? え? ん? なに…急に?」


「だって、ワタクシたちは同志ですもの!」


ワタクシはアベルの両手をガッシリと掴む。

その手は騎士らしく筋肉質、そしてなにより温かい。

きっとワタクシの想いも、伝わったことでしょう。


「ワタクシも、アベルを好ましく思っておりましてよ!」


レピスタ様たちの黄色い声は、ワタクシの耳には入らなかった。



【皆さまへ】


コチラの作品を読んで楽しんだら、高評価をしてくださると嬉しいです。


そして、何よりも嬉しいのは作品に対する直接の言葉です。

なので、コメントしてくださるともっともっと嬉しいです。


よろしくお願いします!


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