16話:悪役令嬢とモテモテ大作戦
とりあえずその日の勉強会は真面目に実施。
いやぁ~、賢い方々と勉強すると、こちらも賢くなりますわね。
この調子ならきっと先生のお小言を受けることもないでしょう。
帰宅したワタクシは、さっそくメイディに相談ですわ。
「さぁメイディ、作戦会議ですわ!」
「ほい来たでございます、お嬢様。」
「ワタクシ、本格的に男を堕としにいこうと思いますの。ですが、具体的に誰をというのは決まっておりませんので、片っ端からの、俗に言う『キープ』状態にしておくことにしましたわ。」
「まぁ! なんと悪役令嬢なことでしょう!」
そうでしょう! そうでしょう!
すごく悪役令嬢でしょう!
想像してごらんなさい。
――椅子にふんぞりかえるワタクシ、そして足元には男ども。
――ひじ掛けに座るリシィの腰を抱きながら、高笑い。
ス・テ・キ !
「となれば、『インパクトのある形容詞』が大事になりますね。」
「いんぱくとのあるけいようし?」
「はい。人は得られた情報からでしか価値を推し量ることはできません。つまり、どれだけ綺麗事をならべようとも、『実は~』だとか『中身は~』だとかという言葉は、交流の少ない人への評価にはなりえない。そこを求めるのはモテない人の言い訳でございます。そういった部分を評価してほしいなら、もっと長い時間で、もっと接し合わなければならないのですから。」
「では、もっと生徒会と交流しろ、と?」
「いいえ違います。得られる情報からでしかというのは、情報を得させることができるという意味の裏返しでもあります。『インパクトのある形容詞』……これこそが人間評価の基本なのです。評価なんてものはいくらでも操作できますので。」
「確かに…ワタクシもリシィと出会ったときの第一印象に引っ張られ、今でもこうやって舎弟にしてますものね。ですが彼女を嫌っている人が存在するのも確か…それは人によっての『インパクトのある形容詞』が違うから…ということですのね!」
「さすがはお嬢様、ご理解が早い。」
しかし、そうはいっても難しいものですわね。
ワタクシは見目容姿に関して言えば地味なところがありますから、肝心の『どんな形容詞』をベースにするのがいいのか分かりませんわね。『可愛い』で行くにはリシィのせいで霞みますし、『妖艶な』なら胸が乏しく、『カッコいい』とするには相手側の悪役令嬢へのご理解が必要ですわ。
うーん…うーーーん…。
……仕方ありませんわねぇ。
「メイディ。」
「なんでしょう。」
「ワタクシをプロデュースなさい。」
「御意。」
悩んでも時間が過ぎるだけですわ!
すべてはメイディ任せ、これで万事解決ですの!
今日の勉強会の復習でもしようかしら~。
― ― ― ― ― ―
次の日――
生徒会の活動が終わる時間帯。
今日も、ワタクシたちは勉強会をすることになりましたの。
ワタクシの隣の席は生徒会書記のジャックさん、子爵家出身の方ですが勉強を教えるのがお上手。しかも、悪役令嬢オーラに慣れてきたのか、ワタクシに対する態度も今ではもう柔らかいものになっておりますわ。
彼をターゲットにして、魅了の実験ですわ!
【レッスン1:人は頼られると嬉しい】
弱い部分を見せることで、庇護欲を刺激するのですって。
まずは、わざと鉛筆を落とし、ジャックさんの足元へと転がす。
「ア~、オトシチャッタ! テヘッ!」
そこから次は…えぇっと…上目づかい…でしたっけ?
それって何ですの? 聞いたこともありませんわね。
さも当然のようにワードが出たので、スルーしてしまいましたわ。
字面的に、上から見るようにすれば良い、ってことかしら。
よし、やってみますわ。
顎を上げて、相手の目を見つめるようにし、笑顔で――
「そこのあなた? 取ってくださらない?」
「えっ、は、はい!」
ビクリと肩が跳ねたかと思えば、ジャックさんはすぐに目を逸らしましたの。これってあれですわよね、『テレ隠し』ってやつですわよね! そして彼は、急いで落ちた鉛筆を拾おうと、机の下へと体を屈めて……あらあら、期待に応えようと一生懸命ですわね、フフフッ。
そうとなれば、次は――
【レッスン2:魅力となる身体部位を主張せよ】
脚! ワタクシは美脚ですの! 見せつけましょう!
少しだけ太腿もサービスでチラリとな。
これで悩殺メロメロ確定でございますわ!
ゴンッ!
机に頭をぶつけた音がしたかと思ったら、「イテテ…」という声が。立ち上がろうとしてぶつけてしまったのかしら、さすがのワタクシもちょっと心配になってきましたわ。
そう思って机の下を覗こうとしたとき、ふと閃きましたわ。
【レッスン3:さりげないスキンシップ】
確かメイディはそう言っていましたわね。
さらに、ワタクシは思いますの、【レッスン1】【レッスン2】【レッスン3】は同時に実行することができるのでは?、と。いえ、できますわ、やっても矛盾などありませんもの。
つまり、『さりげないスキンシップをしながら魅力となる身体部分を主張し、その状態で相手の庇護欲を刺激するようなこと言う』ということですわね。となれば、魅了を通り越して…もう…その…なんというか…とにかく……ものスゴイ精神状態になってしまうことは間違いなしなのですわ!
天才だ…ワタクシは天才ですわ!
善は急げ、即実行でしてよ!
1:学園指定靴を脱ぐ。
2:ジャックさんの頭の上に足を乗せる。
3:上目遣いで「ありがとう」と言う。
――その結果ッ!
――なんとッ!
――生徒会からつまみ出されてしまいましたわ。
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