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『時環境界と四系統の継承者』  作者: あらけい
第一部 結界の森と、帰る場所

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第77話 カコに村門前へ送られたので、ラウルたちと魔物を迎え撃つことになりました

 次に目を開けた時に瞳に映ったのは、見慣れた村の木製の門だった。


 湿った土や草、森の匂いが鼻へ届く。それだけで、地下の中層ではなく地上へ戻ってきたのだと分かった。


 金色の転送光が完全に消えるよりも早く、俺は声を張り上げた。


「ラウルさん!」


 外へ出ようとしていたラウルが、弾かれたように振り返った。


「ケイ!?」


 その周囲にいた、槍を持つ男二人と弓を手にした若い女性二人も、突然現れた俺へ反射的に武器を構えた。


「なぜ、お前がここにいる!」


「説明はあとです!」


 俺は背中から無銘刃の姿をしたミメシスを抜き、森の方を向きながら話した。


「第三遺跡側の監視石の光が消えました!」


「それなら分かっている」


 ラウルが答える。


「だから、これから第三遺跡側へ調査に向かうところだ」


「行ったら駄目です! 魔物が来ています!」


 ラウルの表情が、一瞬で変わった。


「どこからだ!」


「第三遺跡側の森です! 中層の監視設備室から確認しました!」


「数は?」


「正確には分かりません。でも複数です。今も村へ向かっています!」


 質問を重ねなかったのは、俺が冗談や嘘を言っているのではないと、すぐに判断したからだろう。


 次の瞬間には、門の内側へ向かって大声を張り上げていた。


「第三遺跡側への調査は中止だ! 門を閉めて、警戒鐘を鳴らせ! 戦えない者は村の集会所へ下がれ!」


 命令を受けた村人たちが、一斉に動き始めた。


 荷物を運ぶ者、門を閉じる準備をする者、弓を手に見張り台へ駆け上がる者たちが、それぞれの持ち場へ向かっていく。


 さっきまで調査へ出る準備をしていた巡回隊員たちも、すぐに動きを防衛へ切り替えた。


 槍を持った男二人が、俺の左右へ並ぶ。


「ケイ」


 ラウルが剣を抜きながら尋ねた。


「戦えるのか?」


「そのためにカコから、ここへ送ってもらいました」


『我もいるぞ!』


 ミメシスが、待っていましたとばかりに声を上げた。


「ケイ」


 ラウルが少し驚いたように俺を見た。


「カコが、お前をここへ?」


「今、カコは中層に残っています。そこから結界と監視設備を操作して、村を守ろうとしてるんです」


「……そうか」


 ラウルはそれ以上何も聞かず、剣を正面へ構えた。


「ケイ、ミメシス殿。助かる」


「感謝は、全部終わってからでいいです」


『我へは今してもよいぞ!』


「お前は少し黙ってろ!」


 森の奥から枝が折れる音が響いた。


 バキッ。


 続いて、先ほどよりも近い場所から激しく草木をかき分ける音が聞こえてくる。


 ガサガサガサッ!


 俺たちは一斉に森へ視線を向けた。


 木々の隙間に、赤い光が一組浮かび上がる。


 さらに二組、三組と増えていき、その奥にも数え切れないほどの赤い光が次々と現れた。


「来たぞ」


 ラウルの声が低くなる。


 森の中から姿を現し始めたのは、以前戦った灰色の狼型魔物たちだった。


 狼型魔物たちは、村へ続く道を守る俺たちへ牙を見せながら近づいてきた。


 さらにその後ろでは、森の奥から新たな影が動き始めていた。


「本当に、かなりいるな……」


『ようやく我の出番だ!』


「今度は勝手に重い武器になるなよ!」


『状況に応じる!』


「それが一番信用できない!」


 遠く離れた中層では、今もカコが透明な球体の前に立ち、結界を操作している。


 今は離れた場所にいるが、それでも俺たちは同じ目的をもって、村を守るために戦おうとしている。


 俺は無銘刃を両手で握り直した。


「村には入れさせない!」


 その声に反応するように、狼型魔物たちが一斉に森の中から飛び出してきた。

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