↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『時環境界と四系統の継承者』  作者: あらけい
第一部 結界の森と、帰る場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/125

第50話 北の転移塔へ向かう朝、第三遺跡の監視石が消えました

 夕方になった頃、カコはルカたちと一緒に、俺たちが借りている家まで戻ってきた。


「明日も遊ぼう!」


 ルカが言う。


「明日は、北へ行くかもしれない」


「どこ?」


「転移塔」


「危ないところ?」


「分からない」


「戻ってくる?」


 カコは答える前に、一度だけ俺の顔を見た。


「ああ。村には戻るよ」


「本当?」


 ルカが、念を押すように尋ねる。


「先生の手掛かりが見つからなくても、一度は必ず村へ戻る」


「じゃあ待ってる」


「うん」


 ルカたちは何度も手を振りながら帰っていった。


 カコも今では迷うことなく、自然に手を振り返していた。


「友達ができたな」


 俺がそう言うと、カコは不思議そうに首を傾げた。


「友達?」


「一緒に遊んで、また会おうって約束しただろ。そういう相手を友達って言うんだ」


「それが友達?」


「たぶんな」


「ケイは?」


「俺?」


「ケイも友達?」


 俺は少し考えた。


「俺たちは、普通の友達よりずっと長く一緒にいる気がするな」


「じゃあ、何?」


「何だろうな……」


 家へ入りながら、俺は答えを探した。


 知り合いであり、仲間であり、同居人でもある。守る相手であり、一緒に旅をする相手でもあった。


 どれも間違ってはいない。けれど、どれか一つだけでは足りないような気がした。


「今は、仲間ってことでいいんじゃないか?」


「仲間」


「ああ」


「仲間は、離れる?」


「離れることもある」


 カコの表情が少し曇った。


「でも、離れても戻る場所が同じなら、それでも仲間だと思う」


「戻る場所」


「今は、この村だな」


「そのあとは?」


「それも一緒に決めればいい」


 俺は背負っていたミメシスを外し、いつものように壁へ立てかけた。


 カコが、俺の袖をつかむ。


「結界の家も?」


「あそこへも戻らないとな」


「うん」


「壊れた結界も確認しないといけない」


「畑もある」


「家もそのままだ」


「先生も探す」


「ああ」


「全部、一緒?」


「一緒に考えるって約束しただろ」


 カコは俺の袖から手を離すと、代わりに俺の手をしっかりと握った。


「これなら?」


 俺は、カコに握られた手へ目を向けた。


「何が?」


「嫌?」


「嫌じゃないよ」


「なら、これにする」


「ずっと?」


「人が多いところだけ」


「今は家の中だぞ」


 カコが少し考える。


「今日は多かったから」


「今日一日で見た人の数まで含めるのか?」


「うん」


「ずいぶん便利な数え方だな」


『我が主よ!』


 壁へ立てかけていたミメシスが、突然叫んだ。


『カコに手を握られて、顔が緩んでいるぞ!』


「緩んでない!」


《口角が平常時より上昇しています》


「コーデックスまで勝手に確認するな!」


『やるではないか、全書!』


《評価を受理します》


「そういう時だけ仲良くなるな!」


 カコは俺の手を握ったまま、笑った。


     ◇


 翌朝、俺たちは村長の家を訪れていた。


 身体にはまだ包帯が残っているが、最初に村へ来た時と比べれば、痛みはずっと軽くなっている。


 オルドは机の上に、一枚の古びた地図を広げていた。


「北の転移塔は、村から歩いて二時間ほどだ」


「道は残っているんですか?」


「途中まではな」


 ラウルが答える。


「森の奥へ入れば、ほとんど使われていない」


「魔物は?」


「出る可能性がある」


「同行者は?」


「俺と、巡回隊から二人だ」


「監視ですか?」


「護衛だ」


「少しは信用されたんじゃなかったのか?」


「以前よりはな」


「以前より?」


「少なくとも、村の子供へ危害を加える者ではないとは判断した」


『我は子供たちに大人気だぞ!』


「薪を斬れない剣って呼ばれてたけどな」


『それを広めたのは我が主だ!』


《事実です》


『紙束は黙っていろ!』


 オルドが、地図に描かれた村の周囲を指でなぞった。


「村の周辺には、古い監視石が三つある」


「監視石?」


「村へ魔物が近づいた時に知らせるためのものだ」


《アエテルヌム式感知装置である可能性があります》


「北側にある一つは、転移塔へ続く道の近くに置かれている」


「今でも動いてるんですか?」


「完全ではないがな」


 オルドは少し表情を曇らせた。


「時折、光が弱くなることはある」


「だが……」


 オルドは言葉を切り、俺たちへ目を向けた。


「今朝までは、三つとも動いていた」


「今朝までは?」


 その言葉の直後、家の外から大きな鐘の音が響いた。


 カァン!


 カァン!


 カァン!


 部屋にいた全員が一斉に、鐘の方に顔を向けた。


「何の音だ?」


 ラウルが腰の剣へ手を伸ばす。


 オルドの表情からも、それまでの穏やかさが消えていた。


「警戒鐘だ」


 扉の向こうから、誰かが激しく走ってくる足音が近づいてきた。


 次の瞬間、若い村人が扉を勢いよく開け、息を切らしながら中へ飛び込んできた。


「村長!」


「どうした!」


「南側の監視石が、光を失いました!」


「何だと?」


「第三遺跡へ続く道にあるものです!」


 俺たちが、ほんの数日前までいた古代遺跡。


 その名前が出た瞬間、部屋の空気が一気に張り詰めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。