第34話 機兵と狼型魔物と俺の三つ巴になったので、ミメシスが武器を三つも模倣しました
六本腕の機兵、残った三匹の狼型魔物、そして俺とミメシス。
互いを敵と認識した三者が、広間の中央で睨み合った。
「グルルルル……」
狼型魔物たちは機兵を警戒しながら、こちらにも視線を向けていた。
機兵の赤い光も、俺と狼型魔物たちの間を何度も行き来している。
『我が主、今なら取れる』
「何を?」
『奴の武器だ!』
「この状況で模倣するつもりか!?」
『この状況だからこそだ!』
狼型魔物が六本腕の機兵へ飛びかかると、機兵はその口を狙って槍を突き出した。
狼は首を横へ振って槍の穂先を避け、そのまま柄へ噛みつく。
牙と槍が激しくぶつかり、硬い音が広間へ響いた。
ガキン!
『槍が止まった! 今だ!』
「……やるしかないか。行くぞ!」
俺は床を蹴り、狼型魔物が噛みついている槍へ駆け寄った。
機兵は反対側の腕で別の狼を攻撃しており、噛みつかれた槍の動きは止まっている。
俺はその隙を逃さず、ミメシスの穂先を槍へ押し当てた。
キィン!
ミメシスから溢れ出した黒い靄が、狼の噛みついている槍へ絡みついた。
【解析 _ _ 開始】
【武装情報 _ _ 検出】
【種別 _ _ 重装穿孔槍】
【材質 _ _ 魂導黒鋼】
【内部機構 _ _ 衝撃収束!】
「さっきより情報が多い!」
『今度は絶対に離すな!』
機兵が槍を引き戻そうとするが、狼型魔物は噛みついたまま逆方向へ引っ張っている。
俺もミメシスを槍へ押しつけ、その動きをさらに封じた。
「三方向から引っ張ってるぞ!」
『好都合だ!』
左上から、斧が俺を狙って振り下ろされた。
「全然好都合じゃない!」
俺はぎりぎりまでミメシスを離さず、頭上へ迫る斧を引きつけた。
【武装情報 _ _ 保存】
『模倣完了だ! 取ったどー!』
「離れる!」
俺はミメシスを引き抜き、そのまま横へ跳んだ。
直後、振り下ろされた斧が黒い床へ深く食い込む。
槍に噛みついていた狼型魔物は、そのまま機兵に持ち上げられ、壁へ叩きつけられた。
「ギャウッ!」
『一つ目……! 次だ我が主!』
「少しくらい休ませろ!」
『今しかないと言っている!』
別の狼型魔物が、機兵の長剣を持つ腕へ飛びかかった。
牙が関節へ深く食い込み、黒い装甲がわずかに軋む。
機兵は振り払おうとするが、狼型魔物は腕へぶら下がったまま離れず、長剣の動きも止まった。
『あれだ!』
「分かった!」
俺は機兵の横へ回り込み、動きの止まった長剣へミメシスの穂先を押し当てた。
キィン!
ミメシスから溢れ出した黒い靄が、幅広い刀身を包み込んだ。
【解析 _ _ 開始】
【武装情報 _ _ 検出】
【種別 _ _ 震断刃剣】
【材質 _ _ 魂導黒鋼】
【内部機構 _ _ 振動刃】
機兵が大鎚を持つ腕を振ると、噛みついていた狼型魔物は牙を離し、床へ跳び降りた。
勢いよく振られた大鎚が、長剣を持つ腕のすぐ近くを通過する。
「俺まで巻き込まれる!」
『まだだ!』
「早くしろ!」
機兵の長剣が再び動き始め、俺はミメシスごと横へ引っ張られた。
【武装情報 _ _ 保存】
『二つ目! 模倣完了だ!』
長剣を包んでいた黒い靄が、ミメシスへ戻っていく。
「今度こそ離れる!」
俺は長剣から飛び退いたが、直後に振るわれた三日月形の刃が胸元をかすめた。
服が裂け、浅く切れた傷口から血が再び飛び散る。
「くっ……!」
『まだ動けるな!』
「そこは心配するところじゃないのか!」
『動けるなら次だ!』
「本当に武器のことしか考えてないな!」
三匹目の狼型魔物が機兵の背後から飛びかかり、左上の斧を持つ腕へ前脚を絡みつかせた。
機兵は狼を振り落とそうと腕を激しく動かすが、狼型魔物は爪を装甲の隙間へ食い込ませて離れない。
そのまま機兵が斧を床へ振り下ろした。
ガンッ!
幅広い斧刃が、黒い床へ深々と食い込んだ。
『斧が止まったぞ!』
「三つ目で最後だからな!」
『今はそれでよい!』
「今は?」
俺は床へ食い込んだ斧へ駆け寄り、ミメシスの穂先を押し当てた。
溢れ出した黒い靄が、巨大な斧を包み込んでいく。
【解析 _ _ 開始】
【武装情報 _ _ 検出】
【種別 _ _ 重装断砕斧】
【材質 _ _ 魂導黒鋼】
【内部機構 _ _ 重量加速】
機兵が斧を引き抜こうと腕を持ち上げると、床へ食い込んだ刃が少しずつ動き始めた。
「動いてるぞ!」
『押さえろ!』
「俺一人で押さえられる力じゃない!」
俺はミメシスを斧へ押し当てたまま、柄に全体重をかけた。
しかし、機兵の力は圧倒的で、斧は少しずつ持ち上がっていく。
その時、背後から低い唸り声が聞こえた。
「グルルルル……」
「こっちにも来た!」
先ほど壁へ叩きつけられた一匹が、俺を目がけて走ってくる。
『あと少しだ!』
「間に合え!」
ついに斧が床から抜け、機兵はミメシスを押し当てている俺ごと持ち上げようとした。
【武装情報 _ _ 保存】
『三つ目! 模倣完了だ!』
「遅い!」
俺がミメシスを引いたのと同時に、狼型魔物がこちらへ飛びかかってきた。
「うわっ!」
俺は慌てて横へ転がり、肩をかすめる牙をどうにか避けた。
勢いを止められなかった狼型魔物は、そのまま斧を持ち上げた機兵へ激突する。
巨体をまともに受けた機兵の身体が、わずかに傾いた。
「本当に三つ巴だな……!」
『今のうちに四つ目を……』
「もう駄目だ! カコの停止処理が始まる!」
光の障壁の内側では、カコが中央制御台に両手を置いていた。
制御台の表面を走る青白い光が、カコの手元へ集まっていく。
【血統情報 _ _ 照合】
【緊急停止権限 _ _ 申請】
【認証処理 _ _ 開始】
「どれくらいかかる!」
《不明です》
「またそれか!」




