↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『時環境界と四系統の継承者』  作者: あらけい
第一部 結界の森と、帰る場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/125

第32話 六本腕の防衛個体と戦っていたら、コーデックスが狼型魔物まで呼び込みました

『紙束! 小娘を守れ!』


《可能な範囲で実行します》


『絶対に守れ!』


《あなたからの命令権限は確認できません》


『こんな時まで一言多い!』


「ミメシス!」


『分かっている!』


 防衛個体の赤い光が、わずかにカコの方へ向けられた。


「こっちを見ろ!」


 俺は床を強く蹴って近づき、防衛個体の脚へ向かって斬りかかった。


 ガキン!


 振り抜いた黒い刃が、脚部を覆う分厚い装甲へ激しくぶつかった。


「硬い!」


『同じ場所を狙え! 傷を重ねろ!』


「分かった!」


 二度目も同じ場所へ刃を叩きつけ、続けて三度目の斬撃を振り下ろした。


 ガキン!


 ガキン!


 三度目の攻撃でようやく、黒い装甲の表面に髪の毛ほどの細い傷が刻まれる。


 宝剣セレスティアの形へ変われば、もっと深い傷を与えられるかもしれない。


 だが、魂力刃を維持できるのは数秒だけだ。


 今は防衛個体を倒すことより、カコが中央制御台へ到達するまで攻撃を引きつける方が先だった。


 それと同時に、防衛個体の赤い光が再び俺へ向けられた。


【最優先排除対象 _ _ 確認】


『見たか、我が主! 完全にこちらを見たぞ!』


「喜ぶところじゃない!」


 右上の長剣と左中央の腕が持つ三日月形の刃が、左右から同時に迫ってきた。


 俺は後ろへ下がって二つの刃を避ける。


 だが、その直後には長い槍が真正面から鋭く突き出された。


「逃げ場がない!」


『槍になれと言え!』


「ミメシス、長槍になれ!」


『任せろ!』


 ミメシスの刀身から黒い靄が一気に溢れ出し、刃が縮むと同時に柄が長く伸びていく。


 その姿は、ミメシスが先ほど模倣した施設警備用の黒鋼の長槍へと変わった。


 俺は黒鋼の長槍の柄を黒い床へ強く突き立て、その反動を利用して棒高跳びのように身体を浮かせる。


 正面から突き出された防衛個体の長槍が、俺の持つ長槍の柄へ激しくぶつかった。


 ギィン!


 凄まじい衝撃に押され、俺の身体は黒鋼の長槍を軸にして大きく回転する。


 直後、左右から振るわれた長剣と三日月形の刃が、空中で回転する俺の足元を激しく交差した。


「危なっ!」


『今だ!』


 俺は空中で回転する勢いで、防衛個体の頭部へ蹴りを叩き込んだ。


 ガン!


「硬っ……!」


 蹴りを叩き込んだ足に鋭い痛みが走ったが、防衛個体は微動だにしなかった。


『なぜ蹴った!』


「何か効くかと思ったんだよ!」


『槍を使え!』


「先に言ってくれ!」


 身体が落下し、床へ着地した瞬間、横から振るわれた大鎚が迫ってきた。


「くそっ!」


 俺は長槍を横へ構え、迫る大鎚を受け止めた。


 ドン!


 凄まじい衝撃が長槍越しに伝わり、俺の身体は勢いよく横方向へ吹き飛ばされた。


「ぐあっ!」


 俺は背中から床へ転がり、その衝撃で肩の傷が開いた。


 巻いていた包帯へ、赤い血がじわりと滲んでいく。


「ケイ!」


 カコの声が聞こえ、そちらへ視線を向ける。


 カコたちは壁沿いを半分ほど進んでいたが、広間中央の制御台まではまだ距離があった。


「見るな! そのまま進め!」


「でも、血が出てる!」


「止まってる!」


『止まっていないぞ!』


「お前は黙ってろ!」


 防衛個体が、再び俺へ向かって近づいてくる。


 右中央の腕に握られた長槍は、俺の持つ槍よりも長く、さらに太い。


 その表面には、複雑な青い線が幾重にも走っていた。


『あれを模倣するぞ!』


「今この状況でか!?」


『今しかない!』


「触れたら、そのまま刺されるだろ!」


『我だけを触れさせればよい!』


「それが簡単じゃないって言ってるんだ!」


 防衛個体の槍が鋭く突き出され、俺は黒鋼の長槍を斜めに構えて受け流した。


 ギィン!


 互いの穂先が触れ合った瞬間、ミメシスから黒い靄が一気に溢れ出す。


『捕らえたぞ!』


「何を!?」


 黒い靄が触れ合った所から防衛個体の長槍へ伸び、細い筋となってその表面を一気になぞっていく。


【武装情報 _ _ 検出!】


【種別 _ _ 長槍!】


【解析 _ _ 開始】


 だが、防衛個体が槍を強く引いたことで、伸びていた黒い靄は途中で引きちぎられた。


『接触時間が足りん! 模倣失敗だ!』


「無理だ! 次が来る!」


 頭上から斧が振り下ろされ、俺は横へ転がって攻撃を避けた。


 ドン!


 斧が黒い床を砕いた直後、三日月形の刃が横薙ぎに振るわれ、俺の頭すれすれを通り過ぎる。


 さらに間を置かず、長剣の切っ先が俺の胸へ向かって真っすぐに突き出された。


『我が主!』


「分かってる!」


 俺は槍の柄を使って長剣を受け流したが、完全には逸らしきれなかった。


 切っ先が脇腹を掠めて服を裂き、傷口に熱い痛みが走る。


「くっ……!」


 俺は片膝を床についた。


 その頭上では、防衛個体が大鎚を持ち上げようとしていた。


「ケイ!」


 カコの声が広間へ響くと同時に、その隣に浮かんでいたコーデックスが大きくページを開いた。


《代替策を実行します》


「何をする気だ!」


《私が保管されていた記録保管庫の副搬入口へ接続》


《外部隔壁を遠隔開放します》


「外部隔壁って……まさか!」


『あの狼どもを閉じ込めていた扉か!』


 コーデックスの開かれたページに、記録保管庫の副搬入口が映し出された。


 遠く離れたその場所では、何匹もの狼型魔物が、黒い扉を今も引っかき続けていた。


 ガリガリガリッ!


《記録保管庫・副搬入口を開放》


 ゴゴゴゴゴ……。


 狼型魔物たちの目の前で、黒い扉がゆっくりと開き始めた。


「あそこを開けたら、魔物が中へ入ってくるだろ!」


《その目的で開放しました》


「何を考えてるんだ!」


《追跡個体を、現在地へ誘導します》


《移動経路上にある扉を、順次開放》


「俺たちまで襲われるぞ!」


《防衛個体は侵入者を排除します》


「俺たちも侵入者だろ!」


《肯定します》


「肯定するな!」


 頭上から、巨大な大鎚が勢いよく振り下ろされた。


「くっ!」


 俺が床を蹴ってその場を離れた直後、大鎚が黒い床へ叩きつけられた。


 砕けた破片と凄まじい衝撃に押され、俺の身体は勢いよく吹き飛ばされる。


「ぐあっ……!」


『我が主よ、立て!』


「分かってる!」


 俺は長槍を杖代わりにして、どうにか身体を起こした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。