第122話 先生の声に従って、六眼監守機の観測をすべて封じました
「つまり、俺が剣を振り始めた時点で、砕甲槌へ変わった後にどこへ当たるかまで予測してるってことか?」
《肯定します》
「じゃあ、このまま同じように攻撃しても全部避けられるのか?」
《現在の攻撃方法を継続する限り、その可能性が高いと判断します》
「それを何とかする方法を探すのがお前の仕事だろ!」
《解析します》
六眼監守機の六つの目が、再び別々に動き始める。
【第一観測】
【第二観測】
【第三観測】
「また観測が始まった! 今度は俺だけじゃないぞ!」
三つの赤い光が俺を見据え、残る三つはカコへ向けられた。
「カコ、気をつけろ! 動く前から読んでくる!」
「分かってる。だったら、見せなければいい」
カコが金色の結界を展開した。
六眼監守機の左右へ一枚ずつ配置して、その動きを封じようとする。
しかし、頭部上側にある目の視線が結界の隙間越しに、正確にカコを捉えた。
【移動予測 _ _ 完了】
六眼監守機が拳を振るう。
狙っているのは、今いるカコの場所ではない。
カコがこれから移動しようとしている場所だ。
「カコ、動くな!」
「え?」
俺は反射的にカコの服を掴み、その身体を後ろへ引いた。
直後、巨大な拳がカコの踏み出そうとしていた場所を通り抜ける。
「今、私はまだ動いてなかったのに……」
「こいつは動いた後じゃなく、動こうとする前から次の位置を読んでる!」
《六眼観測による予測情報が蓄積され、精度が上昇しています》
「戦ってる最中にどんどん賢くなるのか!」
六眼監守機が両腕を左右へ広げた。
【六重観測 _ _ 開始】
「今度は何だ?」
六つの目が一斉に動き、すべて俺だけへ向けられた。
【対象 _ _ ケイ】
【移動情報】
【武装情報】
【魂力情報】
【逃走経路】
【随伴者支援】
【全情報取得】
「ケイ!」
【六重観測 _ _ 完了】
次の瞬間、俺の周囲に六枚の青白い壁が出現した。
「うわっ!」
前後左右だけでなく、頭上と足元にも青白い壁が現れる。
六枚の壁が俺を囲むように組み合わさり、一人分の箱状の牢を作り上げた。
【対象封鎖】
「ケイ!」
カコが駆け寄り、金色の結界を青白い牢へ叩きつけた。
だが、壁はわずかに揺れただけで、壊れる気配はなかった。
「開いて! この拘束を解除して!」
【侵入禁止】
「王統権限で解除する!」
【管轄外】
「それ、嫌い!」
『我が主! 斬れ!』
「言われなくてもやってる!」
俺はミメシスを振るい、無銘刃を青白い壁へ叩きつけた。
だが、壁には傷一つつかない。
「だったら魂力光刃だ!」
ミメシスの刀身から青白い魂力光刃を伸ばし、先ほどと同じ場所へ斬りつける。
今度は、壁の表面に一本の亀裂が走った。
「行ける! こっちは斬れるぞ!」
《青白い壁は魂力構造体です。魂力光刃であれば切断可能です》
「そういう大事なことは、今度はもっと早く言ってくれ!」
《現在判明しました》
「毎回それだな!」
一枚目を斬り、続けて二枚目へ刃を振るう。
だが、その間にも六眼監守機は俺ではなく、カコへ向かっていた。
「カコ! 無理に戦うな、逃げろ!」
「大丈夫! ケイが出るまで止める!」
「大丈夫じゃないだろ!」
カコはまだ完全には回復しておらず、下層総合制御室で王統権限を使った消耗も残っている。
俺は焦りを押し殺しながら、三枚目の壁へ斬りつけた。
「あと半分……早くしろ!」
『我が主、右側だ! そちらが薄い!』
「分かってる!」
続けて四枚目、五枚目を斬り裂く。
残る壁は、あと一枚だ。
「これで最後だ!」
魂力光刃を振り抜き、最後の壁を斬り裂いて牢の外へ飛び出した。
「カコ!」
目に入ったのは、六眼監守機がカコへ巨大な拳を振り下ろそうとしている姿だった。
「カコ!」
その時。
「……六つを……」
「え?」
雑音交じりの微かな声が、通路のどこかから聞こえた。
「……全部……見るな……」
「「先生!?」」
通路の壁へ青白い文字が一瞬だけ灯る。
《微弱な音声経路を確認しました》
「コーデックス、つなげられるか!?」
《接続を試行します》
「カコ……聞け……」
「先生! どこにいるの!?」
「……あれは……六つで……一つだ……」
「六つで、一つ?」
六眼監守機は止まらない。
俺はカコの前へ飛び込み、振り下ろされた拳へミメシスを斜めに当てて、軌道だけを逸らす。
それでも、拳に込められた力までは殺しきれなかった。
「ぐっ……重すぎる!」
衝撃が両腕から左脇腹へ突き抜け、肋骨の奥に鋭い痛みが走った。
「先生! 六つで一つって、どういう意味!?」
『……一つずつ……塞ごうとするな……』
「何?」
『……六つ……全部……閉じろ……』
その瞬間、通信が途切れた。
「先生!」
《音声経路が断絶しました》
カコが六眼監守機へ目を向ける。
六つの目は今も別々に動き、俺たちの動きをすべて読み取ろうとしていた。
だが、それを見つめるカコの表情が変わった。
「分かった。六つ全部、見えなくすればいい」
「言いたいことは分かるけど、どうやって六つ全部を同時に閉じるんだ?」
「ケイ、少しだけ時間を稼いで。六つの目を、全部ケイへ向けてほしい」
「簡単に言うな!」
『やれ、我が主! 貴様なら六つどころか百の目でも引きつけられる!』
「お前まで簡単に言うな! でも、やるしかないだろ!」
俺は六眼監守機の正面へ走った。
「こっちだ! 狙うなら俺を見ろ!」
【第一観測 _ _ ケイ】
「一つ!」
【第二観測 _ _ ケイ】
「二つ!」
『数えてどうするのだ!』
「気分だよ! 集中できるだろ!」
三つ目、四つ目、五つ目と続き、最後の目まで次々に俺へ向けられた。
【六重観測対象 _ _ ケイ】
「カコ、今だ! 全部こっちを見てる!」
「うん!」
カコが右腿のケースからノクス・ニードルを四本抜いた。
「四本だけで六つ全部を隠せるのか?」
「四本あれば足りる。目を直接塞ぐ必要はないから」
一本目を俺の右後方へ、二本目を左後方へ、三本目を前方へ投げる。
四本目は六眼監守機の頭上にある壁へ放ち、四本の黒い針をそれぞれ離れた場所へ突き刺した。
「四本をつないで、全部の視線を閉じて!」
四本の黒い針から金色の光が一気に走り、巨大な三角錐を描くように結ばれた。
さらに、その内側へ何枚もの薄い金色の結界が次々と展開される。
一枚目の結界が、右側から俺を捉えていた視線へ割り込んだ。
【第一観測 _ _ 断絶】
二枚目。
【第三観測 _ _ 断絶】
三枚目。
【第五観測 _ _ 断絶】
「まだ三つだぞ! 残りの目から見られてる!」
「まだ終わってない!」
カコが両手を動かす。
四本のノクス・ニードルはその場から動かないが、間に張られた金色の結界が支点を変えるように角度を変え始めた。
一枚が回転し、別の一枚が途中で折れ曲がる。
何枚もの結界が鏡のように次々と向きを変え、六眼監守機が俺を見ようとするたび、その視線を遮る位置へ滑り込んでいった。
【第二観測 _ _ 断絶】
【第四観測 _ _ 断絶】
「あと一つ!」
胸部中央の目が強く光った。
六眼監守機が巨大な身体を捻り、結界の外側から俺を捉えようとする。
「まずい、最後の一つに見られる!」
「見せない!」
カコが両手を強く握った。
最後の金色の壁が横から滑り込み、胸部中央の赤い目と俺の間を完全に遮断する。
【第六観測 _ _ 断絶】
【六眼観測 _ _ 失敗】
「全部閉じた!」




