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『時環境界と四系統の継承者』  作者: あらけい
第一部 結界の森と、帰る場所

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122/127

第122話 先生の声に従って、六眼監守機の観測をすべて封じました

「つまり、俺が剣を振り始めた時点で、砕甲槌へ変わった後にどこへ当たるかまで予測してるってことか?」


《肯定します》


「じゃあ、このまま同じように攻撃しても全部避けられるのか?」


《現在の攻撃方法を継続する限り、その可能性が高いと判断します》


「それを何とかする方法を探すのがお前の仕事だろ!」


《解析します》


 六眼監守機の六つの目が、再び別々に動き始める。


【第一観測】


【第二観測】


【第三観測】


「また観測が始まった! 今度は俺だけじゃないぞ!」


 三つの赤い光が俺を見据え、残る三つはカコへ向けられた。


「カコ、気をつけろ! 動く前から読んでくる!」


「分かってる。だったら、見せなければいい」


 カコが金色の結界を展開した。


 六眼監守機の左右へ一枚ずつ配置して、その動きを封じようとする。


 しかし、頭部上側にある目の視線が結界の隙間越しに、正確にカコを捉えた。


【移動予測 _ _ 完了】


 六眼監守機が拳を振るう。


 狙っているのは、今いるカコの場所ではない。


 カコがこれから移動しようとしている場所だ。


「カコ、動くな!」


「え?」


 俺は反射的にカコの服を掴み、その身体を後ろへ引いた。


 直後、巨大な拳がカコの踏み出そうとしていた場所を通り抜ける。


「今、私はまだ動いてなかったのに……」


「こいつは動いた後じゃなく、動こうとする前から次の位置を読んでる!」


《六眼観測による予測情報が蓄積され、精度が上昇しています》


「戦ってる最中にどんどん賢くなるのか!」


 六眼監守機が両腕を左右へ広げた。


【六重観測 _ _ 開始】


「今度は何だ?」


 六つの目が一斉に動き、すべて俺だけへ向けられた。


【対象 _ _ ケイ】


【移動情報】


【武装情報】


【魂力情報】


【逃走経路】


【随伴者支援】


【全情報取得】


「ケイ!」


【六重観測 _ _ 完了】


 次の瞬間、俺の周囲に六枚の青白い壁が出現した。


「うわっ!」


 前後左右だけでなく、頭上と足元にも青白い壁が現れる。


 六枚の壁が俺を囲むように組み合わさり、一人分の箱状の牢を作り上げた。


【対象封鎖】


「ケイ!」


 カコが駆け寄り、金色の結界を青白い牢へ叩きつけた。


 だが、壁はわずかに揺れただけで、壊れる気配はなかった。


「開いて! この拘束を解除して!」


【侵入禁止】


「王統権限で解除する!」


【管轄外】


「それ、嫌い!」


『我が主! 斬れ!』


「言われなくてもやってる!」


 俺はミメシスを振るい、無銘刃を青白い壁へ叩きつけた。


 だが、壁には傷一つつかない。


「だったら魂力光刃だ!」


 ミメシスの刀身から青白い魂力光刃を伸ばし、先ほどと同じ場所へ斬りつける。


 今度は、壁の表面に一本の亀裂が走った。


「行ける! こっちは斬れるぞ!」


《青白い壁は魂力構造体です。魂力光刃であれば切断可能です》


「そういう大事なことは、今度はもっと早く言ってくれ!」


《現在判明しました》


「毎回それだな!」


 一枚目を斬り、続けて二枚目へ刃を振るう。


 だが、その間にも六眼監守機は俺ではなく、カコへ向かっていた。


「カコ! 無理に戦うな、逃げろ!」


「大丈夫! ケイが出るまで止める!」


「大丈夫じゃないだろ!」


 カコはまだ完全には回復しておらず、下層総合制御室で王統権限を使った消耗も残っている。


 俺は焦りを押し殺しながら、三枚目の壁へ斬りつけた。


「あと半分……早くしろ!」


『我が主、右側だ! そちらが薄い!』


「分かってる!」


 続けて四枚目、五枚目を斬り裂く。


 残る壁は、あと一枚だ。


「これで最後だ!」


 魂力光刃を振り抜き、最後の壁を斬り裂いて牢の外へ飛び出した。


「カコ!」


 目に入ったのは、六眼監守機がカコへ巨大な拳を振り下ろそうとしている姿だった。


「カコ!」


 その時。


「……六つを……」


「え?」


 雑音交じりの微かな声が、通路のどこかから聞こえた。


「……全部……見るな……」


「「先生!?」」


 通路の壁へ青白い文字が一瞬だけ灯る。


《微弱な音声経路を確認しました》


「コーデックス、つなげられるか!?」


《接続を試行します》


「カコ……聞け……」


「先生! どこにいるの!?」


「……あれは……六つで……一つだ……」


「六つで、一つ?」


 六眼監守機は止まらない。


 俺はカコの前へ飛び込み、振り下ろされた拳へミメシスを斜めに当てて、軌道だけを逸らす。


 それでも、拳に込められた力までは殺しきれなかった。


「ぐっ……重すぎる!」


 衝撃が両腕から左脇腹へ突き抜け、肋骨の奥に鋭い痛みが走った。


「先生! 六つで一つって、どういう意味!?」


『……一つずつ……塞ごうとするな……』


「何?」


『……六つ……全部……閉じろ……』


 その瞬間、通信が途切れた。


「先生!」


《音声経路が断絶しました》


 カコが六眼監守機へ目を向ける。


 六つの目は今も別々に動き、俺たちの動きをすべて読み取ろうとしていた。


 だが、それを見つめるカコの表情が変わった。


「分かった。六つ全部、見えなくすればいい」


「言いたいことは分かるけど、どうやって六つ全部を同時に閉じるんだ?」


「ケイ、少しだけ時間を稼いで。六つの目を、全部ケイへ向けてほしい」


「簡単に言うな!」


『やれ、我が主! 貴様なら六つどころか百の目でも引きつけられる!』


「お前まで簡単に言うな! でも、やるしかないだろ!」


 俺は六眼監守機の正面へ走った。


「こっちだ! 狙うなら俺を見ろ!」


【第一観測 _ _ ケイ】


「一つ!」


【第二観測 _ _ ケイ】


「二つ!」


『数えてどうするのだ!』


「気分だよ! 集中できるだろ!」


 三つ目、四つ目、五つ目と続き、最後の目まで次々に俺へ向けられた。


【六重観測対象 _ _ ケイ】


「カコ、今だ! 全部こっちを見てる!」


「うん!」


 カコが右腿のケースからノクス・ニードルを四本抜いた。


「四本だけで六つ全部を隠せるのか?」


「四本あれば足りる。目を直接塞ぐ必要はないから」


 一本目を俺の右後方へ、二本目を左後方へ、三本目を前方へ投げる。


 四本目は六眼監守機の頭上にある壁へ放ち、四本の黒い針をそれぞれ離れた場所へ突き刺した。


「四本をつないで、全部の視線を閉じて!」


 四本の黒い針から金色の光が一気に走り、巨大な三角錐を描くように結ばれた。


 さらに、その内側へ何枚もの薄い金色の結界が次々と展開される。


 一枚目の結界が、右側から俺を捉えていた視線へ割り込んだ。


【第一観測 _ _ 断絶】


 二枚目。


【第三観測 _ _ 断絶】


 三枚目。


【第五観測 _ _ 断絶】


「まだ三つだぞ! 残りの目から見られてる!」


「まだ終わってない!」


 カコが両手を動かす。


 四本のノクス・ニードルはその場から動かないが、間に張られた金色の結界が支点を変えるように角度を変え始めた。


 一枚が回転し、別の一枚が途中で折れ曲がる。


 何枚もの結界が鏡のように次々と向きを変え、六眼監守機が俺を見ようとするたび、その視線を遮る位置へ滑り込んでいった。


【第二観測 _ _ 断絶】


【第四観測 _ _ 断絶】


「あと一つ!」


 胸部中央の目が強く光った。


 六眼監守機が巨大な身体を捻り、結界の外側から俺を捉えようとする。


「まずい、最後の一つに見られる!」


「見せない!」


 カコが両手を強く握った。


 最後の金色の壁が横から滑り込み、胸部中央の赤い目と俺の間を完全に遮断する。


【第六観測 _ _ 断絶】


【六眼観測 _ _ 失敗】


「全部閉じた!」

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