↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『時環境界と四系統の継承者』  作者: あらけい
第一部 結界の森と、帰る場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
115/127

第115話 旧王を封じ込めて、先生を迎えに行きます

 カコが目を閉じると、床の奥で金色の光が灯り始めた。


 何十本もの王統線がゆっくり立ち上がり、総合制御室へ張り巡らされた赤い命令線へ絡みつく。



【やめろ】


「嫌」


【停止せよ】


「その命令を拒否します」


【私は王だ】


「私は王じゃない」


 カコが両手へ力を込めた。


「外へ出てる命令線を全部、中へ戻して」


 金色の王統制御線が一斉に動き、王座室から外へ伸びていた赤い命令線を一本ずつ引き戻していく。


【何をする!】


「もう外に出さない」


 床下や壁の中、天井裏、さらに下層の奥深くへ続いていた命令線まで、次々と王冠の扉へ向かって引き戻される。


【停止せよ!】


「絶対に嫌!」


 王冠の扉が激しく震え、隙間から赤い光が噴き出した。


 それでもカコの王統制御線が赤い光を正面から受け止め、少しずつ扉の奥へ押し戻していく。


《旧王外部命令経路 _ _ 回収率二十一パーセント》


「まだそんなに残ってるの?」


《三十四パーセントまで上昇》


 赤黒い命令線が激しく暴れ、その一部がカコへ向かって襲いかかる。


「カコ、そっちへ行った!」


「大丈夫。まだ続けられる!」


 金色の結界が展開され、押し寄せる赤い命令線を受け止めた。


 しかし、激突した瞬間、その表面に大きな火花が散った。


「それのどこが大丈夫なんだよ!」


「もう半分以上戻ってるから!」


《回収率五十八パーセント》


【カコ!】


「先生をこれ以上、苦しめないで!」


 カコが金色の瞳で王冠の扉を睨み、王統制御線がさらに強く輝いた。


《回収率七十三パーセント》


【私は王である!】


「そんなの知らない!」


「カコ、強くなったな……」


『実に良い! もっと押せ!』


《回収率八十九パーセント》


 最後に残ったのは、中央制御柱へ直接つながっている最も太い命令線だった。


【停止せよ】


「嫌」


【これを切れば……】


「切らない。元の場所へ戻すだけ」


【何……】


 カコは金色の王統制御線で、最後の命令経路をつかんだ。


「あなたは、そこにいて」


 そのまま一気に引き戻した。


【……!】


 太い赤い命令線が、王冠の扉の中へ消えた。


《旧王外部命令経路 _ _ 回収率百パーセント》


《王座室外部への直接制御接続 _ _ 遮断》


「コーデックス、今!」


《王座室隔離制御を実行します》


 王冠の扉の周囲へ幾重もの金色の光が走った。


 光は床や壁、天井を通り、王座室そのものを囲む巨大な結界を形作っていく。


【やめろ!】


「嫌!」


【カコ!】


「もう外へ出てこないで!」


 轟音とともに、金色の光が王座室全体を包んだ。


【王座室制御区画】


【外部命令経路 _ _ 遮断】


【外部制御権限 _ _ 凍結】


【総合制御室への干渉 _ _ 拒否】


【第三封鎖牢への新規命令 _ _ 拒否】


【旧王記録人格 _ _ 王座室内隔離】


【貴様……】


 旧王の声が途中で途切れた。


 それまで何度も響いていた不気味な声が完全に消え、総合制御室へ本当の静けさが戻った。


「……閉じ込められた?」


《肯定します。旧王記録人格は現在も王座室内に存在します》


「もう外へ出てこない?」


《現在の隔離制御が維持されている限り、外部への直接干渉は困難です》


「絶対ではないんだね」


《肯定します。絶対とは断言できません》


 カコは中央制御柱から両手を離し、しばらく王冠の扉を見つめていた。


 やがて小さく息を吐き、中央制御柱へ向き直る。


「でも今はそれでいい。先に先生を迎えに行く」


「ああ。先生をこれ以上待たせられないからな」


『王は後回しか』


「先生が先。旧王は逃げないでしょ」


『よい判断だ』


「お前、本当にそれでいいのか?」


『あの王は逃げぬ。もし逃げたなら、その時に追えばよい』


「何でちょっと楽しそうなんだよ」


『非常に楽しみだからだ!』


 カコは小さく笑ったが、すぐに表情を引き締め、中央制御柱へ手を置いた。


「コーデックス、先生の状態をもう一度確認して」


《第三封鎖牢を確認します》


 コーデックスのページが静かにめくられ、青白い文字がその表面を流れた。


《生命反応を確認》


「まだ生きてる?」


《肯定します》


 その答えを聞き、カコの肩からわずかに力が抜けた。


「先生と話せる?」


《通信経路を一時的に再接続できます》


「だったらお願い。すぐにつないで」


《ただし、現在の衰弱状態では、応答できる保証はありません》


 カコは少し黙ったあと、それでも中央制御柱へ両手を置き直した。


「それでもいい。先生につないで」


《接続します》


 中央制御柱から青白い光が伸び、総合制御室を離れて下層中部を抜けていく。


 光はさらに深い場所へ進み、第三封鎖牢までつながった。


 しかし、しばらく待っても聞こえてくるのは雑音だけだった。


「先生、聞こえる?」


 カコが中央制御柱へ少し顔を近づける。


「先生、私だよ。カコだよ」


 返事はなく、通信からは雑音だけが流れ続けてきた。


 拘束命令は解除され、生命反応も残っている。


 それでも声が聞こえないことに、俺は無意識に拳を握りしめた。


 生きているならほんの少しでいい、声を聞かせてほしい。


 そう願った直後、雑音の奥にかすかな呼吸音が混じった。


 カコが息を止める。


 長い沈黙を挟み、やがて通信の向こうから弱々しい声が聞こえてきた。


「…………カコ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。