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リアは、夜が明ける頃にようやく少しだけ眠れただけだった。


部屋がノックされ、返事をすると侍女が入ってくる。


身支度を整えられ、朝食が運ばれてきた。


リアは、出されたものをぼんやり口へ運ぶ。


だが頭の中は、変わらず昨夜の事でいっぱいだった。


そして、ふと引っかかる。


《これでルシナスの上書き出来たな》


レイが去り際に言った言葉を思い出す。


「……あ」


塔の上でルシナス様に助けられて、そのときに──


「っ……!」


リアの顔が、一気に熱くなる。


あの時は、精神的にも限界だった。


呪いが広がり、止めに行き次々色んな事が起きて考える余裕なんて全く無かった。


でも今になって、理解してしまった。


(私、二人と……)


「うぅ……」


今日、顔を合わせるのが恥ずかしい。


(私が好きなのはレイ様…)


自分の気持ちはちゃんと分かっている。


けれど、ルシナスはどことなくレイに似ているのだ。


(確か、お祖父様とお祖母様は先代王弟様と先代王妃妹様だから似ていてもおかしくないのよね…?)


だから余計に、意識してしまう。


そこまで考えて、今度は別の事を思い出す。


(――今日は国王陛下への報告)


「……っ」


リアの顔が、今度は青くなった。


しかも今の国王陛下って、レイ様のお父さま……?


そこでまた、昨夜の事を思い出し口を触る。


「〜〜〜っ!!」


(私、そんな方と……!)


再び真っ赤になる。


その様子を見ていた侍女は、笑いを堪えていた。


今朝のリアは忙しい。


赤くなったと思えば、青くなる。


ぼーっとしていたかと思えば、急にそわそわし始める。


侍女達は昨夜、殿下と何かあったのだろうと微笑ましく見守っていた。


朝食後、侍女が畏まって声をかける。


「国王陛下にお会いになる前に、相応の装いへ着替えましょう」


用意されていたのは、薄紅色のドレスだった。


派手すぎず、けれど決して質素ではない。


装飾は少なく、身体の線に沿う形。


裾の広がりも控えめだが、肩が少し見えるデザインになっている。


リアは、そっと布へ触れた。


滑らかな肌触りの良い、父の仕立て屋では扱う事の無いような高級な生地だった。


「こんな良いドレス、初めて……」


鏡の前で、くるりと回ると裾がふわりと小さく広がった。


「合わせて、お化粧もきちんとしましょうか」


侍女達が、丁寧に支度を進めていく。


薄く化粧を施され


髪はハーフアップに結われ、編み込み、小さなリボンが添えられる。


「これでばっちりですね」


侍女が、にっこり笑った。


「ありがとうございます」


リアが礼を言うと、侍女は満足そうに頷く。


「お時間になったら、お呼びしますね」


そう言って、部屋を出て行った。


リアはソファへ腰掛け、ゆっくり目を閉じる。


深呼吸する。


落ち着かなければ、これから大勢の前に立つのだ。


それに自分の力が、今後どう扱われるのかも分からない。


ユースティアは、リアの中に溶け込み一つになった。


今は胸の中で静かに眠っているような、不思議な感覚がしている。


多分、ユースティアの力も使おうと思えば使える。


(……もしそれを言えば、どうなるかくらい想像がつく)


リアは、すうっと息を吐き考えるのをやめた。


その時、ドアの向こうが急に騒がしくなる。


勢いよく扉が開いた。


「勝手に開けてすまないな」


入ってきたのは、レイだった。


これから、国王や大臣、貴族達の前へ立つ為だろう。


普段よりも格式高い衣装、整えられた髪にリアは見惚れていた。


そんなリアを見て、レイが小さく笑う。


「時間だ、迎えに来た」


どうやら、側近達の制止を振り切って直接来たらしい。


後ろでは、アルヴェインが頭を抱えていた。


「はい」


リアは立ち上がり、レイの側へ向かう。


そして、自然と声に出てしまう。


「レイ様、かっこいいです」


レイが、僅かに照れる。


アルヴェインが、わざとらしく咳払いした。


「お時間が迫っています」


「あ……!」


リアは慌てて我に返り、そして急いで二人へ尋ねた。


「あ、あの…私のユースティアの力をどう説明したら…」


レイは即答した。


「言わなくていい」


「直ぐにでも監視が着くか、あるいは“保護”という名の監禁になる」


リアが、小さく息を呑む。


アルヴェインも静かに頷いた。


「絶対に、人前でその力を使わない事ですね」


「知れば、利用しようとする者も出るでしょう」


少しだけ苦笑して続ける。


「……我々が言えた義理ではありませんが」


リアは、ぎゅっと指先を握った。


そして、小さく頷く。


「……はい」


アルヴェインが、静かに扉へ視線を向ける。


「では、行きましょうか」


そうして三人は、部屋を後にした。

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