014 メイドのイープ
東新宿の自宅にいったん戻ってシャワーをあびて来た私は、本日は朝10時から、コウとの面談である。
それを前に午前9時15分頃に受付から、コウの親族関係者の女性イープからの面談依頼を受けた私サイトウは、早速にイープにプレ面談をさせてもらうようお願いをした。
「1日明けての再会ですね。本日もよろしくお願いいたします。」
と、挨拶した私に、
「えぇ。よろしくお願いいたします。」
と、普通の笑顔を返すイープ。
コウとの面談が開始されるまでの30分ほどの時間の間に、私は、仮想現実支援機器リアリテスに関する何らかの情報をイープから聞き出すつもりだった。リアリテスの国際共同治験にコウに参画してもらうようお願いするかどうかは、あくまでコウの主治医である私サイトウが決めること。しかし、今なお迷う私に有用な情報を提供してくれる可能性がありそうなのがイープなのだった。
イープと面談する私は、あえて、昨晩実験室に持ち込んだ黒光りするハンディマッサージャーを私のバックの中にいれておいた。私のバックの方にイープの視線が漂うことで、何らかの情報が得られるかもしれないからだ。
☆
30分近くを、仮想現実支援機器リアリテスの国際共同治験の単なる説明についやしてしまった私は、リアリテスの脳内空間について、イープから新たな情報は何も導き出せなかった。それは良い。正直、想定の範囲内だ。
コウの部屋に向かう前、私サイトウ先生はイープに尋ねた。
「あの、イープさん、一人の精神科医としての質問なのですが。イープさんは、こことは異なる別の世界線とか、設定の異なる世界とかはあると思われますか?」
イープは、
「それは、禁則事項です、とお答えするのがお約束なのでしょう。」
と普通の笑みで応えた。
なるほど。その意味するところは後で考えることにするとして、とにもかくにも、10時からの、仮想現実支援機器リアリテスのコウへの説明だ。私はイープにコウとの面談への立ち会いをお願いし、二人でコウの病室へと向かった。
さて、今日のコウの人格は、朕なのか、涙の美少女なのか、はたまた別の誰かなのか。




