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その後72(事情聴取と山のダンジョン)


 ダダダダダダッ――バーン!


「「コーラさん! ロドリス様! 助けが来ました!!」」


 二人が隠し通路から転がる勢いで扉を蹴破る。

 するとそこには裸で柱へと縛られ、メイたちの配慮でブランケットで肌を隠した二人の姿が目に入った。


 二人の目は赤く腫れ上がり、頬には涙の跡が色濃い。コーラについては殴られた痣も生々しかった。

 事件後の二人の美女の姿が実に痛ましい。


「助けが遅くなり済まなかった! ……ノートン、縄を(ほど)けるか?」


「御意!」


 また、助けに涙腺が緩んだのか、コーラが再度ボロボロと涙をこぼす。


「ああ……ああ……お嬢様が……お嬢様があぁああああっ!!」


 自分の今の姿より、連れて行かれたアニエスの身をひたすら案じ、コーラは嗚咽を繰り返ししゃっくりで喉がヒクつく。


 それにノートンがブランケット越しに背中を擦りながら慰め、素早く魔法でしゅるっと縄を(ほど)き、ほどかれた縄はくるるるるとノートンの手に収まった。

 また、茫然自失となっているもう一人のロドリスに対しても同様に縄を解く。

 そんな二人の前をメイとハナが一枚のブランケットでさっと目隠しし、ガウンを二人に渡して着替えを促す。


「………………!」


 受け取った二人は、コーラは泣きながら、ロドリスは無言でそれにささっと着替えた。


「――で、例の隠し転移陣は?」


「こちらです! ……えっ……!?」


 セオドリックに問われ、隠されていた梯子の下を指差すが、何とあったはずの転移陣が消えているではないか!?


「……これでほぼ、間違いありませんね」


「ああ、黒だ」


 ノートンとセオドリックの持っていた疑惑が、今ここで確信へと変わる。


「あの……ほ、本当にあったんですよ!?」


 ハナが必死で転移陣が嘘でないことを訴えた。

 セオドリックはそれに頷き、彼女を信じる。


「ああ、分かっているよ。……術者が撤去してしまったんだろう。何しろ、この転移陣を作ったのは“セシリア”だからな!」


「……どういうことでございますか!?」


 ガウンに着替えたコーラが食い付く。


「セシリアは好きな場所に、交互に繋がる二箇所の小さな転移陣を作れるんだ」


 そう、それこそが彼女の才能にして、魔法。


「だがもうここに置いておくのはデメリットだと判断した彼女が、それを撤去してしまったらしい……」


「――あの……王太子殿下!」


 そこで声を上げたのが、先ほどまで虚ろな目をしていたロドリスだった。


「……転移陣の繋がった大まかな場所なら分かります。繋がった先は、山の中にすっぽりと収まった『ダンジョン』です!」


「――ダンジョン!?」


「はい……実は、セシリアのバッグには大きな組織がいて……私もほんの少しだけ交流がありました」


「何だって!?」


「そこが何か良くないことをしている予感はしておりました。だけど……錬金術師として、セシリアを通じて私に依頼をしてくれるのはそこしかなくて……なるべぬ深い事情には踏み込まないようにしつつ、縁が途切れないようにしていました」


「…………」


「そのダンジョンへは一、二度、中に入りました。部外者なので決まった場所にしか通されませんでしたが……それでもかなりの広さを有していると感じました」


 そこでパッと手を挙げたのがメイとハナだ。


「はい! その件はロドリスさんの言う通りだと思います!!」


 フンスーとメイが鼻息荒く宣言する。


「実はお嬢様に依頼された別の仕事もダンジョンに関するもので……私たちもちょっと前までそこにおりましたから!」


 で、ハナの追加情報が加わり、それにセオドリックは頭を抱えた。


「いや……また何やってるんだよアイツは!?」


 そこでロドリスからアニエスがどう捕まったのかについても、詳しいあらましを説明される。


 アニエスが最初に残したメモもロドリスに渡され、セオドリックはそれを走り読みすると、はーっと深くため息をついて、ぐしゃりとメモを握り潰した。


「アニ……サーシャは、私の庇護下の自覚はあるのか? ……こんな勝手に危険に突っ込んで!?」


 アニエスへの心配が芯にありつつ……彼女のあまりの自由っぷりに、怒りでセオドリックの指先がわなわなと震える。


「まあ……相手がのんびりサウナを満喫していると思ったら……」


「『ちょっとそこまで』感覚でダンジョン攻略に行って帰って、で、帰ってきた先で誘拐されたとあれば……そうもなりますよね〜?」


 メイとハナがセオドリックに同情して、ウンウンと頷く。


「……ロドリス嬢。山はどこだ?」


「カミラ山です。……でもダンジョンの入り口は私にも分かりません。……いつも転移陣を使っていたから……元はきっと出入り口を使っていただろうけど、もしかしたら、もう埋めてしまったやも……」


「今まで誰にも知られなかったのだから、その可能性は高いな……」


 セオドリックは少し思案してからノートンに命じる。


「カミラ山まで行く転移陣を準備してくれ!」


 だがそれに、ノートンが急遽待ったをかけた。


「殿下、具体的な座標も無く転移陣を貼れば、生き埋めになってしまいますよ!?」


「いいや、そうはならない。……転移陣を繋ぐのはあくまで山の麓だ。ダンジョンは正規の入り口から入る。元々、ダンジョンはエルフがいなければ入れない。……それが入れたということは、システムに不具合があり、出入り口が緩んでいたのだろう」


「ですがそれも……山一つをまるごと捜索するとなれば人手と日数が大いにかかります。……現実的ではありません!」


 しかし、セオドリックはそれに余裕そうにフッと笑う。


「ああ、そうだ。……人間が捜索するのであればな?」


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