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その後71 (報・連・相と出動)


「ふぅ〜〜……」



 セオドリックは背中を流れる汗を感じながら、そろそろ最後の締めの水風呂に入ろうと考えていた。



「ああ〜……アニエスが流した汗で、そろそろ水分補給がしたいな……?」


「何をおっしゃっているんですか!?」


 セオドリックの右腕(※ノートン)が割とガチに引いている。

 そんな静かに汗を流す中、徐々にバタバタと走ってくるような足音が近付いてくる。


「……ん?」


 それから勢いよくバーンと地下通路に続く扉が開いた。


「――申し訳ございません!! ……身分も(わきま)えず、失礼いたします!」


「私たちはお嬢様に仕えるメイとハナ……アニエスお嬢様を――どうかお助けください!!」


 突然あらわれたメイド二人組。

 その登場にセオドリックたちは度肝を抜かれた。

 そんでもって……。


「きゃあああああぁああああっ!?!」


 あられも無いセオドリックの格好に、メイとハナは黄色い絶叫を上げる。

 ……現在、セオドリックは暑さから腰に巻いたタオルすら横に置き、まさに生まれたままの姿を(さら)していた……。


「す、すごいね……!」

「初めて見た……」

「「すごく……おっきい!!」」


 そうして、(わず)かに目的も忘れ、はわはわと慌てる二人組……。

 ……因みに優等生ノートンはちゃんと腰にタオルを巻いてガードしている。


 けれど普段から女性に裸を晒し慣れているセオドリックは、それに羞恥を覚えることもなく。

 それより先程、耳にした『アニエス』と『助けて』という言葉に眼光をギラリと鋭くした。


「――どういうことだ? 外の警備は厳重なはずだろう。……今は身分は問わないから直接こたえてくれ?!」


 そうセオドリックが言うと、赤い顔を真剣な表情にかえ、二人はセオドリックを見つめ返し、話の続きをする。


「外の警備ならちゃんとおりました。……ただ中から奇襲されてしまって、お嬢様が連れて行かれたのです!」


「――何だって?!」


 セオドリックがノートンに命じてセシリア用に張った結界を解かせ、駆ける勢いでメイの細い肩を大きな両手でがしっと掴む。


「……詳しく!!」


 それに驚きつつ、メイは頷きその問いに答えた。


「……コーラさんたちの話によれば、黒ずくめの連中にお嬢様は連れて行かれたとのこと!」


 さらにそこにハナが付け加える。


「コーラさんやロドリス様が黒ずくめに人質にとられてしまって、……お嬢様自ら身代わりとなるのを申し出たとか。……犯人たちはそれで、お嬢様が武器を一切、所持できないよう丸裸にし、首に鎖をつけて連れて行ってしまったそうなのです!!」


 それを耳にした瞬間。

 ブチリと切れたセオドリックは青筋を立て、怒りがカッと身体中にぶわっと沸き上がった。

 

 あまりの迫力とオーラに周りの者が息を飲む。


 メイを掴んでいるセオドリックの手には自然と力がこもり、あまりの力に肩を潰されそうなその痛みに、メイは思わず悲鳴を上げた。


「……ヒァッ!」


 そのメイの声にハッと彼は我にかえる。


「す、すまない。……我を忘れてしまった! それで……他のコーラ殿にロドリス嬢。セシリアは?」


「コーラさんとロドリス様のお二人はご無事でしたが柱に縛られていて……でも、自由にしたいのに縄に刃が全くはいらないんです!」


「……それは魔法だな。解かねばほどけない。セシリアは……?」


 これに答えたのはハナだ。


「私たちが行った時には、セシリア様はどこにもいらっしゃいませんでした!」


 それを聞き、セオドリックとノートンが無言で互いに厳しい視線を()わす。

 またさらにハナは続けた。


「……本来なら私たちがお嬢様の身の回りのお世話兼護衛として守護するはずでした! ……けれど、お嬢様より別の仕事を仰せつかっていて、ちょうど席を外していたのです!」


「私たちが迂闊でした。……申し訳ございません!」


 メイとハナが涙ぐみながら頭を下げる。


「……そもそも、中からとはどういうことです? それと中であろうと……何かあれば音で外の者に気付かれるはずでは?!」


 ノートンも参戦してそう問えば、メイが首を振る。


「それが特殊な結界で、音や光は漏れなかったみたいです!」


「私たちはお嬢様と行き違いになってしまって……『隠し転移陣』で、私たち二人は中から女子更衣室に入りました!」


「隠し転移陣だと!?」


「はい! ……お嬢様は私たちが戻る少し前に、黒ずくめにその転移陣から連れて行かれたそうなのです」


 次々と出てくる新情報にセオドリックは眉間にシワを寄せる。だが、すべきことならもう決まっていた。


「まずは現場を目にしなければ何とも言えない……。二人に案内を頼めるか!?」


「「はい!!」」


「――ノートン!」


「はい! 着替えはこちらです!」


 地下通路は温度がマイナス。

 それを踏まえつつ先々を見越してノートンが素早く着替えを手配する。


 従者がロウリュ内にバタバタと入り、セオドリックにあっという間に衣服を着せ、靴を履かせた。

 ノートンもその間に急ぎ着替えをする。


「こちらです!」


 先頭を鉄砲玉みたいにパーンと走り出したメイとハナの背中を追うように、セオドリック、ノートン、他、護衛が地下通路を全速力で駆け出す。


(頭の中がまだ整理しきれない……けれど、犯人は恐らく)


 セオドリックは胸に迫る嫌な予感に鼓動が不穏に早くなった。


(アニエス……お願いだ無事でいろ!!)


 物語がいよいよ佳境に向けて全力で走り出したのだった。


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