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不穏な空気と再会と


店主の家を借りてぐっすり休んだ次の日、再び稼ぎに出るためにヨウは外を出歩いていた。背には血がこびりついたチェーンソードを担ぎ、漆黒と赤の二色で統一された服装など、端から見れば非常に不気味に見えるかもしれない。そんな彼女を現代の言葉で表現するなら、〈制服殺人鬼〉という称号が似合っているかもしれない。


口許はマフラーで隠れて見えないが、どこか機嫌が良さそうに見えた。


「おいお前!見慣れない服装をしているな!お前が犯人だろ!!」



……だがそんな心ない一言により、彼女の機嫌は損なわれることになった。ヨウを犯人扱いしたのは、一人の冒険者だった。性別は男であり、竹かなにかで作られた槍らしき武器を構えてヨウを睨み付けていた。背は低く足軽のような印象を抱く彼は、〈盗賊(シーフ)〉のようにも見える。黄色が強い緑の髪に、小生意気な快男児のような顔つきをしていて、本当に十五を過ぎているのかいささか不安になる。


「……突然なんですか。ここ数日話題になっている盗難事件でしたら私は一切関与してませんよ。」


ヨウも苛立ちを隠す様子もなく、背のチェーンソードに手をかけガタガタと機械音を鳴らして彼を威嚇した。


「……っ!!そんなもので俺は怯みはしねぇよ……そらっ!!」


足軽の男は街中で槍を振るうと、素早い動きで近くの民家の壁に張り付きアクロバティックな動きでヨウを突き刺そうと飛び出した。


ガキッ!という音と共に武器がぶつかり合う。彼の武器である〈尖竹〉はチェーンソードと鍔迫り合いを行った結果、接触した部分が鋸で切られたように切断された。



「なに───────」



空中で不意に体勢が崩れた彼は情けなく地面に叩きつけられる。それに止めを指すかのように動いたのはヨウではなく……冒険者らしき二人の男だった。一人は金髪の目付きの鋭い、足軽程ではないが一般的に小柄と思われる男で、もう一人は高身長の爽やかな顔だちをした橙色の髪をパーマのようにくるりと遊ばせた長身の男だ。その表情は二人して殺意にも近い怒りを浮かべている。


「確証もないのに人に斬りかかるなんて……君の方がよっぽど危険人物じゃないのかい?」


「俺達の友達(ソウルメイト)に怪我させた報い……絶対ただじゃ済ませねえからな!!」


どうやら二人はヨウの友達らしく、それもかなり仲の良い部類らしい。ヨウが襲われたのを見て怒り心頭、互いに武器を握りしめた。


「ごっ……誤解だっ!!ちょっと炙り出して違かったらすぐに退くつもりで……」


「「言い訳無用!」」


そう武器に手をかけた二人に恐怖した男の叫び声が〈エインハル〉の街に響き渡った。


≧≦


「久しぶりの再会がこうなっちゃうなんてなー。ちょっとアイツにはムカついてたし、これで頭を冷やしてくれればいいんだけどな。」


「冷やすもなにも悪いのは〈ゲイル〉の方だからね。すっかり挨拶が遅れちゃったけど……久しぶりだねヨウ。」


「久しぶり。イアン、スレイン。」


ヨウは二人に手を差し出し、それぞれ握手を交わした。二人はヨウがこの街に訪れた一年前、同時期に冒険者となった同期であり、ひょんなことから出会い暫く行動を共にしていたヨウにとっての恩人のような存在だ。あの後にもちょいちょい一緒に行動はしていたものの、正式にパーティを組むことはなかったようだ。


イアンは水色のラインの入った純白のローブを身に纏い、スーツに合わせて着るような白のズボンで清楚に決めている。それでも橙色の髪が高圧的な白を崩し、ラフで取っつきやすい印象を与える。彼の職業(ジョブ)は〈魔術師(ウィザード)〉であり、彼自信も魔法に精通した才能をもっている。


スレインはイアンよりも小柄であり、ヨウとほぼ身長は同じくらいである金髪の男だ。異様に膨らんだ緑のズボンを纏い、所々に鉄を張り付けたような布の服を身に纏っている。〈盗賊(シーフ)〉らしい俊敏さを感じられる服装だといえるだろう。


「上手いこと使いこなせているようでその武器も喜んでいるだろうね。こう言ってはなんだけど……息ピッタリだね。」


イアンの言葉にヨウは苦笑いながら「ありがとう」と返した。誉めてもらって嬉しい反面、やはり複雑な思いはあるのだろう。


「そんなこと言ったってイアンも強そうな武器にしてるじゃん。スレインだっていつの間にそんな籠手を……。」


細かいところではあるが、ヨウはしっかりと二人の変化に気づいているらしかった。的確に変わっているところを誉めてあげたりと、なるべく理解して喜んでもらえるような言葉選びをするように努力していた。


「いつも突然飛び出していっちゃうから無事かと心配だったんだぜ!俺達のことをサポートしてくれるのも嬉しいけど、ヨウと一緒に組めたら……もっとさ。」


「それはごめん……。でも私はあまり他人寄がりではいたくないんだ。こうやって一緒に組めるときに組むくらいの距離間がちょうどいいって……思えるから。」


でも、と噛みついてくるスレインを宥めるように止めるイアン。どうやら彼も思うところがあるらしく、ヨウの言い分もわかるとそれ以上口を開くことはなかった。


「もし苦しかったり、さっきみたいなことがあったら頼ってくれ。最近盗難事件が増えてるってのも本当のことだし、何かあったら困るからさ。」


「……ありがとう。私じゃ力不足かもしれないけど、なにかあったら言ってね。その時は頑張るから……。」


ヨウの言葉に二人は大きく頷いた。今までの距離感を保ちつつ、頼るときは頼る、という約束のもと納得したようだった。



「……あの武器いいじゃん。」


そんなヨウ達に、毒牙が迫っていることなど知るよしもなかったのだが。

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