侵入者
(……中々良い武器じゃん。血がついたままでも今までの物より高値で売れそう。)
一人の少女が建物の角から身を隠しつつ、ヨウ達を見つめていた。言わずもがなこの小柄な少女こそ、これまでの泥棒騒ぎの犯人である。彼女は目を輝かせながら、立ち上がったヨウをつけ歩く。目的はあのチェーンソード。なるべく高いところを忍び歩きで気づかれぬよう、彼女が借りている(ここ数日間はルーティンの武器屋)を抑え、夜になるのを今かと待ちわびていた。
(出て来る様子はない……ってことはここで寝泊まりするつもりなのか。)
少女は辛抱強く待ち続け、そう結論付けると屋根から窓へと飛び降り、軽やかな動きで窓を開け、既に閉店し真っ暗な店内へと侵入した。店の周囲には杜撰にも武器が立て掛けられたままであり、彼女にとっては宝の山のように見える。
(随分いい加減……。いかにも盗んでくださいと言いたげで、逆に罠かと思う。)
そう思いつつも彼女は目的のものはそれじゃない、と目移りすることなく天井や壁に張り付くと、そのまま移動する。再び窓から外に出ると壁を蜘蛛のように音もなく歩き回り、やがてヨウの居る部屋を見つけた。彼女は窓から部屋に侵入し、ゆっくりと武器に手を伸ばす。
ピン……。
(ん……?)
慣れない感覚に少女は戸惑っていた。明らかに武器とは違う。まるでなにかが張り巡らされているようにピンと糸のようなものが張ってあり……。
(しまっ……!!?)
少女が違和感になんとなく気づいた刹那、その正体である蜘蛛の巣のような糸が少女の四肢に巻き付き、力ずくで逆さ吊りにした。
≧≦
「…………。」
「助けてください。……ごめんなさい。」
「ごめんなさいっていうことは悪いことしたってことだからやだ。助けない。」
掛かった獲物は明らか十五に満たして無い小柄な少女だった。プラチナブロンドのショートカットの髪の少女で、やや鋭い目付きだが凛として整った顔立ちをしている。先ほどの足軽のような忍者らしいズボンを着用していたが、内股は露出しており、カラーリングも黒と異なる部分が多い。腋や内股、首元など急所に当たる部分は露出しており、本当に軽さを重視して作られた防具であることがわかった。
ヨウはそんな少女の懇願を無慈悲にも断った。少女が狙っていたであろうチェーンソードを握ると、スイッチを入れてガタガタと威嚇するように音を鳴らした。
「ひいいいいいいいいいいっ!?」
「さて……狙いはこれなのかな?自分の狙っていたものに命を奪われるってどんな気分?」
「ひゃあぁ……ごめんなさいっ……!!ごめんなさい!僕……お金がなくて稼がなきゃいかなくて!なんでもするから許して……!」
ヨウは少女の言葉に少し考える仕草をして数秒、にこりと微笑んだ。
「……じゃあちょっと付き合ってもらおうかな。君女の子だよね?」
少女は涙を流しながら何度もコクリと頷く。ヨウは満足そうに椅子に座り、自分の荷物である袋を漁った。中から出てきたのは、様々な色の糸や布地だった。
「ちょっと採寸失礼~。ほーん。結構小柄だね。細いなー。」
逆さ吊りの状態から助けてもらった少女は困惑した様子でありながら顔をひきつらせ、いつかヨウに痛みつけられるんじゃないかと恐怖し、身体を固まらせていた。
「~♪」
それに対しヨウは知らん顔で鼻歌混じりにミシンを稼働させ、少女をそっちのけで布地に針を掛けて器用な手つきで糸を通していく。
(あわわわわ……あれで殺されるの!?……もしかしなくても見せしめにされる!?)
少女は身体を震えさせながら目を瞑り、死ぬまでの間ずっと心の中で謝り続けたのだとか。
(閑話休題。)
「……よし!できたよ。おーい…………」
暫く経って作業を終わらせたヨウが少女の方を振り返ると、少女はその場にへ垂れ込んで気絶してしまっていた。あまりの恐怖を感じていたのか、まだ身体がピクピクと痙攣している。
───少し怖がらせすぎちゃったかな。
ヨウは自分が借りていた毛布を、壁に寄っ掛かっている少女に被せて申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
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