表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/97

第十六話「伝説の守護者と、グリスガン」

■タイトル

自動車解体業者のおっさん、クビになったのでダンジョン内の魔導機兵をバラバラに解体して無双する

〜「油臭いから近寄るな」と言うのに、なぜかS級美少女たちが離してくれません〜



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

第十六話「伝説の守護者と、グリスガン」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 夜明けに三人が来た。


 リーニャが先頭で、装備を正式に整えていた。メイが研究資材の入ったバッグを背負って走っていた。フィオナが弓を手に、最後尾で状況を見ていた。


 通路の先に封印の門が開いていて、黄金の人形が膝をついていて、その隣で渉がグリスガンを手に関節整備をしているのを見て、三人は揃って足を止めた。


「……おはようございます」と渉が言った。


「おはよう、じゃなくて……!」リーニャが叫んだ。「一人で開けたんですか!?」


「閂が外れてたんで」


「外れてたじゃなくて、外したんでしょう!!」


 その声に反応して、黄金の人形がゆっくりと頭を上げた。


 三人の方を向いた。


 次の瞬間、腰の剣を抜いた。



 金属音が、通路に響いた。


 長さ二メートル近い、黄金色の剣。刃の部分に複雑な紋様が刻まれており、低く光っている。


 リーニャが瞬時に盾を構えた。メイがスキルを展開しかけた。フィオナが矢を番えた。


 渉は人形の膝関節からグリスガンのノズルを抜いて、振り返った。


「作業の邪魔だ。少し待て」


 人形が、剣を収めた。


 三人が、固まった。


「……今、何と言ったんですか」とメイが声を絞り出した。


「邪魔だから待てと言いました。関節の整備が途中なんで」


「いや、そうじゃなくて……その人形が、言うことを聞いたことについて……」


「俺が整備してるから、信用してるんでしょう」


 渉はグリスガンのノズルを右肘の関節部分に当て直した。


 ぐりぐりと押し込む。グリスが継ぎ目に充填されていく感触。


「……よし」



 人形は渉の作業の間、完全に静止していた。


 ただ、渉の手が触れる部分だけが、かすかに金色の光を増している気がした。


 メイが恐る恐る近づいた。


 人形がメイの方を向いた。


 「待て」と渉が言った。


 人形が正面に向き直った。


「……渉さんが言うと聞くのに、私が近づいたら剣を向けようとする……」とメイが呟いた。


「作業員への信頼じゃないですか。整備する人間には懐く。車でも同じです」


「車……」


「昔から、ちゃんと手入れしてくれる人間のことは、機械はわかる気がします。俺の思い込みですが」



 整備が一段落したところで、渉は人形の全体を改めて観察した。


 身長は三メートルほど。これまでの機兵と違って攻撃的な形状ではなく、むしろ全体的に「守る」ための設計だとわかった。


 盾を持つことを前提とした左腕の構造。視野を広く取るための頭部の作り。足裏の広い接地面積。


 そして胸部。


 機兵なら必ずエネルギー制御回路があるはずの位置に、代わりに精緻な文字が刻まれていた。


「メイさん、これ読めますか」


 メイが一歩だけ近づいた。人形がわずかに反応したが、渉が手を上げると静止した。


 メイは胸の文字を見た。


「……古代語です。でも読めます。『我は門の守護者。鍵を持つ者のみに従う』」


「鍵を持つ者……」と渉は繰り返した。


「そういえば、閂が外れた時に何か……」リーニャが言いかけた。


 渉はポケットの中身を確認した。


 バール。ラスペネ。パーツクリーナー。そして、もう一つ。


 昨夜、閂が外れた時に床に落ちたものを、なんとなく拾って入れていた。


 取り出してみると、小さな金属の筒だった。


 直径は五センチほど。表面に同じ古代文字が刻まれている。


 人形がその筒を見た瞬間、胸の光が強くなった。


「……これですか」


「それが『鍵』です!!」とメイが叫んだ。


「なんでポケットに入れてたんですか……!!」


「床に落ちてたんで、とりあえず拾いました」



 その後、フィオナが試しに人形に近づこうとした。


 人形が向き直り、剣に手をかけた。


 「待て」と渉が言った。人形が止まった。


 リーニャが試みた。同じだった。


 メイが試みた。同じだった。


「……完全に佐藤さんの機械になっちゃいましたね」とフィオナが言った。


「俺のじゃないですよ。整備したら懐いただけです」


「それを世間では『自分のもの』と言います」


「そうは言っても……」


 渉は困り顔で人形を見上げた。


 人形は微動だにせず、渉の隣に立っていた。



 管理棟に戻ると、田所が「報告書は書きました」と言った。


 「封印の門開放・守護者起動・鍵発見」という内容の書類が、既に上に上がっているという。


「上の人たちが、午後には来ると思います」


「NDMですか」


「そうだと思います」田所は少し表情を変えた。「……その人形、どうするつもりですか」


 渉は少し考えた。


「整備の続きがあるんで、しばらくここに置きます」


「置く、って……」


「邪魔になりますか」


 田所はため息をついた。


「邪魔にはならないけど……ねえ、あなた本当に、自分がどれだけとんでもないことをやってるか、わかってる?」


「清掃員の仕事の延長ですよ」


「延長じゃないから!!」


 田所のコーヒーが、珍しく冷めかけていた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

           〈第十六話 了〉

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【次話予告】

 午後、NDMの神崎が部下を十人連れてやってきた。

 「その人形は国宝級の古代遺物です。即刻、国家管理下に」

 人形が剣を抜いた。

 渉が「作業中だ」と言った。

 人形が剣を収めた。

 神崎が、初めて本気で狼狽した。

感想を頂けますと大変喜びます。(豆腐メンタルの為お厳しい意見はご遠慮ください)


ブクマなどもしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ