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第十四話「錆びたシャッター、あるいは世界の扉」

■タイトル

自動車解体業者のおっさん、クビになったのでダンジョン内の魔導機兵をバラバラに解体して無双する

〜「油臭いから近寄るな」と言うのに、なぜかS級美少女たちが離してくれません〜


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第十四話「錆びたシャッター、あるいは世界の扉」

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「第七層への封鎖シャッター」という名前を、渉は管理棟の掲示板で知った。


 A3サイズの告知用紙だった。


 「第七層進入禁止区域 封鎖シャッター付近への接近を厳に禁ずる。いかなるSランク探索者のスキルも、物理攻撃も通じず、ダンジョン出現以来十二年間にわたり攻略不能とされている。JDA上層部の判断により、同区域は永続立入禁止指定を受けている」


 渉はその告知を読んで、「ふむ」と言った。


 そして掲示板の隣に貼ってあった、今週の清掃スケジュールを確認した。



「行ってみましょう」とメイが言ったのは、その翌日だった。


「封鎖シャッターに?」


「はい。私、研究者として一度だけ、実物を見てみたかったんです。許可は……グレーゾーンですが、接近禁止の範囲外から見るだけなら……」


「接近禁止の範囲って、どのくらいですか」


「半径五十メートルです」


「じゃあ見るだけなら問題ないですね」


 渉はメモ帳に「第七層、見学」と書き込んだ。



 第七層への降り口は、第六層の最奥部にある。


 渉たちがこれまで何度も通ったルートから少し外れた、岩盤をくり抜いたような狭い通路だ。


 四人で並んでは歩けない幅。壁の金属合金が、ここでは深い黒色になっている。足音が変わる。


 通路を抜けた先に、それはあった。



 縦に長い、巨大な構造物だった。


 高さは十五メートル以上。左右の幅は八メートルほど。素材は他の階層の壁と同じ黒い合金だが、表面の加工が違う。何か文字のような、記号のような紋様が、びっしりと刻み込まれている。


 エネルギー制御回路ではない。


 それよりも古い、別の何かだ。


 周囲には干上がったエネルギー痕跡が無数に残っており、過去の探索者たちが何度もここに挑んだ痕跡が読み取れた。


 扉の正面、中央付近に、一本の太い継ぎ目が走っていた。


 左右に開く、観音開きの扉だ。


 リーニャが「これが封鎖シャッター……」と小声で言った。声が、自然と低くなった。


 メイが手帳を開いて「エネルギー反応は……まだあります。何かが、まだ動いている……」と静かに言った。


 フィオナが弓を少しだけ手の中で握り直した。



 渉は五十メートル手前で立ち止まって、扉を見た。


 巨大な構造物。


 古い金属。


 そして、継ぎ目。


 渉の目に、「線」が見えた。


 いつものように。


 扉の全体に走る、細い光の筋。しかしその「線」は、他の機兵とは少し違った。


 複雑だった。


 何層にも重なっており、解くべき順番がある。まるで精密機械の組立図のように、一手一手の手順が見えた。


 そしてその中の一点。


 扉の中央、継ぎ目の少し上。


 橙色に光っている部分があった。


「……固着してるな」


 渉は独り言を言った。



「固着……というのは?」とメイが聞いた。


「継ぎ目の部分が、錆で固まってる。経年劣化です」


「それが……開かない理由ですか」


「鍵が壊れてるのか、鍵がそもそもないのか、それともただ錆びてるだけなのか。まだわからないですが」


 渉はバッグを下ろして、中を確認した。


「近づいていいですか、あそこ」


「接近禁止ですよ……」とリーニャが言った。


「掲示板には半径五十メートルって書いてあった。あそこまでなら、四十メートルくらいです」


「そういう問題では……!」


「見るだけです」



 渉が扉に近づくにつれ、周囲の空気が変わった気がした。


 気圧が変わるような、耳の奥が詰まるような感覚。


 リーニャが「あ……」と言った。「エネルギーの圧迫感が……強くなってます」


「大丈夫ですか」


「私は大丈夫ですが、佐藤さんは……」


 渉は立ち止まって、自分の感覚を確かめた。


 何も変わらなかった。


 耳の詰まりも、圧迫感も、何もなかった。


「大丈夫です」


 さらに近づく。


 三十メートル。二十メートル。十メートル。



 扉の正面に立った。


 間近で見ると、文字の刻み込みが精緻だった。


 熟練した職人が、機械を使わずに手で刻んだ跡だ。どの線も太さが均一で、深さが揃っている。


「……丁寧な仕事だな」


 渉は扉の表面に触れた。


 冷たい。しかし、かすかに振動している。


 中に、何かがある。


 まだ動いている何かが。


 渉は継ぎ目に手を当てた。


 錆の層がある。しかし……ここは、他の部分より薄い。


 扉を固定している機構が見えてきた。


 上下二か所のヒンジ。そして中央部の一か所。


 中央部のそれは、鍵ではなかった。


 かんぬきだ。


 外側から、差し込まれた閂。



「……これ、外側から閉めてあります」


「え?」とメイが言った。


「中から鍵がかかってるんじゃなくて、外から閉めてある」


「それは……どういう……」


「中にいるものを、閉じ込めてるんじゃなくて。外のものが、中に入らないように、誰かが閉めたんだと思います」


 三人が黙った。


「……それは」リーニャが言った。「中に、何があるということですか」


「わかりません」


 渉はバッグからラスペネを取り出した。


「ただ、固着してるのは確かです。まず、ここを緩めてみます」


「佐藤さん!!」とリーニャが叫んだ。


「見るだけです」


「どこが見るだけなんですか!!」



 渉は閂の固着部分にラスペネを吹きつけた。


 シュッ、という音。


 白い霧が金属の継ぎ目に吸い込まれていく。


 渉はバールを取り出した。


 バール(中)。一番使い込んでいる道具だ。


 閂の端に当てて、梃子の原理で静かに力をかける。


 ぎっ。


 金属が、軋んだ。


 ぎぎっ。


 また軋んだ。


 そして。


 ぎ……ごっ。


 閂が、ほんの数ミリ、動いた。



 その瞬間。


 扉全体が、低く唸った。


 ウォォォン……という、地の底から来るような振動音。


 メイの持つ感知器具が、一瞬だけ振り切れた。


「エネルギー反応が……一気に……!」


 フィオナが弓を引いた。リーニャが盾を構えた。


 しかし扉は開かなかった。


 ただ、唸った。


 まるで、長い眠りから目を覚ましかけているように。



 渉はバールを下ろした。


 閂はほんの少しだけ動いた。それだけだ。


「今日はここまでですね」


「……今日は、とはどういうことですか」と三人が同時に言った。


「ラスペネが浸透するまで、少し時間がかかります。明日また来れば、もう少し動くと思います」


「続きをやるんですか!?」


「固着してますから、一日で全部は無理です」


 渉はバッグにバールとラスペネを戻した。


「とりあえず今日はジャンク回収の続きがあるんで」


「今それどころじゃないんですが……!!」



 帰り道、メイが小声でフィオナに言った。


「……閂が完全に外れたら、どうなると思いますか」


「わからない」フィオナが答えた。「でも佐藤さんが気にしてないんだから、たぶん大丈夫じゃないですか」


「その根拠は」


「根拠はないです。でも佐藤さんが大丈夫と言ったら、大丈夫な気がする」


 メイはしばらく黙って歩いた。


「……私も、そう思います」


 二人は顔を見合わせて、小さく笑った。



 その夜、管理棟に戻った渉は、田所に報告した。


「第七層の扉、閂が外側についていました。固着してます」


 田所が固まった。


「……それ、封鎖シャッターを開けようとしたんですか」


「見に行っただけです。固着してたので、少し確認しました」


「少しって……」


「明日また行きます」


 田所はコーヒーカップを置いて、額に手を当てた。


「……報告書、どう書けばいいのよ」


 渉はメモ帳を一ページ開いて、田所に渡した。


「よければここに書いた内容を使ってください。固着の状態と、使った潤滑剤の種類と、閂の位置です」


 田所がメモを受け取って、読んで、また渉を見た。


「……あなた、本当に何者なの」


「清掃員です」


 渉はいつもと同じ顔で言った。


 田所は諦めたようにコーヒーを飲み直した。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

           〈第十四話 了〉

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【次話予告】

 翌朝。

 閂は、完全に外れていた。

 誰が、夜の間に動かしたのか。

 扉の向こうから、かすかな音が聞こえた。

 それは機械の音ではなく、まるで――息をするような音だった。

感想を頂けますと大変喜びます。(豆腐メンタルの為お厳しい意見はご遠慮ください)


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― 新着の感想 ―
シャッターなのに観音開きとはこはいかに? 生成AIとかに任せるとこういう頓珍漢な文章が割と有るんでそこは人間がチェックしないと、どこぞの水車が入る巨大井戸や核は危ないから反物質爆弾にしようみたいな黒歴…
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