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第70話 南の洞窟と“空っぽの部屋”

 

 クロガルとの戦いを終え、壮真はリュミナに声をかける。


「そういえばリュミナ、お前の部屋の荷物とか大丈夫なのか?ついでに取りに行くか?」


 リュミナは少し不安そうに羽を縮めた。


「・・・うん、でもわたしの部屋はほとんど何も無いから大丈夫・・・」


 サーヤが首をかしげる。


「何もないとはどういうことなのだ?家具はあったのだろう?」


「・・・ベッドと机だけ、服も持ってない・・・私は風の民の中で要らない子だったから・・・」


 壮真は眉をひそめた。


「要らない子?」


「うん・・・風の民は風魔法がうまく使えるかどうかで優劣が決まるの、だからほとんど使えない私は村の外れで暮らしていたの・・・」


「りゅぅぅ~みぃぃ~なぁぁぁぁぁ~~!!!!」


 サーヤが大粒の涙をこぼしながらリュミナに抱き着く。


「どうして、そんなひどいことが出来るのだーーー!!!リュミナが可哀そうなのだ!!!」


 リュミナは困惑しながらも、抱きしめられたまま固まっている。


 壮真は苦笑しつつも、胸の奥が少し痛んだ。


 ミィがぽつりと呟く。


「・・・ひとり・・・さみしい・・・」


 サーヤはさらに泣きながらリュミナを揺さぶる。


「そんなの間違っているのだ!!リュミナはこんなに優しくて、かわいくて、いい子なのだ!!どうして分からないのだ風の民はーーー!!」


「サ、サーヤさん・・・苦しい・・・!」


 壮真はサーヤの肩を掴んで引きはがした。


「落ち着けって!リュミナが潰れる!」


 サーヤは鼻をすすりながら言う。


「だって・・・だって・・・リュミナが可哀そうなのだ・・・!」


 リュミナは小さく微笑んだ。


「・・・ありがとう。でも・・・わたし・・・本当に風魔法が使えなかったから、みんなの役に立てなかったの・・・」


 壮真は首を振る。


「いや、回復魔法が使える時点で十分すごいだろ。昨日だってミィを助けてくれたじゃないか。」


 ミィもこくりと頷く。


「・・・リュミナ・・・つよい・・・わたし・・・たすかった・・・」


 リュミナは驚いたように目を見開いた。


「役に・・・立てた・・・?」


「立ってるよ。むしろいなかったら危なかった。」


 サーヤが涙を拭きながら、力強く言った。


「うむ!リュミナは“要らない子”なんかではないのだ!むしろ・・・むしろ・・・超必要な子なのだ!!」


「ちょ、超・・・?」


 リュミナの頬が赤く染まる。


 壮真は笑いながら言った。


「あははは、たしかに超必要な子だな!!!」


「・・・超超超必要・・・」


「・・・みんな!ありがとう!」


「だから俺たちに遠慮は要らないからな!家族と思って接してくれ。」


「ッ!?!?!家族!?」


「うむ、確かにわれわれはもう家族みたいなものだな。一緒に戦い、一緒にごはんを食べ、一緒に笑い、一緒に眠る・・・これはもう家族なのだ!。」


「・・・ん・・・家族・・・わたしがお姉ちゃん・・・」


「違うのだ!!私がお姉ちゃんなのだ!!!」


「・・・サーヤじゃお姉ちゃん力が足りない・・・」


「お姉ちゃん力とは何なのだ!!!」


「おいおい、それくらいにしとけよ。」


 と壮真が突っ込みを入れると・・・


「あはははははははは!!!」


 いきなり笑い声がし皆が笑い声の方を向くとリュミナが大きな声で笑っていた。


「あははは!お姉ちゃん力って何ですかもう!!!初めて聞いた!!!あはははは!」


「「「・・・ぷっ!!あははははは!!!」」」


 リュミナに釣られて笑い出す3人。


 この日、この島に家族が誕生した。


 しばらく笑い合ったあと、リュミナは目元を拭きながら、ふわりと羽を揺らした。


「・・・こんなに笑ったの・・・いつぶりだろ・・・ひとりじゃ・・・絶対に笑えなかった・・・」


 壮真は優しく言う。


「これからはひとりじゃない。俺たちはもう“家族”なんだからな!」


 サーヤが胸を張る。


「うむ!今日からリュミナは我らの仲間であり、家族なのだ!」


 ミィも小さく頷く。


「・・・ん・・・リュミナ・・・いっしょ・・・」


 リュミナは胸に手を当て、涙をこらえながら微笑んだ。


「・・・ありがとう・・・本当に・・・ありがとう・・・わたし・・・がんばる・・・みんなの役に立てるように・・・」


 壮真は立ち上がり、森の奥を見た。


「よし、じゃあ次は南側の奥地だ。」


 サーヤが剣を構える。


「うむ!森の奥の調査なのだ!」


 ミィは拳を握る。


「・・・まもる・・・」


 リュミナは羽を広げ、小さく頷いた。


「・・・わたしも行く、家族と一緒に・・・」


 こうして4人は、“家族”として初めての大きな一歩を踏み出した。


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