第69話 南の魔獣クロガル・狂化の牙
クロガルは低く唸り、背中の赤い紋様がじわりと光り始めた。
「・・・やばい、あれ攻撃態勢だ!」
壮真が叫ぶと同時に、クロガルは四足で地面を蹴り、砂煙を巻き上げながら突進してきた。
サーヤが剣を構える。
「来るのだ!!」
ミィは一歩前へ出て、手甲を構えた。
「・・・まもる・・・」
リュミナは後ろへ下がりながら、両手を胸の前で組む。
「・・・気をつけて・・・!あれ・・・毒の爪・・・持ってる・・・!」
壮真が振り返る。
「毒!?もっと早く言ってくれ!!」
「・・・ごめん・・・!」
クロガルがミィへ飛びかかる。
ミィは地面を蹴り、拳を構えた。
「・・・はっ!!」
ガァンッ!!!
ミィの拳とクロガルの爪がぶつかり、衝撃波が走る。
サーヤが横から斬りかかる。
「はぁぁぁぁっ!!」
剣がクロガルの肩をかすめ、黒い毛が舞った。
しかしクロガルは怯まず、サーヤへ向き直る。
「ぐっ・・・!」
「サーヤ!!」
壮真が叫ぶと、ミィがすかさず割って入った。
「・・・させない・・・!」
ミィの拳がクロガルの腹にめり込み、魔獣が後方へ吹き飛ぶ。
ドガァッ!!
木に激突し、クロガルは苦しげに唸った。
サーヤが息を整えながら言う。
「むぅ・・・さすがミィなのだ・・・!」
ミィは無表情のまま拳を下ろす。
「・・・まだ・・・くる・・・」
クロガルは立ち上がり、赤い紋様がさらに強く光り始めた。
リュミナが震える声で叫ぶ。
「・・・あれ・・・“狂化”・・・!
怒ると・・・力が倍になる・・・!」
壮真は青ざめた。
「倍!?ミィでも危ないじゃねぇか!!」
ミィは静かに拳を握る。
「・・・だいじょうぶ・・・まもる・・・」
サーヤも剣を構え直す。
「うむ!二人でかかれば負けぬのだ!」
クロガルが再び突進してくる。
壮真はリュミナの前に立ち、叫んだ。
「リュミナ!準備しておけ!誰かが傷ついたらすぐ回復だ!」
「・・・うん・・・!」
クロガルの咆哮が森に響き渡る。
ミィとサーヤが同時に前へ踏み出す。
壮真は息を呑んだ。
クロガルの赤い紋様がさらに強く光り、その体から熱気のようなものが立ち上る。
「・・・来る・・・!」
ミィが低く呟いた瞬間、クロガルは地面をえぐる勢いで突進してきた。
ドガァァァァァン!!
「速っ!!」
壮真が叫ぶより早く、ミィが前へ飛び出し拳を構える。
「・・・はっ!!」
ガギィィィィン!!
拳と爪がぶつかり、火花が散った。
サーヤが横から斬り込む。
「はぁぁぁぁっ!!」
剣がクロガルの脇腹をかすめ、黒い毛が舞う。
だが――
クロガルは怯まない。
むしろ、怒りでさらに加速した。
「グルルルルルルル!!」
ミィが迎え撃つ。
「・・・はっ!!」
しかし――
クロガルの速度がさっきより明らかに速い。
ミィの拳がわずかに遅れた。
「ミィ!!」
クロガルの爪がミィの腕をかすめ、血が飛び散った。
「っ・・・!」
ミィが後退する。
リュミナが叫ぶ。
「ミィ!!」
壮真が振り返る。
「リュミナ!今だ、回復を!」
リュミナは両手を前に出し、必死に魔力を集中させた。
「・・・癒しの風・・・やさしく・・・!」
ふわり。
淡い光がミィの腕を包み、傷がみるみる塞がっていく。
ミィは拳を握り直した。
「・・・ありがと・・・」
リュミナは息を切らしながら微笑む。
「・・・うん・・・!」
サーヤが叫ぶ。
「ミィ!今度は私が前に出るのだ!」
サーヤがクロガルの前へ飛び込み、剣を振り下ろす。
「はぁぁぁぁっ!!」
クロガルはその剣を爪で受け止め、サーヤを押し返す。
「くっ・・・!力が・・・強すぎるのだ!!」
ミィが横から飛び込む。
「・・・させない・・・!」
ドゴォォォォン!!
ミィの拳がクロガルの横腹に直撃し、魔獣が大きく吹き飛んだ。
木に激突し、地面に転がるクロガル。
しかし――
立ち上がる。
まだ戦意は消えていない。
壮真は歯を食いしばった。
魔力を集中させ手のひらに集める。
「紅蓮の深淵より這い出ずる焔よ、 我が魂を焦がし、世界を焼き尽くす業火となれ! 契約の名の下に、燃え盛る輪を放ち、 全てを灰へと還す――ファイアボール!」
壮真の手のひらから放たれた火の玉がクロガルの顔面へと直撃する。
クロガルが最後の咆哮を上げる。
「グオオオオオオオオ!!」
ミィとサーヤが同時に構える。
「・・・いく・・・!」
「うむ!とどめなのだ!!」
リュミナは後ろで両手を組み、仲間を信じて見守る。
壮真は叫んだ。
「ミィ!サーヤ!連携だ!!」
ミィが地面を蹴り、サーヤが横から走り込む。
クロガルが突進してくる。
ミィが拳を振り下ろす。
「・・・はぁっ!!」
サーヤが剣を振り抜く。
「はぁぁぁぁっ!!」
二人の攻撃が同時にクロガルへ命中した。
ドガァァァァァァァァン!!
クロガルの体が宙に浮き、
そのまま地面に叩きつけられた。
しばらく動かなかったが――
やがて、完全に力を失った。
サーヤが剣を下ろす。
「ふぅ・・・勝ったのだ・・・!」
ミィも拳を下ろす。
「・・・つよかった・・・」
リュミナが駆け寄る。
「みんな・・・大丈夫・・・?」
壮真は笑って頷いた。
「おう。お前の回復がなかったら危なかったな。」
リュミナは胸に手を当て、ほっと息をついた。
「・・・よかった・・・」
壮真はクロガルの倒れた方を見つめる。
こうして、4人は南側の危険を乗り越え、次なる調査へと進むのだった。




