第67話 4人で初めてのBBQ
リュミナは涙を拭いながら、羽をぎゅっと抱きしめた。
「・・・本当に・・・ありがとう・・・ひとりで・・・怖かった・・・また空に行ったら・・・落ちちゃうかもって・・・」
壮真は優しく笑った。
「もう大丈夫だ。ここには俺たちがいる。まずは飯食って、風呂入って、ゆっくり休め。」
サーヤが胸を張る。
「うむ!この洞窟は安全なのだ!それに、明日はBBQなのだ!歓迎会にはちょうどいい!」
「・・・にく・・・」
ミィが小さく拳を握る。
リュミナは驚いたように目を瞬かせた。
「BBQ・・・?なんだか・・・楽しそう・・・」
壮真は笑いながら言った。
「楽しみにしてろ。お前の分の肉もちゃんと注文してあるからな」
「・・・にく・・・?」
リュミナの羽がぴくっと動いた。
サーヤが得意げに言う。
「アマゾン神の力で肉が届くのだ!」
「神じゃねぇよ!!」
ミィは手甲を軽く叩きながら、ぽつり。
「・・・リュミナ・・・いっしょに・・・たべる・・・」
リュミナは涙をこぼしながら微笑んだ。
「・・・うん・・・ありがとう・・・こんなに優しくされたの・・・初めて・・・」
壮真は照れくさそうに頭をかいた。
「よし、とりあえず今日は休め。明日は楽しい一日にしようぜ。」
翌日――
洞窟の前の広場には、壮真が持ち込んだキャンプ用品がずらりと並んでいた。
「よし、炭も火もOK!肉も届いたし、準備万端だ!」
壮真はアマゾンの段ボールを開けながら満足げに頷く。
「・・・にく・・・」
ミィはすでに手甲をつけたまま、肉の箱を凝視している。目が完全に“獲物を見る肉食獣”だ。
サーヤは腕を組みながら鼻を鳴らす。
「ふん!今日はリュミナの歓迎会なのだ!だが、肉の取り合いでは負けぬぞ!」
「いや、歓迎会で戦うなよ。」
リュミナはまだ少し緊張した様子で、羽を小さく畳んで座っていた。
「・・・BBQって・・・どんな儀式・・・?」
「儀式じゃねぇよ!」
壮真は笑いながら、肉を網に乗せる。
ジュゥゥゥゥゥ・・・
香ばしい匂いが広がり、ミィの目がさらに輝いた。
「・・・はやく・・・」
「まだ焼けてねぇよ!」
サーヤもそわそわしている。
「むぅ・・・この匂い・・・なんという破壊力・・・!」
リュミナは初めて嗅ぐ香りに、目を丸くした。
「・・・すごい・・・風の民は・・・こんな匂いの食べ物・・・知らない・・・」
「まあ、焼肉文化は地球の誇りだからな。」
「誇りなのか?」
「誇りだ!」
肉が焼け、壮真は一枚をリュミナの皿に乗せた。
「まずはこれ。牛カルビだ!」
「・・・かるび・・・?」
「うまいぞ。食べてみろ。」
リュミナは恐る恐る肉を口に運び――
「・・・っ!? な、なにこれ・・・!?」
羽がバサッと大きく広がった。
「お、おい!?羽広がってるぞ!」
「・・・おいしい・・・!こんな・・・こんな食べ物・・・初めて・・・!」
サーヤが得意げに言う。
「うむ!壮真の料理は絶品なのだ!」
「いや、焼いただけだぞ。」
ミィはすでに三枚目を食べている。
「・・・ん・・・うま・・・もっと・・・」
「お前は落ち着け!」
リュミナが嬉しそうに肉を食べていると、サーヤがじとーっとした目で壮真を見た。
「むぅ・・・壮真殿・・・リュミナに優しすぎではないか・・・?」
「いや、助けたばっかりなんだから優しくするだろ。」
「ふん!私にも優しくするのだ!」
「してるだろ!」
ミィがぽそりと呟く。
「・・・サーヤ・・・やきもち・・・?」
「や、やきもちではない!!」
羽をバサバサさせながらリュミナが首をかしげる。
「・・・やきもち・・・?それも食べ物・・・?」
「違う!!」
壮真は笑いながら肉を追加で焼く。
「まあまあ、みんな食え。肉はまだまだあるからな。」
「・・・にく・・・!」
ミィが一番に反応した。
「そういえばリュミナ、お前・・・魔法っとかって使えるのか?」
サーヤが興味津々で身を乗り出す。
「うむ!風の民なら風魔法が得意なのではないか?」
リュミナは小さく首を振った。
「・・・わたし・・・風魔法は・・・あまり・・・得意じゃない・・・」
「そうなのか?」
ミィも珍しく首をかしげる。
「・・・羽あるのに・・・?」
リュミナは胸に手を当て、少し恥ずかしそうに言った。
「・・・わたしが使えるのは・・・“回復魔法”・・・だけ・・・」
サーヤが目を見開く。
「回復魔法!?それは貴重なのだ!王国でも使える者は聖女だけなのだ!」
壮真も驚いた。
「すげぇじゃないか!それなら怪我しても安心だな!」
しかしリュミナは、悲しそうに羽を伏せた。
「・・・でも・・・“自分には使えない”の・・・」
「え?」
壮真が聞き返す。
リュミナは小さく頷いた。
「・・・回復魔法は・・・“他の人の生命力を整える”魔法・・・自分の生命力には・・・触れられない・・・だから・・・怪我したら・・・治せない・・・」
サーヤが拳を握る。
「なんと・・・!それでは、あの高さから落ちた時・・・治す術がなかったのだな・・・!」
「・・・うん・・・だから・・・怖かった・・・海に落ちたら・・・死ぬと思った・・・」
ミィがぽつりと呟く。
「・・・リュミナ・・・よわい・・・だから・・・まもる・・・」
「お前が言うと説得力あるな!」
壮真は笑いながらも、心の中で決意した。
(この子は・・・守らなきゃいけない存在なんだな)
壮真は試しに、指を少しだけ切ってみせた。
「ほら、これくらいなら治せるか?」
「だ、だめ!!」
リュミナは慌てて手を伸ばし、壮真の手を包み込む。
「・・・癒しの風・・・やさしく・・・」
ふわり。
リュミナの手のひらから淡い光が広がり、壮真の傷は一瞬で塞がった。
「おお・・・!」
サーヤが感動して叫ぶ。
「これは・・・本物の聖女なのだ!!」
ミィもじっと見つめる。
「・・・すごい・・・」
リュミナは照れながら手を引っ込めた。
「・・・これが・・・わたしの魔法・・・でも自ら傷つけるのはやめてください・・・」
壮真は優しく言った。
「ごめん!でもお前が仲間を癒してくれるなら、俺たちが絶対“お前を守る”」
サーヤが胸を張る。
「うむ!任せるのだ!」
ミィも拳を握る。
「・・・まもる・・・」
リュミナは涙をこらえながら微笑んだ。
「・・・ありがとう・・・こんなに優しくされたの・・・初めて・・・」
肉を食べ、笑い、魔法を見せ合い――気づけば空は星でいっぱいだった。
サーヤは満腹でごろりと横になり、
「むぅ・・・食べすぎたのだ・・・」
ミィは皿を抱えたまま、
「・・・まだ・・・いける・・・」
「もうやめとけ!」
リュミナは羽を乾かしながら、ぽつり。
「・・・こんなに楽しい夜・・・初めて・・・」
壮真は火を見つめながら言った。
「これからもっと楽しくなるさ。4人いれば、なんだってできる。」
リュミナは涙を浮かべながら頷いた。
「・・・うん・・・!」
こうして、回復魔法を持つ少女・リュミナは、4人の中で欠かせない存在となった。




