第57話 初めてのダンジョンへ6
氷ゴーレムを倒し、ポイントの少なさに全員が微妙な顔になったあと、三人と一匹は再び氷の回廊を進んでいた。
「・・・しかし、5ポイントは少なすぎるのだ。」
サーヤがぶつぶつ言いながら歩く。
「まあまあ、ボスが破格だっただけだよ。普通はこんなもんだろ。」
ポポタヌは「ポポッ!」と鳴きながら、氷の床を滑って遊んでいた。
そんな中――
「・・・ん?」
壮真が足を止めた。
「どうしたのだ?」
「なんか・・・あったかい風が来た気がする。」
「・・・あったかい?」
ミィが首をかしげる。
氷の回廊の奥から、ほんのりと湯気のようなものが漂ってきていた。
「この階層、氷属性だよな?なんで湯気が・・・?」
サーヤは慎重に前へ進み、通路の先を覗き込んだ。
「・・・これは・・・!」
三人と一匹は、通路を抜けた。
そこは、氷の洞窟とは思えないほど暖かい空間だった。
天井からは青白い氷柱が垂れ下がり、壁は淡く光る氷の結晶で覆われている。
しかし中央には――
湯気を立てる大きな温泉があった。
「・・・温泉?」
壮真が思わず呟く。
ミィは湯気に顔を近づけ、無表情のまま言った。
「・・・あったかい。」
サーヤは驚きの声を上げる。
「これは・・・“魔力温泉”だ。氷属性のダンジョンに稀に存在する、疲労回復と軽いケガの治癒に特化した温泉だ!疲れが取れるぞ。」
「・・・入る。」
ミィはすでに服のボタンを外し始めていた。
「ちょ、ちょっと待てミィ!?な、なぜ脱ぐのだ!!?」
サーヤが真っ赤になって叫ぶ。
壮真も慌てて目をそらした。
「お、おいミィ!?ここダンジョンの中だぞ!?せめて場所考えろ!!」
ミィは無表情のまま、しかし当然のように言った。
「・・・温泉、入る。脱ぐの普通・・・」
「普通だけど!!タイミングってものがあるだろ!!」
サーヤは顔を覆いながら叫ぶ。
「ミィ!壮真殿の前で脱ぐとは何事なのだ!!」
「・・・壮真、見た?」
「見てねぇよ!!」
「・・・見てもいい・・・」
「よくない!!」
ポポタヌは「ポポッ!」と鳴きながら、ミィの脱ぎ散らかした服の上で丸くなっていた。
結局、サーヤがミィにタオルを巻かせ、壮真にはタオルで目隠しをして、なんとか全員温泉に入ることになった。
「はぁ・・・生き返る・・・」
壮真は湯に浸かりながら見えないが天井を見上げた。
氷の結晶が光を反射し、
まるで星空のように輝いている。
「・・・あったまるな。」
ミィが隣で小さく頷く。
「・・・うん。ここ、好き・・・」
サーヤは湯に肩まで浸かりながら言う。
「壮真殿、疲れはどうだ?」
「・・・体は軽くなってきたな。」
「うむ。この温泉は“肉体疲労”に特化している。ミィの拳の痛みも取れているはずだ。」
ミィは湯の中で拳を握り、軽く振ってみる。
「・・・痛くない・・・」
「よかったな。」
ミィは小さく微笑んだ。
「・・・うん・・・」
十分に休んだあと、三人と一匹は湯から上がった。
ミィはタオルを巻いたまま壮真の袖をつまむ。
「・・・また入りたい。」
「帰りにまた来ればいいだろ。」
サーヤは鎧を着直しながら言う。
「よし、体力は回復した。この先には“ボス”がいるはずだ。」
ミィは髪を拭きながら言う。
「・・・倒す。」
ポポタヌは「ポポッ!」と元気よく鳴いた。
壮真は深呼吸し、氷の回廊の奥を見つめた。
「よし・・・行こう。」
三人と一匹は、温泉の湯気が消えていく中、第2階層のさらに奥へと進んでいった。




