第55話 初めてのダンジョンへ4
壮真はリュックから鍋とコンロを取り出し、水を入れて火をつけた。
「・・・壮真殿、なぜ鍋なのだ?」
「俺の世界ではカニは鍋と決まっているのだ。」
ミィはすでにカニの身を抱えていた。
「・・・これ、全部入れる?」
「全部は無理だ!!」
壮真はカニの身を適度な大きさに切り、粉末出汁と共に鍋に入れた。
赤い結晶の光が鍋を照らし、湯気が幻想的に立ち上る。
「うわ・・・いい匂いだな。」
「・・・お腹すいた・・・」
「まだ煮えてない!!」
サーヤは腕を組みながら鍋を見つめる。
「しかし・・・ダンジョンの中で鍋とは・・・」
「いいじゃん。安全なんだし。」
「・・・まだ?」
「まだだって!!」
しばらくすると、鍋から香ばしい匂いが漂い始めた。
「よし、できたぞ!」
壮真が鍋を開けると、
湯気の向こうに真っ赤なカニの身が輝いていた。
「・・・おいしそう。」
ミィの目がキラリと光る。
サーヤも思わず息を呑んだ。
「これは・・・すごいな・・・」
壮真は皿にカニの身を取り分けた。
「ほら、食べてみろ。」
ミィは無表情のまま、しかし信じられない速度でカニを口に運んだ。
「・・・っ!!」
ミィの体がビクンッと震えた。
「・・・おいしい・・・・・・しあわせ・・・・・・カニ・・・最高・・・」
サーヤも一口食べて、目を見開いた。
「な、なんだこれは・・・!?カニとはこんなに美味なのか・・・!」
「だろ?」
壮真は満足げに笑った。
しかし――
次の瞬間、ミィが皿を抱え込んだ。
「・・・全部、私の・・・」
「いや、全部はだめだろ!!」
サーヤが慌てて皿を引っ張る。
「ミィ!おぬし、独り占めは許さないのだ!!」
「・・・サーヤの分、ない・・・」
「あるのだ!!」
二人は皿を挟んで引っ張り合いを始めた。
「・・・離して・・・」
「離さないのだ!!」
「・・・食べる・・・」
「私も食べる!!」
壮真は頭を抱えた。
「お前ら・・・仲良く食えよ!!」
ポポタヌは「ポポッ!」と鳴きながら、
ミィの足元でカニの欠片を拾って食べている。
「・・・ポポタヌまで!?」
サーヤが叫ぶ。
ミィは無表情のまま、しかし明らかに怒っている。
「・・・サーヤ、邪魔・・・」
「邪魔とはなんなのだ!!」
壮真はため息をつきながら、追加のカニを鍋に入れた。
「これ以上喧嘩すると鍋を没収するぞ!!!」
「・・・サーヤごめんなさい・・・仲良く食べる・・・」
「ミィ!すまなかったのだ!仲良く食べるのだ!」
二人は同時に謝り鍋を仲良く食べ始める。
「お前らは子供か!!」
カニ鍋を食べ終え、三人は満腹で床に座り込んだ。
壮真は金色に輝く魔核を手に取る。
「これ・・・どう使うんだ?」
サーヤが説明する。
「魔核は魔道具の材料になる。だが、主の魔核は特別だ。強力な魔法の触媒にもなる。」
「へぇ・・・」
ミィは無表情のまま言う。
「・・・食べられる?」
「食べるな!!」
壮真は魔核をメモ代わりに使っていたスマホの横に置き、どう使うか考え込んだ。
その時――スマホが震えた。
「えっ?」
画面が勝手に光り、魔核がスマホに吸い寄せられるように動いた。
「ちょっ!?吸い込まれてる!!」
サーヤが驚きの声を上げる。
「壮真殿!魔核が・・・!」
ミィも目を見開いた。
「・・・スマホが、食べた?」
「食べてねぇよ!!」
魔核はスマホに吸収され、画面に文字が浮かび上がった。
【AMAZONポイント +500】
「・・・・・・は?」
壮真は固まった。
サーヤも固まった。
ミィだけが首をかしげる。
「・・・あまぞん?」
壮真は叫んだ。
「なんでAmazonポイント増えてんだよ!!?」
サーヤも叫んだ。
「壮真殿!これはどういうことなのだ!!?」
「知らねぇよ!!俺が聞きたいわ!!」
しかし、次の瞬間――
壮真の顔がぱぁっと明るくなった。
「・・・でも、これ・・・魔核をスマホに吸わせればポイントになるってことだよな?」
サーヤも気づいた。
「つまり・・・ダンジョンを攻略すれば、ポイントが貯まる・・・?ということは焼き肉のタレ・・・シマちゃんグッズ・・・」
二人は同時に叫んだ。
「「最高だーーーーーーーーー!!!!」」
ミィは無表情のまま言った。
「・・・ポイント、おいしい?」
「食べ物じゃねぇよ!!」
ポポタヌは「ポポッ!」と鳴いた。
壮真はスマホを握りしめ、サーヤは興奮で頬を赤くし、ミィはカニの殻をしゃぶっている。
こうして――三人と一匹は、ダンジョン攻略の新たな目的を手に入れた。
“Amazonポイントを貯めるためにダンジョンを攻略する”




