第52話 初めてのダンジョンへ1
北の海岸でダンジョンを発見した翌日。
壮真は朝から洞窟の前で腕を組み、深刻な顔をしていた。
「・・・昨日のあれ、絶対ヤバいダンジョンだよな。」
「当然だ。あれほど魔力が濃い場所は、普通の洞窟ではありえん。」
サーヤが真剣な表情で頷く。
ミィはというと、ポポタヌを抱えたまま無表情で壮真を見上げていた。
「・・・ダンジョン、行く?」
「行くけどな・・・準備しないと死ぬ。」
「・・・死なない。私がいる。」
「とにかく、昨日のカニ・・・あれで雑魚なんだろ?」
「うむ。第一階層の“入口付近”に出る程度の魔物だ。当然雑魚だな。」
「入口であれって・・・絶対ヤバいダンジョンじゃん・・・」
壮真は震えながら言った。
「普通のダンジョンは1〜2階層で1km四方。大規模だと5階層以上。伝説級は10階層以上だ。」
「10階層とか絶対行きたくない!!」
「安心しろ。この人数だったら絶対に死ぬから行けん。」
「安心できねぇ!!」
ミィはポポタヌを撫でながら言う。
「・・・ダンジョン、食べ物ある?」
「お前は食べ物の心配しかしないのか!!」
壮真は洞窟の前にブルーシートを広げ、持ち物を並べ始めた。
「よし、まずはこれだ」
・ヘッドライト×3
・電池(ヘッドライト用)
・ロープ
・チョーク
・携帯コンロ
・携帯食料
・水筒
・ポリ容器40リットル(水入り)
・ナイフ
・寝袋×3
・救急セット
サーヤはチョークを手に取る。
「壮真殿、なぜチョークを?」
「迷わないように印をつけたくて・・・」
サーヤは松明を見て感心したように言う。
「このポリ容器は・・・この重さを持ち歩くのか?」
「一応魔法でも出せるけど・・・もし魔法が使えなくなったらって思って。一応キャリーワゴンで荷物は持っていこうかと・・・」
「・・・すごい、壮真殿はダンジョンに言ったことがあるのか?確かに階層によっては魔法が使えないエリアも存在する。」
「行ったことないよ!俺らの世界はダンジョンなんて無いし、ゲームとか本の知識だよ。」
「壮真殿の世界の想像力はすごいな。」
準備が一段落したところで、サーヤが真剣な顔で立ち上がった。
「壮真殿、ミィ。ダンジョンに入る前に、基本を教えておく。」
「講義してくれるのか?」
「当然だ。命がかかっているからな。」
ミィはポポタヌを抱えたまま、無表情で座った。
「・・・聞く・・・」
サーヤは咳払いをして語り始めた。
「まず、ダンジョンとは“魔力の濃い場所”に自然発生する。内部では魔物が生まれ、倒すとダンジョンに吸収される。」
「昨日のカニが消えたのはそれか。」
「そうだ。素材が残る場合もあるが、今回は出なかったな。」
ミィが手を挙げる。
「・・・食べられない?」
「たまに食材も出る。」
「・・・よし・・・」
「ほんとゲームみたいだな・・・」
「続けるぞ!ダンジョンは階層ごとに魔力の濃度が違う。下に行くほど魔物が強くなる。階段や転移陣がある場合もある。大規模ダンジョンは5階層以上。伝説級は10階層以上だ。」
壮真は震えた。
「10階層とか絶対行きたくない・・・」
「魔物の特徴としては第一階層は雑魚。第二階層からは群れが出る。第三階層からは知性を持つ魔物が出る。そして各階層にはボス部屋があり、当然そこにはボスがいる。ボスを倒せば必ず宝箱が出て、次の階層に進める。」
ミィが手を挙げる。
「・・・ボス、食べられる?」
「食べるな!!」
壮真は笑いながら言った。
「まあ、でも情報は助かるよ。」
サーヤは少し照れたように言う。
「・・・当然だ。おぬしを守るのは私の役目だからな。」
ミィがじっとサーヤを見る。
「・・・壮真は、私が守る」
「いや、張り合うな!!」
結局準備は夕方までかかり、三人は洞窟の前で最終チェックを行った。
壮真はリュックを背負いながら言う。
「食料よし、水よし・・・」
サーヤは剣を研ぎながら頷く。
「剣の状態も万全だ。ミィ、おぬしは拳のテーピングをしろ」
「・・・した・・・」
ミィは拳に白い布を巻き、ポポタヌはその横で「ポポッ」と鳴いた。
サーヤは深呼吸して言った。
「壮真殿、明日は気を引き締めていくぞ。ダンジョンは遊びではない。」
「わかってるよ。でも・・・なんかワクワクするな。」
ミィが袖をつまむ。
「・・・壮真と一緒なら、大丈夫」
サーヤはその言葉に少しムッとしたが、すぐに表情を引き締めた。
「では、明日――ダンジョン攻略だ。」
三人と一匹は、夜の海風に吹かれながら静かに頷いた。




