第47話 食料確保3
ザットンの巨体をミィが軽々と担ぎ、洞窟へ戻ってきたとき――
壮真は、目をまん丸にして叫んだ。
「お、お前ら・・・マジで狩ってきたのか!?うおおおお!ザットンだ!でかい!」
サーヤとミィはその言葉を聞き二人顔を見合わせ笑った。
「なんだなんだ!なんかおかしいこと言ったか?」
「いいや、こちらの話だ。だがどうだ!!こんなにデカいザットンを狩ってきたぞ!!!」
サーヤが胸を張る。
その横でミィは無表情のまま、ザットンの腹に頬をすり寄せていた。
「・・・おいしそう」
「食べるな!!まだ解体してない!!」
壮真がミィの襟首をつかんで引きはがす。
ミィはしょんぼりと肩を落とした。
「・・・ちょっとだけ・・・」
「だめだ!!」
壮真は苦笑しながら、ザットンの巨体を見上げた。
「さて・・・こいつを解体するのは2度目だな・・・」
「壮真殿、わたしも手伝うぞ。」
サーヤが剣を抜き、ザットンの喉元に刃を当てる。
その動きは迷いがなく、まるで熟練の猟師のようだった。
「ミィ、こいつを持ち上げてくれ。」
「・・・わかった・・・」
ミィはザットンを軽く持ち上げる。
サーヤは喉元に切れ目を入れ、血抜きを始めた。
赤黒い血が地面に流れ、廃棄用のごみ捨て穴へと入っていく。
「うわ・・・相変わらずグロいな・・・。」
「そう言うな。肉を美味しく食べるには血抜きが重要なのだ。」
「・・・おいしく・・・」
ミィの目がキラリと光る。
「ミィ、よだれを垂らすな!ふらふらしてるぞ!」
「・・・ごめん・・・」
サーヤは手際よく皮を剥ぎ、内臓を取り出していく。
その動きはまるで職人のようで、壮真は思わず見入ってしまった。
「すげぇ・・・お前、ほんとに女騎士か?」
「ふん、騎士は戦うだけではない。生きるための技術も必要なのだ。」
「・・・サーヤ、かっこいい・・・」
「そ、そんなに褒められても嬉しくないぞ!」
耳が赤い。
ザットンの肉は驚くほど多かった。
牛一頭分以上はある。
「これ・・・結構あるな。」
「・・・食べる・・・」
「食べるな!!」
サーヤがミィの額を軽く叩く。
「壮真殿、保存食を作ると言っていたな?」
「ああ。干し肉、それから生ハムでも作ってみようかな?」
「・・・生ハム?」
「うまい干し肉だ」
「・・・うまい!!!!」
ミィが目を輝かせる。
「よし、まずは塩漬けだな。」
壮真はリュックの中から塩、そしてスパイスを取り出した。
「では、私が肉を切り分けよう」
サーヤは大きな肉塊を次々と切り分けていく。
その横でミィはじっと肉を見つめていた。
「・・・ねえ、これ・・・今食べてもいい?」
「だめだ!!」
サーヤのツッコミが響く。
ザットンの後ろ足に塩とスパイスをすり込んでいく・・・
「これで3か月の塩漬けを行う。」
「・・・・なんだって!!!すぐに食べれない?」
「まあ干し肉と同じで時間はかかるよ。まあ後で少しドライの魔法をかけるから少しは早くなると思うよ。」
「・・・それでもすぐに食べれない・・・」
落ち込むミィを見て壮真は「せっかくだから」とBBQを提案した。
「・・・BBQ?」
「肉を焼いて食べるんだよ。うまいぞ。」
「・・・食べる!!!」
「焼く前に食べるな!!」
壮真は笑いながら炭を起こし、鉄板を置いた。
ザットンの肉を厚切りにし、塩と胡椒を振る。
ジュウウウウウウウウウッ!!!
肉が焼ける音が響き、脂が滴り落ちて炎が上がる。
「うおおおおおおおおおおお!!いい匂い!!」
「・・・すごい・・・」
サーヤとミィが同時に息を呑む。
「よし、焼けたぞ。ほら、食べてみろ。」
壮真が皿に肉を乗せ、二人に差し出す。
サーヤは慎重に一口かじった。
「・・・っ!?やっぱりうまい!!」
「だろ?」
「うまいどころではない!!これは・・・神の食べ物か!?」
ミィはというと――
「・・・・・・・(もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ)」
すでに皿の肉を全部食べていた。
「おい!!早すぎるだろ!!」
「・・・もっと・・・」
「ふっふっふ・・・まあ待て今のは序の口だ!そうだろサーヤ・・・」
「ああ、次の肉からはあれをかけるのだな・・・くっくっく・・・」
「・・・何?」
ミィが首をかしげる。
サーヤが胸を張り叫ぶ
「それは・・・焼き肉のタレだ!!!」
「やきにくの・・・たれ?」
ミィの耳がピクッと動いた。
「肉にかけると、さらにうまくなる魔法の液体だ」
「魔法の・・・液体・・・?」
ミィの目が、今まで見たことがないほどキラリと光った。
壮真は鉄板の上の肉にタレを垂らす。
ジュワァァァァァァァァッ!!!
甘辛い香りが一気に広がり、三人の鼻を刺激する。
「これこれ!!!この匂い♪!?」
サーヤが震えた。
ミィはというと――
「・・・・・・・・・(ダラダラダラダラ)」
無言のまま、すごい量のよだれを垂らしていた。
壮真が慌てて肉を皿に移し、
タレを絡めてミィに差し出す。
ミィは無表情のまま、肉をつまみ――
ぱくっ。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ!!!
「・・・っっっ!!!」
ミィの体がビクンッと震えた。
「・・・なにこれ・・・おいしい・・・おいしい・・・おいしい・・・!!」
ミィは壊れたおもちゃのごとくおいしいを連呼し足踏みしながら肉を要求してくる。
「・・・もっと・・・もっと・・・もっと・・・!」
「ミィ!落ち着け!順番だ!!」
サーヤが必死に押さえるが、
ミィはタレの匂いに完全に理性を失っていた。
「・・・タレ・・・タレ・・・タレ・・・!」
「お前、タレに取り憑かれたのか!?」
壮真は笑いながら追加の肉を焼き、
タレを絡めてミィに渡す。
ミィはそれを両手で抱え込み、
まるで宝物のように大事に食べ始めた。
「・・・うま・・・しあわせ・・・タレ・・・最高・・・」
サーヤは呆れながらも微笑む。
「どうだ・・・焼き肉のタレの威力は?」
「・・・完敗・・・」
壮真はその光景を見ながら鉄板の上で次々と肉を焼き、ふと空を見上げた。
「・・・こうして三人で食う飯ってのも、悪くないな。」
サーヤは照れくさそうにそっぽを向く。
「ふ、ふん・・・まあ、悪くはないな。」
ミィは肉を抱えたまま、無表情で頷いた。
「・・・また・・・タレ・・・食べたい・・・」
「お前はまず“食べ過ぎない努力”をしろ!!」
壮真のツッコミが響き、三人の笑い声が夜の森に溶けていった。




