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第46話 食料確保2

 サーヤとミィは2人で食料確保のためにザットンを狩りに来た。


 森の奥へと続く獣道は、昼間だというのに薄暗かった。


 巨大な木々が空を覆い、葉の隙間から差し込む光が地面にまだら模様を作っている。


 湿った土の匂い、遠くで鳴く奇妙な鳥の声、そして・・・重い地響き。


「・・・来たな。ザットンの足音だ。」


 サーヤが剣の柄に手を添え、鋭い目で前方を見据える。


 その横でミィは無表情のまま、拳を軽く握りしめていた。


「ミィ、準備はいいか?今回は二人の連携を試す機会でもある。声を掛け合って行くぞ!」


「・・・うん。お腹・・・空いてる・・・」


「私も空いてる!だから狩るのだ!」


 サーヤが額に青筋を浮かべながらも、どこか楽しそうに笑う。


 二人は壮真の作った簡易地図を頼りに、ザットンの縄張りへと足を踏み入れていた。


 ザットン・・・


 サーヤの世界で“中型魔獣”と呼ばれる生き物で、体長は牛ほど。


 角が鋭く、突進力は凄まじい。


 肉はうまく、保存食にも向くため、生活基盤を整えるには最適の獲物だった。


「壮真殿の罠はこの先だな。落とし穴に誘導できれば楽なのだが・・・。」


「・・・落ちるかな?」


「落ちる!落ちるはずだ!壮真殿の罠は見た目以上に巧妙なのだ!」


 サーヤは胸を張るが、ミィは首をかしげる。


「・・・来る・・・」


 ミィが小さく呟いた瞬間、森の奥から木々が揺れた。


 ドドドドドドドドッ!!!


 地面が震え、鳥たちが一斉に飛び立つ。


 巨大な影が木々の間から姿を現した。


「ザットンだ!」


 サーヤが叫ぶ。


 ザットンは牛のような体に、イノシシのような牙、体毛は紫で、目は赤く光っている。


 その巨体がこちらを見つけた瞬間・・・


 ブオオオオオオオオオオッ!!!


 耳をつんざく咆哮が森に響いた。


「ミィ!右から回り込め!私は正面から注意を引く!」


「・・・了解・・・」


 ミィは音もなく地面を蹴り、木々の間へと消えた。


 その動きはまるで影のように滑らかで、サーヤでさえ目で追うのが難しい。


「さあ来い!ザットン!!」


 サーヤが剣を構え、ザットンの突進を正面から受け止める構えを取る。


 ザットンは地面を蹴り、一直線にサーヤへ突っ込んできた。


「ふんっ!!」


 サーヤは剣を横に構え、牙を受け流すように身をひねる。


 ザットンの突進は空を切り、サーヤの横を通り過ぎた。


「この程度の突進、避けられぬほど鈍ってはおらん!」


 サーヤは剣を振り下ろし、ザットンの背中に浅い傷をつける。


 ザットンが怒り狂い、再び向きを変える。


「ミィ!今だ!」


「・・・ん・・・」


 ザットンの背後から、ミィが飛び出した。


 その小柄な体からは想像できないほどの跳躍力で、ザットンの背に飛び乗る。


「・・・おとなしくして・・・」


 ミィは額に拳を叩き込んだ。


 ドゴォッ!!!


 鈍い音が響き、ザットンが苦しげに吠える。


 だが、まだ倒れない。


「ミィ!もう一撃だ!」


「・・・わかった・・・」


 ミィが拳を構えたその瞬間・・・


 ザットンが暴れ、ミィの体を振り落とそうと跳ね回る。


「ミィ!しっかり掴まれ!」


「・・・大丈夫」


 ミィは片手でザットンの毛を掴み、もう片方の拳を振りかぶる。


 その姿はまるで小さな戦鬼のようだった。


「はあああああああああっ!!」


 ドゴォォォォォォォン!!!


 拳が角の根元にめり込み、ザットンの体が大きく揺れた。


 そのまま巨体が崩れ落ちる。


 ドサァッ!!!


「・・・倒れた・・・」


 ミィが無表情のまま地面に降り立つ。


 サーヤは剣を収め、深く息を吐いた。


「ふぅ・・・見事だミィ。おぬしの拳は本当に頼りになる」


「・・・お腹すいた・・・」


「まだ食べるな!解体してからだ!」


 ミィはしょんぼりと肩を落とす。


「・・・ちょっとだけ・・・」


「だめだ!!」


 サーヤが怒鳴ると、ミィはさらにしょんぼりした。


「まったく・・・おぬしは食べることしか考えておらんのか?」


「・・・うん・・・」


「認めるな!!」


 いつもは壮真がツッコミなのだが壮真のツッコミが移ったのかサーヤのツッコミが冴える。


「よし、壮真殿のところへ運ぶぞ。ミィ、頼む。」


「・・・了解・・・」


 ミィはザットンの巨体をひょいと持ち上げた。


「お、おぬし・・・獣人族とはすごいのだな・・・全員が力が強いのか?」


「・・・ひみつ・・・」


「ひみつってなんだ!!」


 サーヤが叫ぶが、ミィは気にした様子もなく歩き出す。


 森を抜け、洞窟へ向かう帰り道。


 サーヤはふと空を見上げた。


「・・・だが、こうして狩りをするのも、悪くないな。」


「・・・うん。楽しい・・・」


「そうか。ならよい。」


 サーヤは小さく笑った。


「壮真殿が喜ぶ顔が目に浮かぶな。『うおおおお!ザットンだ!でかい!』とか言いそうだ」


「・・・言う・・・」


「だろうな!」


 二人は笑いながら歩き続けた。


 その背中は、まるで長年の相棒のように自然で――


 そして、ずっと家族だったかの如く温かい雰囲気だった。




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