儀式の始まり
「トワ! 聞こえているか?」
私はトワを抱えながら走っていた。呼吸も心臓も止まっていないが何一つ返事をしない。新しい魔法を創り出して解除するか? いや、『秩序』が混ざった《神聖魔法》に通用するかは賭けになるだろう。
「『秩序』を創り出すのも危険か……」
これが焦るという事なのだろう。初めての感覚に少し戸惑っていた。……そうだ、《読心》を使えば……
「《読心》」
(トワ、聞こえるか!)
(ソウちゃん? あーー……その事ならたぶん大丈夫そう、でもなんか体を無理矢理動かされるような感覚がねー)
身体操作か……トワが大丈夫と言うなら安心してもいいかも知れない。
(で、どうするの?)
(このまま街に向かう、耐えられるのだろう?)
(もちろん! なんなら押し返してみようか?)
ここまで強力な魔法を押し返せると豪語できるくらいには余裕があるらしい。私は言った通りにトワを抱えながら街へと再び駆け出した。
(ちょっと! 痛いって!)
……
「冒険者諸君、儀式って知っていますかね?」
男は屋根から冒険者を見下ろしながら言う。
「儀式だ? そんなのどうでもいいから降りてこいや! 誰か梯子持ってこい!」
冒険者たちは男に攻撃を仕掛けようとする。
「はぁ……まぁ知らないみたいですかね、ここには魔法を使える者も今は居ないみたいなので」
男は呆れ気味に言った。
「知らないなら知らないままでいいですか……なら早いこと…………皆さんには死んでもらいますか」
「あん?」
次の瞬間、一人の冒険者の首が消えていた。
「……え? 何が起き……」
また一人。
「っ! 逃げるぞ! ひけぇ……」
また一人。
……
「おや? 他の冒険者には逃げられてしまいましたか」
男がそう言った時には、首から上が無い死体が十数、散乱していた。
「魂の力というのはすごく効率的ですからね、必要数までは後もう少しなんですが……」
そのように言いながら男は街の外側を見つめる。
「どうやら、奴らが来そうですね……最終決戦と言うべきでしょうか? まぁ、まともに戦ってはいられませんが」
……
私達が街に着いた時には大勢の死人が出ていた。
「これは……」
「ソウさん! 戻ってきましたか!」
「どのような状況なのか教えてくれるか?」
私はその場にいた冒険者の一人から事情を聞いた。ギルドにあの男がいる事も。
「男は私がやる、それとトワが動けなくなっている……そっちで預かってくれ」
「トワちゃんが? は、はい……」
「トワが動けるようになったら街の外に出ろ、そちらの方が安全だ」
そう言って私はギルドの方へと急ぎ向かった。




