知るべき事
「おー、ソウちゃん帰ってきた」
トワはそれまで寝ていたのか、眠そうな口調で私を出迎えた。
「それで、何かわかったの?」
「ああ、ある程度……いや確実に怪しい集団を確認する事はできた」
トワは少しつまらなそうにしていたが、私の言葉を聞いて質問を返してきた。
「そいつら、強そう?」
「私が仕留めきれなかったんだ、生き残る術は磨かれている」
相手が強いことを知ったその瞳は輝いていた。よほど戦うのが好きなのだろう。
「私が倒してもいい?」
「ダメとは言わないが、倒し切ることは難しい上に相手は複数だ、一人で挑まない方がいい」
すっかり一人で戦いに行く気だったようだったが、行かないことにしたようだ。
「残念だな〜〜、そうだ魔物がなんか世界各地で? 大規模出現してるらしいよ?」
「……そうか」
彼らは私と真っ向勝負はせずに、この街を破壊する準備をしているのだろう。いつか、その大量の魔物はこの街を襲う。避ける事はできないだろう。
「トワ……《加護》は欲しいか?」
「欲しい!」
即答だった。今まで以上に嬉しそうな口調をしていた。
「……いつかな」
「え〜〜……今すぐ欲しいのに〜」
すぐに渡してしまっては危険かもしれない。私の『秩序』は強大すぎるため、渡すためには“慣らし”が必要だ。
「私のような精霊を見かけたら積極的に使うんだ」
「ソウちゃんみたいな精霊?」
よくわかっていないようだったがきっと使ってくれるだろう。
「何か物を作り出す魔法を知っているか?」
「ソウちゃんがやってるやつ?」
「そうだ、できるか?」
「やってみる」
この世界には元々《生成魔法》と呼ばれる系統の魔法がある。あまりにも効率が悪いためほぼ廃れ切ってしまっているが。
トワはなんの苦労もなく、私の《創造》と同じレベルの結晶を作り上げた。
「できたできた〜〜」
私に褒めて貰いたいのか近づけて見せてくれた。
「よくできるじゃないか、これなら近いうちに《加護》を渡すことができるかもしれない」
……
トワに《加護》を渡せば、彼女は間違いなく数年のうちにこの世界の人類では太刀打ちできない存在になる。
「世界の均衡的には問題があるか……」
そんなことを星の見える夜空の下で呟いていると、聞き覚えのある声がした。
「何かお悩みで?」
「『狐』か」
この稲荷という『狐』の神はいつもこちらの考えを全て知っているように話すため、説明は不要と判断した。
「そうですね、言いたい事はわかりますよ、世界の均衡ですね」
「ああ、お前はどう思う?」
稲荷は数秒の沈黙の後語った。
「別にいいのではないですかね? 『秩序』に制限されないということはあまり問題がないのでしょう」
「そうか……」
しかし、稲荷は少し険しい顔をして続けた。
「ただ、一つ気になることがあるのですが……」
「なんだ?」
「そのハイエルフ、《加護》の形とはいえ、よく『世界』の『秩序』を受け入れられますね」
考えれば少しトワは規格外な存在なのかもしれない、ハイエルフが特殊な種族だとしてもトワの力量は以上だ。いつか彼女の母に何か知らないか聞くべきか。
「相談に乗ってくれて助かった。いつも丁度いい時にに来て助かっている」
「お力になれたなら何より」
そういうと稲荷は消えた。
「『狐』……トワ……謎の男とその目的……知らなければならない事はまだまだ多いな」
私はこの全てを知らなければいけないという最高神としての義務感を抱いた。




