残影の違和感
「……魔物の群れですか?」
「うん、なんか結構近くにたくさんいたの」
最近は街の近辺で魔物の数が増えている事をトワがギルドの者に伝えるていた。
「実際どうなんですか?」
私の方に話を振られてしまった。まぁトワがいう事は大雑把すぎてあまり当てにならない。
「トワの言ってること自体は正しい、ドラゴン騒動の後確実に個体数は増えている」
「んー、何か関係があったんでしょうか? 心当たりあったりしますか」
「……いや、特にない」
……実際のところ一つ気付いていることがあるが、あまりにも荒唐無稽なため黙っておくことにした。
……
「ソウちゃんなんか気づいてたの?」
「……ああ、そうだな」
違和感……それは私やトワのような限られた者しかわからない事だった。
「魔法の残影はわかるな?」
「確かなんか魔力が残っちゃうやつだっけ」
魔法の残影、この世界で魔法は完全に魔力と等価ではない。魔力が一部使われずに残ってしまう事をこの世界では魔法の残影という。
「で、それがどうかしたの? あそこは魔物が増えてるからみんな戦いに行って残影が残ってるだけじゃないの?」
トワは私が何を言いたいか理解していないようだった。
「魔力の残影……の中に『秩序』を感じた」
「『秩序』ってソウちゃんと同じ神様がいたってこと?」
魔力と『秩序』の力は完全に別種のものである。だからこそ『神』である自分にはこれが極めて奇妙な事であることが分かった。
「『神』がその場にいたわけではない、だからこそ考えられるのは《加護》を持ってる何者かが使っている」
「別に《加護》があるだけじゃ悪いことじゃないんじゃないの?」
そう、この世界には《神聖魔法》として《加護》の所有者がある程度の『秩序』の力を使う事ができる。
「……それだけならよかった、端的に言えばあの残影に混ざっていた『秩序』……歪められている」
「……?」
トワにはどういう意味なのか理解できなかったらしい。
……
「セラさん、調子はいかかでしょうか?」
「何も心配しなくて大丈夫です、ちゃんと言われた通りにできました」
とある日の夜、街角でそのように会話する声がしていた。
「貴方は実に我らが『神』に気に入られている……とても羨ましいです」
「……《神聖魔法》を無理に組み替えるのは『神』の意志なのですか?」
「ええ、私に与えられた《神聖魔法》はそういうものですから……」
街角といえど、夜にこのような会話をしていては誰かに聞かれてしまうのではないかとセラは少し不安になっていた。
「心配しなくても大丈夫ですよ、ちゃんと周囲に人がいないことは確認していますので……」
「……これからどうされるのですか?」
男は手で顎を抑えながら微笑んだ。
「……まずは、この国の大部分の魔物をこの街に呼び寄せます」
セラはその言葉に何の感情も抱かなかった。




