夜の出来事
私は『狐』から伝言をもらった後、宿に帰っていった。
「ソウちゃんおかえり!なんか面白い話あった?」
「特にないぞ」
「えー!じゃあなんの話してたの?」
「……知り合いが推しのライブに行くとか言っていたが」
「推し……?ライブ……?なにそれ」
「さぁ? 私も詳しくは知らないよ」
本当に『光』は何をしているのだろうか……
……
いつものようにトワと他愛のない会話をしているといつの間にか彼女は寝てしまっていた。ここ連日多くの依頼をこなしていたため疲れがたまっていたのだろう。どこかのタイミングで長めの休暇をとることを提案したりしたが、本人が却下したのでしないことにした。あまり無理はしてほしくはないのだが。
……
たまには夜の外を散歩するというのが一部の人類にとって心地よいことらしい、という事を聞いた私は夜中に一人で出かけることにした。
あたりは静かで、空には多くの星が輝いていた。
私には精霊であろうと何であろうと見ることができる。『世界』すべての根源やそれを構成する『秩序』を見ることができる。
しかし、この世界で今このように輝く星々を見ることは、今この場にいる私の『神』としての体でしかすることができない。
『創造』は全ての始まりを知り、始まりの輝きを観測できるが、今輝く星の観測はこの瞬間しかできない。
人類に至ってはこの一瞬の連続が全てである。その変化を観測し続け、それを追い求める人類の性を少し知ることができたような気がする。
『破壊』が言ったことも今ならば少し理解できる。自らの『創造』の先に何があるのかを見てみたいと。
私は掌の上でとても小さな輝く結晶を『創造』し、空に上げた。
この結晶は私が何の指定もせずに完全に新しいものとして『創造』されたものだ。私にはこの結晶がどのようなものなのかはわかるが、これがどのように存在していくのかを知ることはできない。
「おもしろい」
ふと後ろで声がして振り向くと夜空と同じ色と輝きの装束に身を包んだ少女がいた。
「この世界の……『星』か」
「さすがは『世界』の『創造』、私が何者なのかすぐにわかるのね」
淡々と『星』は告げる。
「その結晶はいずれ、星の種となり、星として輝く運命を持つわ」
「……そのような運命はなくなるかもしれないぞ?」
「面白いことを言うのね。確かに、この世界の理外の存在である『世界』の『創造』ならばそれは可能」
『星』は論理的に会話をしている。どこかの『狐』などとは大違いだ。
「一つ聞いていいか、なぜお前はここに現れた?」
「あら?考えられないのかしら?『秩序』に乱れが生じたらすぐに駆け付けるでしょう。あまりこの世界には干渉してほしくないわ」
この世界の『星』は『秩序』を守ることだけを存在意義としているらしい。
「考えればそうか、無理もないかお前がそのような性格なのは」
「何のことかは知らないけど私は用が済んだから別の星に行くわ」
そうして『星』は消えていった。
「……完璧な『秩序』として『想起』された『星』は人類の『想起』を知ることはできない、ということか……」
『世界』は複雑に絡み合っていると私は痛感するのであった。




