初旅
その朝、私はいつものようにトワを起こすことから始めた。
「トワ、朝だ、起きろ」
「んーーー…いつもより…はやい……もうちょっと…ねさせ……」
「起きろ」
私はトワをベッドから持ち上げる
「んーー!」
トワがいつものようにふてくされた表情で私を見上げる。
「旅に行くんじゃないのか」
「旅……」
トワ自身はやはり旅に行きたいらしく、いつもより早く自分から動き出した。
……
トワはいつものように食事をとり、洗顔などのいつもの朝と同じことをした。そしてこの前に私が創ったトワ用の装備品を着て、必要なものを準備した。
「準備は大丈夫か?」
「大丈夫だよー!」
「では行こうか」
私達は集落の周りにある結界を抜けて人間の街へと向かい始めた。
……
出発してから数時間経った頃
「ねー、後どれくらい歩くのー?」
「このあたりで折り返しといったところだ」
「歩くのたいへーん」
と少し文句を言われた。トワの体力なら余裕な道のりだが、あまり変わり映えのしない景色に飽きたのだろう。
そんな時、丁度よく魔物が現れた。
「トワ、魔物が出たぞ」
「魔物!?」
狼型の魔物が四体ほど私達の行く道に現れた。この時のトワはとてもうれしそうな表情をしていた。
「倒していいぞ」
「やったー!」
トワは魔法が好きでその魔法を使える相手が見つかってはしゃいでいた。トワは周りの精霊たちを使って魔法を使った。
「《風斬》」
魔物は本能的にトワが使った魔法の危険性を感じ取ったのか、大きく後ろに飛び下がり回避行動をとった。……がそれは意味をなさず四体全て風の刃に切り裂かれた。
「やったーー!ソウちゃん!私四体まとめて倒せたよ!」
「すごいじゃないか、ちゃんと教えたことを理解して魔法を使えている」
《風斬》は風の刃を飛ばす魔法だが、かなり初歩的な魔法で威力が低く、多少の切り傷をつける程度しか本来できない。だが、トワは《精霊魔法》の恩恵や、本人の技量で小型の魔物を数体でも一度に両断するほどの威力を出すことができている。さらに、多くの魔法がある中で《風斬》を選んだことも効率よく倒すことを考えることができている。
「やっぱりトワは魔法の使い方が上手いな」
「えへへ~それほどでも?」
それほどでもという割にはとても満足そうな表情をしている。
「確かこの周辺ではエルフの集落と人間の街の間では魔物が出やすかったな」
「私がんばっちゃうもんね!」
どうやら私がやらなくても頑張ってくれるらしい。本人が楽しそうだし良いことだ。
「さぁ、夜になる前に街に到着するように行こうか」
「走ろ!」
「ん?」
私はトワに手を引かれて走り出した。そういえばあまり走ったことは無かった。私は少し新鮮な気持ちでトワと走っていた。
「《氷針》!《火球》!」
トワはとても楽しそうに魔法を使っていた。トワの母が旅に出たほうがいいと言ったのはこの子のことをよく知っているからだろう。
「トワ、旅は楽しいか?」
「楽しい!」
様々な魔法をトワが使いながらそう答えた。私も不思議とトワの笑う顔に満足していた気がする。




