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灰長与次郎

 それにより、国や陰陽師協会など様々な者がこの問題解決に動くこととなる。

 しかしこんな問題ですら、人々は時に派閥争いに発展することがある。


「あん? 国交省からの依頼? ああ、あの化物か」


 部下からの言葉に、そう返したのは灰長与次郎(はいながよじろう)二級陰陽師。

 過去に一度一級陰陽師を輩出したこともある名門・灰長家現当主である。

 口髭を生やした四十程度の男で、いい加減だがどこか振る舞いからは色気が感じられた。


「おいおい、あんな化物相手に戦う訳ねえだろ。一般人が何人死のうが俺には関係ねえ。とっととお断りしろ」


 そう言いながら、足の爪を切っている。


「分かりました」


 爪をパチパチと切りながら、灰長はがしゃどくろのことを考える。


(確か春野の野郎が逃げ出したんだったか……だが、もう報道からまる一日経つのに未だに人的被害はゼロか。妙だな。自衛隊や陰陽師が何度襲おうが、全く反撃してねえのか?)


 灰長は違和感を感じ、がしゃどくろに関するニュースを調べる。


(ふむふむ。本当にゼロっぽいな。何かがおかしい。人間を傷つけられないような封印がかかっている可能性があるな。これは千載一遇のチャンスだ。奴を祓うことができれば、一級の可能性が。いや、違う。奴を調伏できれば間違いなく俺は一級になれる!)


 灰長は口角を僅かに上げる。


「おい! やっぱり受けるぞ、依頼! 対策を練る」


「……流石に厳しいのでは? 明らかに一級クラスです」


「びびるんじゃねえ。奴について調べろ。間違いなく何かあるぜ」


 灰長はがしゃどくろについて何か裏を感じ取り、動き始めた。


 ◇◇◇


 あれから毎日、がしゃどくろに関する報道が流れている。

 そろそろ、あいつに会いに行こうと考えていると、我が家に来客がやって来た。


「道弥~、貴方にお客様よ~」


 母に呼ばれて、玄関に向かう。


「君が芦屋道弥さんだね。当然の訪問、申し訳ありません。ですが急用でね。私は国会議員の蓮華(れんげ)と申します。お話を聞いてもらえないだろうか?」


 後ろに数人の秘書やボディーガードを引き連れ、国会議員がやって来た。

 年はもう六十近いはずだが、しっかりとした服装に髪型も整えており、覇気が感じられる。

 面倒事か?


「初めまして、芦屋道弥です。玄関はなんなんで、中へ」


 蓮華さんを中に入れる。

 応接間に通して、座ってもらう。

 秘書の人が手土産を母に渡していた。

 国会議員だというのに、随分と礼儀正しいな。


「芦屋さん、君もがしゃどくろのニュースを知っているだろうか?」


 落ち着いた頃、蓮華さんが口を開く。


「勿論。ニュースはあれで持ち切りですからね。」


「今、陰陽師協会や国が動いているが、あまり成果は上がっていない。だが、がしゃどくろが高速道路付近に留まり始めてから、高速道路は封鎖中になっている。それは物流にも大きな影響があるのです」


「そうでしょうね」


「今、国交省も動いているんだが、我々も一刻も早く彼を祓除しなければならない。そしてできれば、国交省よりも早く、祓除したいのです」


 俺は首を傾げる。

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