アルバート先生
昨日言った通りアルバート様は臨時講師として学院で働くようだ。
何故なら学院に向かう馬車の中で
「シアと登校するのも久々だね?」
…と私の正面に座ってにこやかにアルバート様が言っているからだ。
最初は隣に座りたがっていたアルバート様だが、私が「私達は生徒と講師です!!適切な距離感を保ってください!!」と強く言った為しぶしぶ正面に座りなおしていた。
「本当はシアが卒業するまで一緒にいたかったのだがな…」
「ほんとにもう…私ももうじき卒業します!そうすれば私もアルバート様の隣でお仕事できますから…もう少しだけ頑張ってください」
「…シアはいつも俺が欲しい言葉をくれる」
そんなやり取りをしながら馬車は学院の方へ進んでいく。
アルバート様の受け持ちはなんと私のクラスだった。
恐らく学院長に何らかの圧をかけたんだろうな…と容易に想像がつく。
クラスメイト達は私がアルバート様の婚約者だと当然知っているので、生暖かい視線を感じる…つらい。
かと言ってこれ以上アルバート様に厳しいことを言うのも酷だと思いパワハラめいたことについては敢えて言及しないでおく。1週間の間だけだしね。
アルバート様は経済学担当でアルバート様の授業は本来の受け持ちのおじいちゃん先生より分かりやすかった。
一部のクラスメイトは「アルバート殿下が先生のままならいいのに…」と言われるくらい大絶賛だった。
それからいくつかの授業を受けお昼になった。
「シア、迎えに来たよ?」
学生時代の時と変わらない感じでアルバート様が教室まで迎えに来た。
周りの生暖かい目に耐えられなかった私はいそいそとアルバート様の元へ向かう。
「なんというか…アルバート殿下の愛を感じますね」
「結婚後も苦労なさいますね…ルシア様…」
ソフィアとリリアンヌが私達の後ろ姿を見てそう呟いていたのを私は知らない。
「…本当にお昼誘ってくれるとは思いませんでしたよ」
「俺は有言実行タイプだからな」
「存じています…」
ため息をつくのをなんとか耐えて苦笑いを浮かべる。
「しかしアルバート様とこうして学院でお食事するのも久々ですね」
「そうだろう?こうした時間も良い思い出になるんじゃない?なんだっけ、良く学び良く遊び良く食べて学院生活の思い出を作る…だっけ?」
「もう!!その話はやめてください!!」
私が顔を赤くして言えばアルバート様が声をあげて笑った。
少年のような笑顔にどきっとしたのはここだけの話。
アルバート様を戒めはしたものの私自身再びアルバート様との学院生活を送れて嬉しかったし楽しかった。
しかし楽しい時間はあっという間に過ぎる物で気付けば1週間が経っていた。
「いい経験をさせてもらった。ありがとう。」
自分の受け持ちである私のクラスで最後の挨拶をするアルバート様。
クラスメイトもどこか寂し気なようだ。
「アルバート先生の授業が分かりやすくて良かったのに…」
「せめて私達が卒業するまでいてくれないかしら」
「夫婦漫才がもう見れなくなるなんて残念だな」
おい誰だ最後言ったやつ。
それはアルバート様にも聞こえてた様でククッと笑いながら「これからもシア共々よろしくな?」と締めの挨拶をした。
帰りの馬車でどこかやり切った顔をしたアルバート様が外の風景を見ながら「シア」と声をかけてきた。
「俺さもし王族の生まれじゃなかったら教師の仕事も悪くはないなって思った。」
「まぁ!そうなのですね」
「あぁ…といっても実際教師向きなのはシアだと思ったけどね」
「え?私ですか?」
「うん、クラスメイトに分からないところを教えてた時があっただろ?その時のシアの姿見て教えるの上手いし分からないって言った人に寄り添ってるなって思ったんだ。」
授業の合間の休憩時間で私はたまにクラスメイトに質問を受けていたりする。それをアルバート様は見ていたのだろう。
「エドの家庭教師に推薦したいくらいだよ」
とアルバート様のお墨付きを頂いた。
「それも面白そう」
「冗談だよ…公務があるだろう」
「あら、公務をすごい勢いで終わらせて学院の臨時講師になった王太子殿下がそれを言います?」
冗談だと苦笑いしてるアルバート様にさらに冗談でそう投げかけた私。
互いに顔を見合わせて同時に噴き出した。
一緒に下校するのは最後だったが馬車の中は変わらず穏やかな空気が流れていた。




