隙間時間の戯れ
3人掛けのソファーがローテーブルを挟んで対面で置かれているのだが、アルバート様と2人で部屋で過ごす時はいつも隣同士で座っている。
しかもぴったりと私にくっついて座るので、最初のうちは本当に慣れなかったし、アルバート様に気付かれないように離れたりした。結局気付かれたけど。
今でも少しドキドキしているがひどい時は私を膝の上に乗せたりするもんだから、膝の上に座らされるよりぴったり隣で座られた方が心臓はまだ正常な動きをしている方だと思う。
これこそがアルバート様の計算だったと聞かされたときには、アルバート様には適わないな…と乾いた笑いしか出てこなかった。
そんなわけで今日ももれなく隣にぴったりくっついている。
しかも私が逃げないようにがっしりと肩に腕を回されて。
…今日は何やら密着度がすごいな。いつもは手を私の肩に軽くのせたりするだけなのに。
「…どうかなさいました?」
笑顔が引きつるのをどうにか抑えて微笑みながらアルバート様に聞く。
「いやぁ…ソフィアやリリアンヌがね、シアが俺と婚約してなければロイドと婚約結んでたと思うという話を聞いたら我慢ならなくてね?今日はロイドの仕事を少し増やしといたよ」
すごく素敵な笑みを浮かべながら鬼のような所業をあたかも世間話のような軽い感じで話すアルバート様を見て内心ひいいと悲鳴をあげた。おそらく影がお茶会の話を報告したのだろう。
…アルバート様、それは世に言う八つ当たりです…そしてロイド様…なんかごめんなさい。
心の中でロイド様に謝れば、私の頬にキスしながら「他の男のことを考えちゃだめじゃないか」と私を自分の方へ引き寄せる。
今日はロイド様にやきもちを焼いているからか妙にべったりくっついている。
「…そんなに心配なさらなくても私が好きなのはアルバート様ですよ?」
やきもちを焼いてくれるのは嬉しいけどアルバート様を不安にさせるのは不本意だから、恥ずかしがりながらも何とか自分の気持ちを伝える。
そう告げればアルバート様が顔を真っ赤にして口元を手で押さえた。
「シアが可愛すぎる…ねぇシア?今すぐ結婚しよう」
ちょいちょいちょい!!結婚は私が卒業してからでしょう!?
そう思っていたのを察してか「んじゃ今すぐ卒業して結婚しよう」と訳の分からないことを言い始めた。
子供か!!
「お夕食のご用意ができました」
フィナが遠慮がちに私達に声をかけた。
「それじゃあ行こうか」
アルバート様が私の手を取って食堂の方へ向かう。
「シアちゃん!今日はシアちゃんの好きなスイーツもあるのよ」
食堂へ着けば国王陛下と王妃様、エドワード様が既に席についていた。
王妃様はにこやかに私達に着席を促した。
「遅れてしまって申し訳ございません」
「いや、私達も今来たばかりだ。」
謝れば国王陛下がにこやかに答えてくれた。
今までは国王陛下や王妃様と一緒の食事というのも緊張して仕方なかったが最近はようやく慣れて談笑する余裕も出てきた。
あっ…こういったプライベートな時間の時はお義父様お義母様と呼ばなくてはならないんだった。
しかし王城の食事はなんと美味しいことか…我が家の食事も美味しかったがさすがは王族…。
しかしこんな立派な食事をできるのも王族としての責務を担っているからだよな…といつも気の引き締まる思いだ。
そんなことを頭の片隅で思いながら、しかし器用に料理のおいしさを堪能している。
「シアはいつも美味しそうに食べるよね」
アルバート様はにこやかにこちらを見ていた。
「そうだね、シアちゃんと一緒に食事すると料理も美味しく感じるね」
お義父様もにこにこしながらお酒を飲んでいる。
あっと思い出した様にアルバート様が私に声をかけた。
「そうだシア、明日から一緒に学院に行くよ?」
「えっ?アルバート様は既に卒業されてますよね?どういうことですか?」
「学院の視察も兼ねて明日から1週間臨時講師として勤務することになったんだよ」
「そ、そうなんですね?」
いかにも公務感を出しているが明らかに私的な部分がありそうな気がする。
現にお義父様は苦笑いしてお義母様は呆れたようにアルバート様を見ているから。
「アル…あなたはこの為に急ピッチで他の仕事を終わらせたと言うの?」
お義母様は綺麗な顔を歪め信じられないものを見るような目でアルバート様を見た。
アルバート様はそんなお義母様のリアクションを無視して「お昼は一緒に食べようね?」と釘を刺してくる。
「いや…臨時とはいえ講師と生徒が一緒にランチするのも問題があるんじゃあ…」
「講師と生徒の前に婚約者同士だから何も問題はないよ」
いやいやいや、あるだろう!!!
私が脳内で盛大なツッコミを入れてるのを見ていたエドワード様が「義姉上…お疲れ様です…」と小声で呟いていたのを聞き取った。
エドワード様が最近私を「義姉上」と呼んでくれている。
それが家族の一員になったみたいですごく嬉しい。
それだけじゃない。
お義父様、お義母様もそう呼ばせてくれるし、私のことを「シアちゃん」と呼んで可愛がってくれている。
アルバート様はこの通り私を大事にしてくれているし(少し過激なところもあるが)、アルバート様にツッコミを入れつつも幸せだなぁと感じていた。




