表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/85

若き王太子の手腕

セシル殿下が登壇し、メルを冷静な目で見る。


「メル…お前は兄王子セドリックの名を乱用し王城でも横暴な振る舞いをしていたという報告もあがっている。

また未来の国を担う子息を次々と誘惑し子息とその周りの人間の人生を破綻させ国に甚大な被害を及ぼした…その行為は断じて許しがたい。

お前は広場で公開処刑と議会で満場一致で決まった。」


「そ、そんな!!!そんなの私の『エンド』になかったわ!!!」

メルが悲鳴にも似た叫びをあげた。


「また訳の分からないことを申して周りを混乱に陥れるつもりか?…衛兵よ、彼女は病んでいる。刑が執行されるまで王城の牢獄へ移送せよ」


ぎゃーぎゃー言いながらメルは兵士に連れられて行った。


終わる時は呆気ないものだ…だがようやく終わった。



セシル殿下がこちらに向きなおして

「今更ですがアルバート殿下並びにシュレーゼン嬢を我が城に招きたい。」


その一言で私達も学院を抜け出しサザンローナ城へ向かった。







「まずはアルバート殿下とシュレーゼン嬢に我が国の為に尽力して頂き深い感謝を」

そう言いながらセシル殿下は深く頭を下げた。隣に控えていたセリーヌやルーク様、後ろに控えていたセドリック殿下も同様に頭を下げる。


「さて…兄上、この様な立ち位置で分かると思いますが父上が国王としての最後の仕事として兄上を廃嫡する処理を行った。

王太子の立場の私が言っても説得力に欠けると思い、証拠となる書類もこちらに持ってきている。」


「いえ、私は自分の愚かさを改めて再確認できました。なので王太子殿下のお言葉を信じます。」

セドリック殿下…もしもメルの愚行に陥ることにならなければこの様な扱いになることも実の弟にこの様な残酷な通達をさせることもなかっただろうに…。


私やアルバート殿下は痛々しい思いでその光景を見ていた。



「これから兄上には平民として騎士団に加入して頂きます。この話が終わったら直ちに騎士団の宿舎に荷を運ぶ様に…とは言え兄上の所持品は王家の財源の横領した部分に充てるのでほぼほぼ差し押さえされると思ってください。」


「かしこまりました、直ちにそちらの方へ移させていただきます…最後に兄として一言よろしいですか?」

「構わない。」

セドリック殿下の一言に怪訝な顔をするセシル殿下。

セリーヌやルーク様も怪訝な顔をしていて、私達は一体何を言い出すのだろう、と内心ひやひやしながら様子を見ている。



「セリーヌ…セシル…世話をかけた…すまなかった…」


セドリック殿下は申し訳なさそうに、しかし憑き物が落ちたような穏やかな表情でセリーヌやセシル殿下の頭を撫でて一礼して部屋から出ていった。


最後に見せた表情が本来のセドリック殿下…いや今やただのセドリックの姿なのだろう。



「…兄上…最後の最後にずるいじゃないですか…」

セシル殿下は頭を抱えながら涙を流した。


大人びているとは言え彼はまだ成人もしていない。

いくら優秀とは言え本来ならこれから学院に入学し勉学を勤しむ年齢でまだまだ周りに大人が必要な年齢だ。


国王であった父親は無能で隠居し頼りになった兄は平民となった今、彼は誰かに縋りたくても縋れなくなってしまった。

そして王太子という身分ではあるが実質国王の権限を持ってしまった。


彼の心の負担は尋常ではないものだろうと考えると可哀想になってくる。

私より年下で私の親友の弟君でもあるのだから。



「セシル…!」

そんな彼をセリーヌは抱きしめた。

彼女もまた大事な兄をこの様な形で失った悲しみは大きい。


セリーヌの目は真っ赤に涙で顔は濡れていた。


「セシル…今までこちらで1人で頑張ってくれてありがとう。あなたが頑張ってくれたおかげでようやくこの国も正常な姿に戻ったわ。

あなたが弟で私は誇らしく思います。」


「姉上……」


セリーヌは泣き笑いを浮かべながら、しかししっかりと弟の目を見て言葉を発しそれから再び抱きしめた。



「ごめんなさい…本当は王太子として泣いてはいけないのですが…この時だけは許していただけますか…?」


セリーヌの腕の中で小さな声が聞こえた。

「いいわよ」とセリーヌが優しく声をかけるとセシル殿下のすすり泣く声が聞こえてきた。



こんな光景を見るとメルの勝手な思いで壊した物の大きさが分かった気がする。



メルにとっては勝手な願望、しかし彼らにとっては大事な人達。

願っても戻りはしない家族の関係や人の命。


メルは…いやメルだけじゃない、ヒドインと呼ばれていた小説の彼女達はここまでのことを望んでいたのだろうか?

みんなまとめてハッピーエンドなんて現実に起こる訳もなく、ヒロインであれば自分の身に何も悪いことなんて起こらないと心の底から思っているのだろうか?ここまでの状況を作り上げて何も自分に返ってこないと本当に思っているのだろうか?



色々聞きたいことはあるけれど壊れてしまった物やなくなってしまった物が元に戻らない以上、聞くことは無意味に感じられた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ