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今だから言えること

メイドの案内で居間の方に通された。


「今アイリーンお嬢様が参ります。少々お待ちください」とお茶やらお菓子やらこちらの屋敷のメイド達が準備してくれた。



「ルシア様!」

それから程なくして部屋に入ってきたアイリーン様がぱあっと花が咲いたような笑みを浮かべている。

お腹は以前よりも大きくなっていて動きづらそうにゆっくりとした動作で私の正面にあるソファに腰をかけた。


「ルシア様…お久しぶりですね。我が家にいらっしゃるという話は伺いましたが、まさか私のところにも来てくださるとは思ってなくて…とても嬉しかったです。」

穏やかに微笑む彼女はやはり昔とは別人のようで、でも今の彼女の方が好感もてるなぁと内心思いながらアイリーン様を見つめた。


「アイリーン様もお体の調子はいかがですか?」

「最近は調子が良いんです。予定日は来月なのでちょっと緊張してますけど…」

「そうなんですね…そう考えると月日の流れもあっという間に感じますね」

「えぇ、そうですよね……ねぇルシア様?少しだけ私の昔の話を聞いて頂けますか?」


そう言いながらアイリーン様は紅茶の入ったカップを持った。


「私がまだ学院に通っていた頃は皆にちやほやされて有頂天でした。もちろん今ではそれは愚かなことだと分かりますが…あの頃は私も浅はかだったのです。」

遠い目をした彼女は更に話を続けた。


「浅はかな人間であることは間違いなくて…言い訳みたいに聞こえるかもしれませんが、今思えば寂しかったのもあったのかもしれません…」

「寂しかった…?」

「えぇ…今だから言えることですが…私昔好きな人がいたんです。アルバート殿下の元婚約者が現婚約者の方にするお話ではないのかもしれませんが」

ルシア様にはつい色々お話してしまうわ…とアイリーン様は困ったように微笑んだ。


「小さな頃から一緒にいた幼馴染がおりました。彼は男爵家の子息で私はいつからか彼に想いを寄せるようになりました…ですが身分差でどうにもならなくて…私は学院に入ってから色んな殿方と接して彼を忘れようとしてました…結局忘れることもできなくて」

「そうだったんですね…」

「私、色んな殿方と仲良くさせて頂いてましたけど体をゆるしたのはただ1人だけ…ですがそれを言ってしまえば彼に迷惑がかかると思い、お父様やお母様には誰がお腹の子の父親なのか分からないと言っていました。」

「彼はアイリーン様を妊娠させてその後について何かお考えだったのですか?」

「はじめは駆け落ちをしようと彼と相談していたのです。ですが既成事実を作れば私の両親も私を諦め駆け落ちしやすいのでは?と私達は浅はかな考えを持っていました…ロゼリア様の問題が解決するまでの間、私も彼を交えてこれまでのこととこれからのことを両親と何度も話し合いました。

私は家を追い出され平民になる覚悟でお話しましたが、私と彼のことを認めて頂けました…。

ただ醜聞であることには変わりないので、私達はここの別宅で静かに暮らしていきますが、彼をマーキュリー家の執事として雇ってくれたり私の子を私の両親…マーキュリー侯爵夫妻の養子として受け入れてくれたりと、結局のところ両親に助けて頂きました。両親にはとても感謝しております…。」

「そうだったのですね…!アイリーン様が抱えていた悩みが解消できたようで良かったです。」


本当に良かった。

今まで貴族として暮らしていたアイリーン様が平民になったところで苦労するのは目に見えてる。

ましてやこれから生まれてくる子もいるわけだし。


恐らくそんなアイリーン様や生まれてくる孫のことが心配になった侯爵夫妻が寛大な措置をしてくれたのだと思う。


「私達が新たな人生を歩めるようになったのは両親とアルバート殿下、ルシア様のおかげですわ。本当に感謝しています。ありがとうございます。

我が領地の特産品であるお香がアルバート殿下とルシア様のお役に立てることを願っておりますわ。」



それから他愛ない話をしてアイリーン様と別れた後マーキュリー家の本宅へ戻った。



マーキュリー家の門の外には馬車が2、3台停められており、頂いたお香は既に運び込まれた後のようだった。



「お、シア、アイリーン嬢とのお話は終わったのかい?」

アルバート殿下もちょうど外に出てきたところのようだった。

玄関口にはマーキュリー夫妻の姿も見えた。見送りをしてくれるのだろう。



「では世話になったな、マーキュリー夫妻もお元気で」

「ありがとうございます。殿下もシュレーゼン嬢もどうかお元気で」


マーキュリー夫妻に見送られながら私達はマーキュリー領を後にした。



「さてと…これでサザンローナの問題を解決できるといいな」

アルバート殿下の言葉に私は頷いた。


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