真実を語る覚悟
「サーシャ様、サーシャ様に会って頂きたい方がいるのです」
「私に…ですか…?」
「えぇ…おそらくもうそろそろこちらに着く頃と思います。」
そう話した直後、こちらに向かってくる靴の音が聞こえた。
「お待ちしておりました
アルバート殿下」
美しい金色の髪の毛を靡かせながら穏やかな笑みを浮かべているアルバート殿下が私の元へやって来た。
「シアからお茶会を誘われるなんて珍しいと思ったら…なるほど、彼女が最近シアと仲良くしているご令嬢か?」
「え、ご存じだったのですか!?」
「だって結構な頻度でこちらのご令嬢とお茶をしているんだろう?最近付き合いが悪くなったとセリーヌ殿下がむくれていたぞ?まぁそれは私も同意見なのだが?」
茶目っ気たっぷりにしかし余所行きの体面を保ちつつアルバート殿下が答える。
…思い当たることがあるな。
まぁ最近はアルバート殿下の言う様にサーシャ様とお会いする回数は格段に多かったと思う。とはいえセリーヌとの付き合いを疎かにしている程ではないからアルバート殿下の前者の話は多少盛られてるのは分かったから、おそらく後者の話がガチの話なのだろう。
そんなわけでサーシャ様と今後友人として付き合っていく為にアルバート殿下に早かれ遅かれ話そうと思っていたのだ。
前世の話を…。
アルバート殿下に隣に座ってもらって私の話を聞いてもらった。
サーシャ様は最初、私が前世の話をするとは思ってなくて、え!?今その話をするの?と驚きの表情を浮かべていたけど私の考えを尊重しようとしてくれたのか静かに私の話を聞いてくれた。
私にはここの世界とは違う世界で生きた前世前前世の記憶があること、サーシャ様にも前世の記憶があって私の前前世と同じ世界で生きていたということ。
その世界にはここの世界を題材にした物語のようなものがあって、その物語を知ってるサーシャ様にそのお話を聞いていたこと。
そのサーシャ様のお話の中にもしかしたらこのサザンローナの問題の解決の糸口があるかもしれない、と考えていること…本当にたくさんの事を話した。
その間アルバート殿下は驚きはしたものの静かに私の話に耳を傾けてくれた。
「…まさかルシア様に2つの人生の記憶があるとは思いませんでした。」
私が全てを話し終えるとサーシャ様が呆然とした様子で呟いた。
サーシャ様には私の前世の世界の記憶については話していない。だからサーシャ様の中で私は自分と同じように『日本』という国で生まれ育った記憶しかないと思っていたのだろう。
「前世での話は特に話題にするようなことでありませんでしたから言ってませんでしたね」
「だが前世ではかなりの功績を残していたのだろう?シアが魔法をはじめとした色々な知識を持っていることに納得した。」
アルバート殿下が感心した様に私の顔を見る。
「そうですね…自分で言うのもなんですけど一応光の大賢者として魔王討伐に行く英雄の旅に同行してました。」
「…スケールの大きな話だな…」
「そ、そうですね…」
「そういう経験もあったので魔力覚醒時、魔法はすんなり使いこなせて良かったです。」
「そこ!!?そういう経験あって良かったと思えるとこそこなのか!?」
アルバート殿下がぎょっとしながら私につっこんだ。
「し、しかし今日は衝撃的な真実を知ってしまったな。」
「他の人に言えば頭おかしいと思われかねない事案なので他言無用でお願いします。」
「あぁもちろんだ」
「というか私の話を怪しんだりしないのですね?」
「嘘をついてる様には見えないからな、何よりシアの話なら信頼できる」
「そ、そうですか…」
途端に恥ずかしくなった私は視線を違う方に向ける。
アルバート殿下から熱の籠った目で見つめられるしサーシャ様から生暖かい目で見つめられるしで居心地悪くなってきた…と居心地の悪さを感じてる場合じゃない!
「そこでですね、殿下、サーシャ様のお話をお聞きして私2週間ほど学院を休もうかと思いまして。」
「ほう」
私はアルバート殿下に向き直って先程の和気あいあいとした雰囲気から一変真面目な表情でアルバート殿下に今後の予定を話し出した。
サーシャ様にもそこから先はまだ何も話していないから一体今度は何を言い出すのかドキドキした様子で私の方を見ている。
そして私の一言で2人はまたしても驚くことになる。
「しばらくグランバニアに帰ろうと思います。」




