サポートキャラ
食堂でのセドリック殿下の反応を見て、この人は元々優秀ではあるけども心に隙があったと判断した私は食堂でのひと悶着があった後アルバート殿下やセリーヌ、ルーク様と放課後集まって報告会を開こうと思い4人に約束を取り付けた。
あの後僅かな浄化魔法のために魅了が解けきれなかったセドリック殿下が慌てたようにメルやお供の友人達を引き連れて私達の前から立ち去った。
魅了のかかったセドリックからしてみたら正気に戻ることが自我を失う様な気味の悪さを感じたのだろう…。それと魅了魔法をかけた本人であるメルの方を見て浄化魔法を発動したことでどんな反応をするのか確認すれば変わった様子は見られなく、微々たるものだが浄化魔法によって魅了魔法が解けかかっていることに全く気付いてないようだった。
その事も3人に報告しようと思っていたが、セリーヌとルーク様が急用ができたとのことで放課後の報告会を時間を少しずらすことにした。
2人いわく急用といっても時間はさほどかからないらしいから少し遅れてなら時間を取れると。
そんなわけで私はみんなとの待ち合わせの時間まで少し余裕があったから校内を散策することにした。
アルバート殿下も一緒に散策したがっていたが、ロイド様やクリス様と情報を共有する為手紙を書かねば…と寮に戻って行った。
サザンローナの学院は次世代の王国の統治を担う者があんな感じでおかしくなってはいるが、他の生徒達は至って普通の感覚の持ち主のようで、口には出さないがセドリック殿下やメル、その取り巻き達には良い印象は持っていないようだ。
それどころかセドリック殿下には既に見切りをつけてセリーヌやその弟君がそんな荒れた国を立て直せる唯一の希望と思ってる生徒が大部分だと肌で感じていた。
私は今日の学院での出来事や生徒達の様子を思い出しながら歩いていると、いつの間にかベンチが何脚かある池のほとりに来ていた。
どうやらここは学院の憩いの場の1つの様だが、他のところも見て回ろうとした私は今来た道を引き返そうとした。
「あ、あの!!!」
どうやら先客がいたようで、先客であろう女子生徒の声が響いた。
私はそもそも先客がいるなんて気付かなかったから内心驚きながら振り返れば、手前の方のベンチに座っている女子生徒が目に飛び込んだ。…ここに人がいたなんて…灯台下暗しだな…。
「い、いきなりお声をおかけして申し訳ございません!私はサーシャ・ウォルフと申します。貴女様はグランバニア王国の王太子アルバート殿下の婚約者様のルシア様ですよね…?」
サーシャ・ウォルフと名乗るこの女子生徒はおどおどしながらもはっきりとした口調で質問してきた。
茶色い髪の毛をおさげして眼鏡をかけた一見大人しそうな少女だった。
前にグランバニアの学院で合同演習を共にした時のナーシャ先輩を思い出した…あっサーシャとナーシャって名前も似てるな…そんなことを呑気に考えていた。
「…えぇ…私はルシア・シュレーゼンと申します。どうぞよろしくおねがいします」
王太子妃教育で培った言葉使いや作法を活用しカーテシーで挨拶をした。
「あの…驚かせてしまって申し訳ございません…つかぬ事をお聞きしたかったのです。」
その直後の発言で私はここ最近で一番の驚きを感じることとなる。
「貴女様は…
日本という国をご存じですか?」
……え?
えええええええ!!?
一瞬ポカンとした私に慌てた様子でサーシャが「ごめんなさい!!変な質問をしてしまって!!今のは聞かなかったことにしてください!!!」と手をブンブン振った。
「…サーシャ様も日本という国をご存じなのですか?」
「『も』ということはやはりルシア様も…?」
「そもそも私が何故転生者であると思ったのですか?」
「話は長くなりますが…、この国、いえ、この世界は日本で生きていた頃に遊んでいた乙女ゲームの世界ととても似ていたのです。
グランバニア王国はその乙女ゲームの第一作の舞台でした。ここサザンローナは第二作の舞台です。
あっ乙女ゲームって分かります?」
「えぇ、詳しい方ではないけれどざっくりとは知ってるわ。恋愛するゲームでしょ?」
「そうです!」
ふむ…やはりここはRPGの世界ではなかったか…。
前世前々世の記憶を持つルシア・シュレーゼンとして生まれ変わった時、RPGの世界ではなさそうだよなぁ…どちらかと言えば遊んだことはなかったけど乙女ゲームっぽさがあるよなぁとは思っていたけどまさか本当に乙女ゲームの世界だったとは…。
「第二作では攻略対象…えっと恋愛する対象ですね、その人達がセドリック第一王子やセドリック第一王子の側近で騎士団長の子息や次期宰相と言われている侯爵家の子息ですね。……あの食堂でひと悶着あった時いたメンバーです。」
最後の方言いにくそうにしていたが、改めて説明を再開した。
「アルバート殿下は第一作目のメインヒーローで、あまりの人気で第二作目も隠し攻略対象として登場するんですよ。」
「まぁ…!そうだったの」
まぁあのかっこよさだしね。婚約者のひいき目抜きにして正統派ヒーローだろう、彼は。
1人で内心頷いているとサーシャが再び言いにくそうにしている。
「サーシャ様?私のことは気になさらずちゃんと教えてほしいわ?私は大丈夫だから。これでも色々経験してきたからね?」
にっこり笑ってどうにか続きを話しやすい空気を作ることに専念した。
「お気遣いありがとうございます…えっと、アルバート殿下が隠し攻略対象だと申しましたよね?乙女ゲームでも確かに彼は留学生として登場しました。が二作目ではあくまで婚約者がいない設定で留学して来られたので…ルシア様は…その…乙女ゲームには登場なさってなかったので…」
おそらく乙女ゲーム内においてルシア・シュレーゼンという登場人物はモブであるか、はたまた存在しなかったのだろう。
そんなイレギュラーな存在のルシアが堂々とアルバート殿下の婚約者としてサザンローナに留学してきたことから、同じ転生者であるサーシャが私を転生者だと思った理由なのだろう。
「なるほど…だから私が転生者なのではないかって思ったってことね?」
「はい、そうです。」
「乙女ゲームってことはヒロインもいるのでしょう?大方第二作はメルっていう令嬢がヒロインってとこかしら?」
「はい…っともうルシア様のこともお話したしここまできたら隠し事抜きでお話しますとメルがヒロインで、第一王子とその取り巻きが攻略対象、そしてアルバート殿下が隠し攻略対象です。ちなみにセリーヌ殿下がライバルキャラで私はサポートキャラですね。」
「ライバルキャラはなんとなくわかるけど…サポートキャラ?」
「はい、メルの恋愛のお助けキャラです。私の助言を聞いて攻略対象との会話や行動の選択肢のヒントにして正しい選択肢を選び好感度を上げる…というような。」
ふむ…ということは本来のゲームではサーシャはメルと友人関係なのだろう。
だがここでもサーシャが転生者ということで物語とは違った展開になっているようだ。あと普通に聞き流していたけれどセリーヌがまさかのライバルキャラのポジで驚いた。
「あの…まだまだ色々聞きたいことがあるのだけど、私これから用事があるの。サーシャ様さえ良ければ後日お会いする時間を頂けるかしら?」
「もちろんです!こちらこそお忙しい中お引き止めして申し訳ございませんでした。ルシア様とお話できて良かったですし、寧ろルシア様が良ければ是非こちらとしてもお話したいのでよろしくおねがいします!」
サーシャと約束を取り付けて私はセリーヌ達と待ち合わせしている場所へ向かった。




