これからの計画
「そんなことがあったのね…」
セリーヌの身にあったことに関して私は何も言えなくなった。
「正直なとこね、こちらの学院に入学した当初は本当に失意のどん底だったの…それを救ってくれたのが、ルシア、あなただった…」
「私達偶然隣同士の席だったものね…こんな緊迫した状況の時に言うべきことではないかもしれないけど、懐かしいなぁ」
私はしみじみと当時のことを思い出していた。
「俺も驚いたよ、まさかシアが友人として付き合っている生徒のうちの1人がセリーヌ殿下だったなんてな…」
これは確かにアルバート殿下も想定の範囲外だったのだろう。
「ところで私はセーラって呼んだままの方が良いよね?セーラがサザンローナの王女様ってことを公にするまでは」
「そうね…とは言え、あなた方の今後の計画にもよるでしょうけど近々サザンローナに留学に来てもらうでしょ?私の正体はその時に公にすると思うから『セーラ』って名乗るのも短い期間でしょうけども」
「わかった。んじゃそれまではセーラとして引き続きよろしくね?
そういえばセーラは婚約者の方とグランバニアに来たのよね?私は婚約者の方とお会いしたことある?」
そう聞けば何故かにんまりするセーラ。
さっきのネタばらしみたいな表情をしている。
「ふふっ…会った事どころか同じクラスでルシアも話したことあるわよ?」
「入りなさい」とこの部屋と隣接している部屋につづくドアに向かってセーラが呼びかけた。
あぁ…一応この問題の関係者であるから婚約者の方も連れてきたのね、と呑気に扉の方を向いていた。
ガチャっと入ってきた男性を見た瞬間、私は思わず大きな声を出すとこだった。
「ルーク様!!?」
見覚えのあるどころかバリバリクラスメイトであるルーク様が部屋に入ってきた。
だが私の知ってるルーク様とは少し雰囲気が違った。
いつも教室で会ってる時はくすんだ金髪はボサボサで、どこかおどおどしていてお世辞にも頼りがいのある青年には見えなかった。
しかし今のルーク様は髪を後ろに撫でつけ、堂々とした立ち姿はまさに男前でとても同一人物とは思えない。
ほど良く筋肉も付いていて高級感溢れるスーツを着こなしている。
私はポカンとしながら
「えっ?ルーク様ってちゃんと筋肉あったのね」
なんて訳の分からない感想を述べてしまった位混乱していた。
いやセーラが実は王女様だったという事実よりは混乱は抑えられたけど。
アルバート殿下は隣で噴き出すし、当のルーク様も「第一声がそれですか」と苦笑いしていた。なんかごめん。
「ルークにはドゥオンヌ家の遠縁の子爵家の養子ということでこちらにお世話になっているけど、彼も一応サザンローナでは公爵家の出なのよ?」
私のリアクションを見てクスクス笑っていたセーラはルーク様の補足説明をしてくれた。
「…とは言っても没落しそうな貴族ですけどね…」
ルーク様は少し暗い顔で俯いていた。
「さっき兄の婚約者の家に強襲したといった騎士団長の子息いたでしょう?彼はルークのお兄様にあたるの。つまりルークも騎士団長の子息ってことになるんだけど、お兄様はこの通り問題を起こしてしまったから…」
セーラもつらそうな表情を浮かべながらルークのことについて教えてくれた。
「俺はセリーヌ殿下との婚約を諦めたくない…結婚したいと心から思っているんだ。だがサザンローナの第一王女と没落貴族が結婚できるわけがない…俺はどうしても今回の問題を解決して自分の家を没落から救いたいんだ…!もちろん領民のことも救いたいと思っている」
俯いていたルークが顔をあげて意思の強い目でそう語ってくれた。
「…それならなおさら今後のことについてじっくり話し合っていかないとな?」
アルバート殿下の言葉で私達の話し合いは本格化してきた。
時に空気と化していたロイド様やクリス様からの意見も交えてじっくりと話し合った。
「アルバート殿下はもうじき最終学年に上がります。なので1年間びっちり留学という訳にはいきません」
クリス様が私達全員を見渡しながら話し出した。
「なので期限を設けた方がいいと思います。僕は長くても半年と思っております。」
クリス様のその言葉にアルバート殿下も頷いた。
「そうだな、それ以上は自国を離れるわけにはいかない。シアにも同じ期限を定めたい。」
「分かりました。もとよりこちらが頼んだこと。もし万が一問題が解決出来なかったとしてもそちらが提示した期限は守ります。」
セーラも頷きながら了承した。
「あとあまり大人数ではいけないからな、ロイドとクリスはこちらに残っててもらう。俺の代わりに頼んだぞ?」
「了解です」
「かしこまりました」
ということは私は2年生の頭から半年間サザンローナに留学するということね。
「…ごめんね、ルシア。うちの事情に巻き込んじゃって…」
「セーラ何言ってんのよ、セーラにはいつも助けてもらってるんだから良いのよ。それよりどこまでお役に立てるかの方が不安だけどね」
めっちゃ聖女としての力を頼りにされてるけど、果たしてみんなの期待に副えることができるのか…。
「シアはシアらしく頑張ると良い。」
アルバート殿下はそんな私の手をにぎりふんわりと笑いかけてくれた。
それをロイド様とクリス様は生暖かい目で見ていて、セーラはニマニマしながら見ていて、ルーク様は「俺達よりバカップルだよな?この2人…」と呆れた目で見ていたことは私の中で黒歴史だ。




