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婚約式

セーラとソフィアに婚約を報告してからおよそ1か月後の今日。

私は王宮のホールへつづく控室で少しそわそわしながら待機していた。


今日は婚約式。グランバニア王国の王太子殿下の婚約者となった令嬢を貴族達にお披露目する場でもある。



淡い黄色いドレスに身を包み、胸元にはサファイアとエメラルドとダイアモンドであしらったネックレス、髪には同じ宝石であしらった髪飾りが輝いていた。


そのどれもがアルバート殿下から送られた品々であった。


アンやフィナ、リリアンヌを中心にいつも他の持ち場についているメイドも助っ人に駆け付け、皆忙しく朝早くから私を飾り立ててくれていた。


その完成形に大いに満足した一同はホクホク顔で部屋の隅にビシッと並んでいて、本日もう1人の主役を待ち望んでいるようだった。




コンコン


ドアのノックが響きアルバート殿下が入室した。


「シア、準備が整ったって聞いたけど……」

アルバート殿下は私の姿を目で捉えた瞬間固まった。


「はい、…こんな素敵なドレスや宝石ありがとうございます」


こんな高価な物を頂いて身に着けている者としては内心とてもヒヤヒヤしている。

準備を頑張ってくれたメイド達の前では口が裂けても言えないが身に着けるのも恐怖なので出来れば早く脱ぎたいし取り外したい。



アルバート殿下は目を見開いて固まったままだった。

「…あの視界の暴力になったなら脱ぎましょうか?」


さすがに着せられてる感が否めなかったのは私にも分かるから、今から急遽衣装チェンジすることになってもまぁこの有能なメイド達の手にかかればギリギリ時間も間に合うだろう。


すると我に返ったアルバート殿下が焦ったように声をあげる。

「だめだ!!!…すまない、あまりに綺麗で言葉を失っていた。こんな美しい君と今日この日を迎えられたことをとても嬉しく思う。」


社交辞令だと思っていた言葉は本心の様で、アルバート殿下は頬を赤く染めながらしかし嬉しそうな笑顔を浮かべている。


「ありがとうございます…アルバート殿下も素敵です」

そんなアルバート殿下を見て思わず照れてしまったが、私もアルバート殿下に何か声をかけたいと思い言葉を発した。


いやいやむしろ綺麗なのはあなたですよ、アルバート殿下。


金色に輝く髪は後ろに流され濃いめの茶色いタキシードを着こなし黄色いネクタイをしめている。

すらっとしたしかし筋肉もしっかり付いた体も爽やかで甘いルックスもより一層際立っていた。

いつもかっこいいけど今日は何割か増しでかっこいいし色っぽい。


「このタキシードは前の君の髪色なんだ。そしてネクタイは今の君の髪色に合わせたんだ。前の君も今の君も同じくらい愛している。」


甘い笑顔でそう囁かれれば、もう既に戦闘不能と化す。


「…殿下もうその辺で…お嬢様が…」

気を使ってアンが殿下に声をかけてくれた。いやもう遅いかもしれない。もう恥ずかしさやら照れやらで今すぐ家に帰って部屋の鍵を閉めてベッドへダイブしたい。



絶対真っ赤になってるであろう頬を両手でおさえてどうにか平常心を取り戻そうとする。

ようやく頬の熱もおさまったと思った頃、私達の入場の時間となった為アルバート殿下のエスコートでホールへ向かった。



国王陛下と王妃殿下の次にアルバート殿下と私が入場し、初め国王陛下の挨拶と共に私達を紹介した。


貴族達は順番に私達に挨拶しに来てようやくここまでの一通りの流れが終えた時には2時間程経過していた。


その後はダンスタイムとなり陛下と王妃様が踊った後私達も踊った。

アルバート殿下は1曲だけでは許してくれなくて2曲程踊り、今ようやく飲み物と食べ物にありつけた。


「シア、大丈夫かい?」

私に飲み物を持ってきてくれたアルバート殿下が心配そうに私の顔を覗き込む。

心配するならダンスを1回にしとけ!とはさすがに言えなかったが。


「えぇ…大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」


アルバート殿下の元にロイド様とクリス様がやってきた。

おそらく今度はアルバート殿下が色々貴族達と交流してくるのだろう。


「私は大丈夫なのでいってらっしゃいませ」

心配かけないように笑顔で言ったのにしばらくここから動かないアルバート殿下。


いやどこか具合悪いとか怪我してるとかじゃなく本当少し疲れただけだからそこまで心配することもないだろうに。


ようやく私の元から離れたアルバート殿下に私はホッとため息をついた。



それから私は私で自分の両親と話したり、ご婦人方と当たり障りない会話を楽しんでいた。


「シア、とても綺麗よ。幸せになってね」

お母様はうっすらと涙ぐみながら微笑んでいた。

「ありがとうございます、お父様、お母様、これからは王族の一員として頑張りますね」

両親には本当に感謝している。

こんな魔力無しと呼ばれていた娘を見捨てず、深い愛情を持って育ててくれたことに感謝してもしきれない。

「いつでもお前の味方だからな」

お父様の笑顔に私は励まされた。




自分の身内には感じなかったけど、他の人との交流でそろそろ作り笑顔も疲れてきたなぁと感じてきた。

さすがにそこを周りに気付かせないのは日頃から習ってる王妃教育の賜物だ。



そこへアルバート殿下がやってきてくれて良い感じに私を撤収させてくれた。




こうして問題なく婚約式も無事に終了した。

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