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婚約式に向けて

それから王妃様と楽しくお茶をした。

王妃様は不思議な方でいつの間にか私も緊張せずお話できていた。


「シアちゃん、公式の場では王妃様でも良いけど『お義母様』と呼んでくれたらもっと嬉しいわ」

王妃様…お義母様はふんわりと微笑みながら、しかしこれだけは譲らんぞ、という意思の強さを瞳に込めながら私にお願いした。


「わかりました…お義母様…」

まだ言い慣れてない私を見て満足そうに微笑む王妃様。


「ふふっリチャード様が絶対羨ましがるわ。彼も自分のことを『お義父様』と呼ばせたがっていたから。次陛下とお会いしたら是非呼んであげて?」

『お義母様』と呼ぶのもかなり苦戦していた私に更に難題をふっかけてくるお義母様。

そういえばアルバート殿下もそんな強引さがあったな…とふと遠い目で思い出してしまった私は決して悪くない。



「母上、そろそろシアを返してもらいますよ?」


(心の中で)噂をすればアルバート殿下が現れた。


「はいはい…シアちゃん、アルのことよろしくお願いしますね?」

「は、はい…!」

私の返事に再び満足そうに微笑むお義母様。


私とアルバート殿下は退室を許可され、アルバート殿下のエスコートで私の部屋の方を目指す。



部屋に着きリリアンヌが私とアルバート殿下のお茶とお菓子の準備に取り掛かった。



「シア、母上とのお茶会を問題なく終えられたみたいで良かったよ」

アルバート殿下が安心したように笑った。


「ふふっお義母様とお話してお義母様とアルバート殿下はやっぱり親子なんだなぁと改めて感じました。」

「えっ!?どんな話をしてたの?」

「秘密です」

口元に人差し指を当てて話す意思が無いことをアピールしたけど「…まぁシアが楽しかったなら良いや」とどこか不満げにでも嬉しそうにしているアルバート殿下。


「そうだ、婚約式なんだけど来月に開催することになったから」

「来月…ですか…?」

準備は色々大丈夫なのだろうか。


「その辺りは心配しないで、その時に着るシアのドレスも送らせてもらうよ」

顔に出ていたらしい疑問に答えてくれた。


「再来月になると今度は卒業式とかで忙しくなるからね、ちょっと早めに開こうと思ってさ」

「そうか…卒業式なんですね…もうそんな時期」

「あぁ…シアは入学して1年になるけどどうだった?」

「そうですね、少なくとも1年前はアルバート殿下と婚約するとは夢にも思ってなかったですよね?」

「学院生活について聞いていたんだけど…まぁ良いか。俺も次からは最高学年か…」

「アルバート殿下ともう1年学院にご一緒できて嬉しいです」

思ったことを言えば私の前で顔を赤くするアルバート殿下。


「シアがかわいい」

「なんで!!?」


そんな私達のやり取りをアンやリリアンヌ、フィナが生暖かく見守っていた。




次の日の朝、私は前の様にアルバート殿下と共に学院に向かう。

いつもと違うのは…


「……近いです、殿下」

隣にぴったりとアルバート殿下が座っていること。今までは正面に座っていたのに…。


「晴れて婚約者となったんだからね」

満面の笑みで答えるアルバート殿下。


…これは聞きようによっては今まで我慢して正面に座っていたと捉えかねない。

そう言えば「シアにしては珍しく勘が鋭いね?」と褒めてるんだか貶されてるんだか分からない返答が返ってきた。



アルバート殿下のエスコートで教室に到着した時「お昼に迎えに来るから、一緒に昼食を食べよう」と半ば強制的に約束事を取り付けて颯爽と去って行った。



乾いた笑いを浮かべていたが、気を取り直しある方向へ足を運んだ。……セーラの席だ。



「セーラ、おはよう」

「おはようルシア。…ふふっどうやら仲直りしたようね?」

「あぁ…うん、色々ありがとう」

仲直りというワードを聞いて少し気恥しくなったが、セーラにはちゃんとお礼を言わねばと思っていた。


辛い時彼女が助けてくれたから今がある。


あと彼女に伝えることがある。


ちょうどソフィアも教室に到着した。



「おはようソフィア、…2人ともちょっと良い?」

「おはようございます!大丈夫ですよ」


そう言って私はセーラとソフィアを人もまばらな早朝のカフェテリアに連れてきた。



「わああ!!おめでとうございます!」

「とうとう婚約するのね!おめでとう!」

彼女達に伝えたのはアルバート殿下との婚約の話だった。

セーラやソフィアには直接伝えたかったし、王族の婚約話だから話しても大丈夫かアルバート殿下にも許可を取って2人に伝えた。

リリアンヌは昨日は侍女修行で王宮にいたしアルバート殿下と婚約の打ち合わせの際にもお茶の準備等で居合わせていたから既に知っている。



リリアンヌもだがこの2人もそこまでの驚きではないようだ。


「いや、あなた達が想い合ってるのは周知の事実だから」

とセーラはとんでもない爆弾を放り込んできた。


「え」

「そうですよね?ルシア様がとても恥ずかしがり屋なので皆さんそっとしておかれましたね。それにアルバート殿下直々に教室に来られ頼まれていきましたし」

「え」

「『シアは恥ずかしがり屋だから私達の仲がうまくいくまでどうかそっとしておいてくれ』ってクラスのみんなに頼んでいって、それが学院中に広まったみたいよ?学生はみな『アルバート殿下の恋を静かに応援しよう』みたいな空気ができてたわね」



…何それめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど…。というかここでも既に外堀埋められてたのか…


「うん、だからどの道ルシアに逃げ道はなかったわよ?アルバート殿下も爽やかなお顔をしてるのにとても恐ろしいわね。」

「私の旦那様になる人はアルバート殿下みたいな人じゃないと良いわー」って満面の笑みでとどめの一言を発したセーラ。


これで謎が解けた。

大聖女になりたての頃、もしやアルバート殿下と私が結ばれるのでは!?という噂はわっと起こったがすぐにそんな噂も聞こえなくなった。

噂がすぐに消えたことに私は不思議に思っていたが、そこまで深くは考えなかった…まさかそこにアルバート殿下が関わっていたとは!!!

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