自分の新たな娘(王妃視点)
お茶を飲みながら向かいに座るご令嬢ーーシアちゃんににっこり微笑みながら私は彼女のことを考えておりました。
あれはシアちゃんが王宮に住み始める前の頃だったわ。
アルが実は彼女を自分の婚約者と据え置きたいと思っていて聖女教育及び王妃教育をシアちゃんにさせたいと言ったその日、私はアルの部屋へ行きました。
「ルシアさんは侍女1人だけしか連れて来ないのでしょう?それならば何かと不便でしょうから私の方からメイド1名をお連れしましょうか?リリアンヌさんもルシアさん付きになるのなら一先ず1名で足りるでしょう?
ただ私が人員を割いたと分かればルシアさんも委縮するでしょうから、アルの采配としておきなさい。」
そう言うと少しの警戒心を示したアル。…私がこの婚約を反対したり邪魔したりすると思ったのかしら?
「陛下にルシアさんの王宮入りを進言した時のあなたの覚悟は聞かせていただきました。それに関しては私も陛下同様応援しますわ?
ですが私はルシアさんがどんな女性なのか詳しくは知りませんの。ですからどんな方なのか興味があってね…?私の未来の娘になるかもしれない子ですもの。彼女のことを知りたいわ?」
にこやかに言えばアルはため息一つついて「かしこまりました」と返事をしたの。
先程アルに言った事は本心でシアちゃんは社交の場にほとんど姿を見せたことがなかった為、私は彼女のことを詳しくは知らなかったの。ただ風の噂でお転婆なご令嬢だったという話は聞こえてきたけど…。
そういえば今でこそ『シアちゃん』と私も陛下リチャードも呼んでいるのだけど、その時はまだ『ルシアさん』と呼んでいたわね。
陛下と言えばシアちゃんがハンバーガーなるものを開発なさったと陛下から伺った時に初めて興味を持ったのよね。
あの食べ物は陛下とご一緒にご馳走なったけど、とても美味しかった。食べ方も斬新で最初は上手く食べれなかったけどまた機会があれば是非食べてみたいと思いました。
…という事位しか把握してない子だったから私は信頼できるメイドの1人、フィナをシアちゃん付きにしたの。
彼女経由でどんな子か知る為もあったけど、慣れない王宮での暮らしを少しでも早く慣れるようにと、私も嫁入りした時はそれなりに苦労をしたからその苦労が少しでも和らげられれば良いなと、願いを込めて彼女を宛がった。
シアちゃんが無事に王宮への引っ越しを済ませ、王宮での生活が始まった。
城内でシアちゃんと会うことはなかったけど、色々とシアちゃんに関する話は聞こえてきました。
エドはこっそり王都へ出かけた時にシアちゃんと出会ったらしく、初めて出会った時シアちゃんのワンピースにアイスをぶつけてしまったらしい。その時シアちゃんは一切怒らず寧ろほとんど食べていないアイスを気にかけてくれてアイスをご馳走してくれたんだとか。
ただエドがご馳走なるだけでは気にしてしまうと思ったのでしょう。自分も食べたいから一緒に食べよう!という体でご馳走してくれたという話をエドから聞いた時、気配りのできる優しい子だということがわかりました。
また八百屋さんでのトラブルも自分の持ってる知識を駆使し迅速に円滑に解決したという話も伺いました。
その時にじゃがいもを自分の領地でも栽培しようというしたたかさもあるということを知りました。
「王妃殿下、そういえばルシア様がこの前ですねーー」
珍しくフィナが私の部屋に戻ってきた時そう言ってフィナが思い出した様に笑いながら話し出したことがあったわ。
なんでも我が国の情勢を教える教師との授業の時。
教師が「ルシア様はどうすればこの国の治安をより良くさせると思いますか?」と質問したらしいの。
その教師的にはシアちゃんが答えられず悩んで終わりだろうと見こして、それを考えることを宿題にする予定だったとか。
しかしその時シアちゃんは「平民の教育の向上」と答えたそうで、前に王都へ行った時の八百屋のひと悶着の話をしたらしいのです。
「その奥さんはじゃがいもの性質について『知らなかったから』ひと悶着を起こしたわけで『知っていれば』そんな問題も起きなかったはずなんです。犯罪は様々だと思いますがある程度の知識を持てばトラブルは少なくなりその結果犯罪も少なくできるはずです。」
そう答えたシアちゃんに教師が目から鱗とばかりに逆に色々な話をシアちゃんから聞きたがっていたとか。
「ふふっ平民の教育ね…誰も着目してないことを普通に閃くなんて…」
「そうなんですよ、その話がどうやらかのベルベット公爵のお耳にも入ったらしくルシア様に興味を持たれたようです。
あとですね、魔法の授業の教師が最近お忙しい方でどうやらまともな休息も食事もされてない様でして、それを見かねたルシア様が急遽お茶の準備をしてくれと私達に申し付けましてね?」
再びフィナが何かを思い出す様に笑った。
「今日は授業をお休みしてお茶でも飲みましょう?とルシア様が教師に提案したら教師が遠慮しちゃってですね『いえいえ!大聖女様の教育係の私が大聖女様とお茶会なんて恐れ多い!!』って断ったら『いいですか?教わる方も体力使いますけど教える方は更に体力使うんです!!!良いから飲みなさい!!!』って半ば命令でお茶を飲ませたんですよー!」
その話を聞いた時、私もフィナ同様笑いが止まりませんでした。
彼女は頭の回転が速いだけでなく思いやり深く、ユーモアさもある素敵なレディだったのね。
それからリチャードはリチャードでシアちゃんの話を色々聞いていたようで私達は既に未来の娘の様に彼女を見ておりました。
娘がいないから余計に可愛かったのもあるかもしれないけれど、彼女の話を聞けば聞くほど好きになりいつしか私や陛下は『ルシアさん』や『ルシア嬢』ではなく『シアちゃん』と呼んでおりました。




