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外堀は既に埋められていた

王宮へ戻りアルバート殿下のエスコートで部屋に着いた時アンやフィナに心配させたことを謝った。


「ルシア様に無茶をするなとは申しません。ルシア様は昔から思わぬことをなさる方でしたから。ですが今後無茶をする時は事前にお教えください」

「ぜ、善処します…」

アンの愛ある説教を受けてる私を見て苦笑いするフィナ。

フィナは「ルシア様がご無事で良かったです」と言って私を労わった。


今日はリリアンヌはいないようだ。



コンコン


ドアのノックでフィナが対応に当たってくれた。アルバート殿下だ。

先程別れたばかりなのに何の用だろう?


アルバート殿下の分も手際よくお茶を準備しアンとフィナは端に控えた。



「シアに会いたくてさっき別れたばかりなのにまた来てしまったよ…というのは本当なんだけど、シアには明日も時間を空けてて欲しいと頼みにきたんだ。

明日は俺と君との婚約の話を進めようと思ってね」

カップを置いたアルバート殿下はキラキラした笑顔でそう言ってきた。


「明日急遽で申し訳ないがシュレーゼン伯爵にも王宮へ来てもらう。シアもそのつもりで。」

「わ、わかりました」

その会話をしてから「俺もやることができたからここでお暇するよ」と席を立ったアルバート殿下を見送った。


…婚約かー、今さっき想いが通じ合ったばかりなのに実感沸かないな。まぁ貴族の結婚なんて大体こんな感じなんだろうね?寧ろ恋愛結婚の私達がレアなんだ。


そう考えた時ふととても重要なことを思い出した。



てか待って…アルバート殿下と結婚するということは…私が次期王太子妃…!?


顔からサアアと血の気が引いた。逆に何故今の今まで思い出さなかったのか。

急に自分が次期王太子妃になることに胃が重くなった。


「お嬢様、これ以上の夜更かしは明日に響きますので早めにご就寝ください」とアンに言われるまでその日は心ここにあらずだった。





次の日護衛騎士の先導で私は王宮の一室の応接間に向かっていた。


「あ、お父様」

その時豪華な階段を降りてきたお父様とばったり再会した。


「おぉ、シア!元気だったか?」

王宮に住んでから実家には一度も帰れてなかったからお父様はとても嬉しそうに私を見た。


「私も他に用があったからシアの婚約の儀の前にそちらを済ませてきたんだ。一緒に行こう」

それに頷き私達は共に応接間に向かった。



私達がソファに腰を掛けてしばらくすると国王陛下とアルバート殿下が入室し、私達に対面するように席に着いた。

「今日という日を迎えられたことを嬉しく思う」

陛下の威厳のある落ち着いた声に緊張しながらも婚約の手続きが進められた。

手続きが滞りなく進み私はアルバート殿下の婚約者となった。


「ふむ、これで手続きは完了したか。後は追々婚約者のお披露目のパーティーを開くから各々そのつもりで」

陛下のお言葉に私達はそれぞれ頷く。

王族の婚約者のお披露目だもんな、しかも次期王太子妃のお披露目だもの…パーティーは開くよね…。


淑女の仮面を被り優雅に微笑んでいたが内心の私は青ざめていた。昨日もプレッシャーからからか、質の良い睡眠を取れていない気がする。

私の内心の怯えを察知したのか、陛下がふとこちらを見て微笑み「手続きは完了しもう婚約は結ばれた。疲れただろうからアルバートと共にお茶でもしてきたらどうか?」と提案されて、アルバート殿下に手を差し出され応接間を後にした。





美しい庭園に連れ出されてようやく一呼吸おけた。


アルバート殿下は優しい笑顔でこちらに気遣うようにお茶を勧めてくれた。


「シア、お疲れ様。昨日の今日で大変だったと思うけどありがとう。…シア、王太子妃になることを恐れているのかい?」

お茶を一口含み気持ちを落ち着けることが出来た私にアルバート殿下は顔を覗き込んで聞いてきた。


「そうですね、正直に申し上げますと恐怖ですよね。お恥ずかしながら私はアルバート殿下を男性として好ましく思っておりました、が、その時アルバート殿下が王太子殿下であることが頭からすっぽり抜けてしまっていたのです…。」

そう、アルバート殿下のことは好きだ。異性としてちゃんと好きになった。


この婚約のバタバタで、は!!っと彼が王太子殿下であったと思い出したのだ。


「この婚約で次期王太子妃になるということを改めて目の当たりして、正直ビビッております。私は次期王太子妃としての教養もありませんし、その器があるか、と問われても自信もないですし…。」

とありのまま今の気持ちを伝えればアルバート殿下が慈しむように微笑んだ。

「シアは俺の事を王族の人間ではなく男として見てくれて愛してくれてたことがとても嬉しい。…それに君が心配する次期王太子妃としての教養か?それなら心配しなくても良いよ。」



その後私はとんでもない事実を知ることになる。



「君は既に王太子妃及び王妃教育を受けているからね。」




……はぁあああ!!?



「ちょちょちょ…ちょっと待ってください。へ!?」

「いやだから君は既に王太子妃及び王妃教育を受けているって。君はとても優秀だからこの短期間で王太子妃教育は終えて今は本格的に王妃教育を受けている段階だったかな?

君が王宮で受けてた教育に何も違和感はなかった?君は全部聖女教育だと思ってたみたいだけど、聖女教育と並行して王妃教育も受けてたんだよ?」

その衝撃的な真実に呆然としながらアルバート殿下を見つめていた。


「いくら優秀なシアでもそれはきついと思うから王太子妃教育も学院を卒業するまでに終われば良いかなって思ってたんだけど、聖女教育と並行しながらよく王太子妃教育をやり終えたね?これは本当にすごいことだよ」

「えっ…あの教育って王宮に住むからには必要な教養だったからじゃあ…要人も滞在するし聖女として対応することもあるからって…」

「そう言わなきゃシア逃げちゃうでしょ?俺はあの時既にシアが好きでシア以外と結婚する気はなかったからこっそり聖女教育の他に王太子妃教育と王妃教育を盛り込んだんだ」

笑顔でとんでもないことをぶっこんできた我らが王太子殿下。


「流石にシアの負担を増やした自覚はあって心配になったからちょくちょく様子見に行かせてもらったけど…シアは本当に素晴らしい努力家だと思ったよ。惚れ直した。」

甘い空気を醸し出してきたアルバート殿下に応える体力も底つきていた私は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。



既に外堀は埋められていた!!!この王太子殿下恐るべし…!!!




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