なんであなたがいるのですか?
ドゥオンヌ家で迎えた爽やかな朝。
客室でボーっと寛いでいればバタバタと廊下の方が騒がしい気がする。
「ルシア様!失礼します!!朝早くに申し訳ございません!!」
ドゥオンヌ家のメイド長が慌てて部屋に入ってきた。
「ルシア様!!!大至急お着替えをいたしましょう!!それとお化粧を!!」
「へっ」
「さぁ!!あなたたち!至急ルシア様のご準備を!!」
「「「かしこまりました」」」
呆然として間の抜けた声を出した私をよそにメイド長が他のメイド達に私の身支度を指示しだした。
何が何だか分からないがクリーム色の新品の素敵なワンピースに着せ替えられ、髪には可愛らしい小さなダイアモンドが散りばめられた髪飾りをつけてメイド長に促されるがまま部屋を出て階下に降りた。
玄関ホールには険しい表情のセーラがいて、これは一体どういうことか聞こうとしたら入り口に立っている人物に気付き思わず立ち尽くしてしまった。
「な、なんで…」
そこにいたのは私服姿のアルバート殿下だった。
「なんでって、今日はシアと出かける予定だっただろう?」
きらきらとした笑顔のアルバート殿下だが少し圧を感じた。
「ルシアが聞きたいのは何故ここにルシアがいるって知ってるか、ということだと思います」
セーラは固い表情のままアルバート殿下の前に立ち塞がった。
「王家の影を最大限に使った」
なんてことないと言った風にアルバート殿下が答えた。
「シア、準備ができたようだな?今日も綺麗だ」
さぁ行こうとアルバート殿下が手を差し出した。
「…私は行きません」
「シア、恐らく君は誤解してる…きちんと話がしたい」
真剣な目でアルバート殿下は私に訴えかける様に言う。
うーん、正直話す気分では無いのだが話さねばならないのだろうか…。
昨日冷静になって考えてたのだけど、私としてはしばらくそっとしてもらって次お話する機会があるのなら何事もなく接していければ良いかなという弱腰対応をすることにしたのだが…
でもこの前泣いたとこ見られたし私の考えは甘かったか…と考え直して「分かりました」と頷いた。
セーラは大丈夫なのか?という様な目でこちらを見ている。
私はそれに頷き、アルバート殿下の手を取った。セーラには後で改めて色々気にかけてくれたことのお礼をしなくちゃね。
アルバート殿下のエスコートで馬車に乗り、王都の端の方で馬車から降りた。
その間ずっと私は外の景色を見ていたが対面して座ってるアルバート殿下の視線をひしひしと感じた。居心地の悪いことこの上ない。
馬車から降りた私達はしばらく歩き、王都の街中を歩く。
まだ朝も少し早い為か人がいつもよりまばらに感じる。
気が付けば私やエドがよく来ていた公園に着いていた。
「アルバ…アルもよくここに来ていたのですか?」
「いや、ここにはよくシアが訪れていたって影から聞いていたから来てみたかったんだ」
噴水の前のベンチにアルが腰をかけて私にも座るように促した。
ほんの少し間を空けて座る私に一瞬悲しそうな表情をしていたがいつもの穏やかな表情に戻し口を開いた。
「シア、俺はシアが好きだよ?」
…は?この期に及んでまだそんなこと言うのか?
一瞬イラっとしたがここで怒ってはいけない。一回深呼吸して私はアルの方を見る。
「存じております。友人として私を好いてくれてるのはとても嬉しく思います」
完璧な作り笑顔で嬉しそうに言ったが、アルは「違う!!」と声を荒げた。
「シアのことは女性として愛しているんだ」
熱の帯びた目で見つめられれば恋愛初心者の私はどうしても顔が赤くなってしまう、これは不可抗力だ。
頬を両手で押さえ、火照った顔を冷ます様に視線を下に向けて深呼吸する。
そして落ち着きを取り戻し再びアルと向かい合った時、照れたのかアルも赤面していたがそれに構わず言葉を発した。
「最近アルと親しくしているご令嬢はどうなったのですか?」
「親しく…?あぁネプチューン子爵令嬢のことかな?確かに最近彼女には世話になっている…が、特別親しくしてるわけじゃないぞ?」
「アルもご存じのようなので言いますけど、私はあの時図書館で見たのですよ。アルがそのご令嬢と良い雰囲気になってキスしていたのを」
「キ、キス!?俺はそんなものしてないぞ!?」
いや待て、見ようによってはそう見えたのか…?とアルは青ざめながらブツブツ言っていたが、私はもう話は終わったという様に立ち上がった。
その姿を見たアルが再び慌てだし、「待ってくれ!!まだ話は終わってないんだ!!」と叫んで私の前に立ちはだかった。
その瞬間跪き、全く予想していなかった言葉を発した。
「シア、愛してる。俺と結婚してくれ」
そう言いながら取り出したのは美しいダイアモンドの指輪だった。




