変化
「すまない、明日は用事があって学院に遅れて行くから一緒に登校はできない」
アルバート殿下とエドワード殿下と3人でお忍びで王都へ出かけてから数日後、夕食を食べ終えて寛いでいたところでドアをノックされフィナに応対してもらっていたら来訪者はアルバート殿下だった。
「わかりましたー、あ、ご公務ですか?お疲れ様です」
「いや公務ではないんだけどね…、そうだ、その埋め合わせってわけではないけど今度の週末早速2人で王都へ出かけよう!」
「え!?この前出かけたばかりなのに大丈夫なんですか?というか、ご公務があって学院欠席になりそうなことがあると私も分かってますし、埋め合わせなんて…そんな気を使わなくても大丈夫ですよ?」
「いや、俺がシアと一緒に出掛けたいんだ。今ある仕事も週末までには終わらせられそうだし、だから週末は予定を空けててくれ」
「わかりました」
きらきらした笑顔で言われれば何も言えない。
最近心なしかアルバート殿下と共に過ごすことが多い気がする。
王宮住みになったからだろうと周りから言われるけども、いくら王宮住みだと言っても相手は王族。そう簡単に会えるもんじゃないと思うのが普通だろう。
現に王宮で住み込みで働いてるメイドや執事もそこまで王族に会えるか?といったら絶対会える方がレアだろう。
立場が違うと言われればそうかもしれないが、私自身アルバート殿下やエドワード殿下とは会ったことはあるが、前に学院長室で国王陛下とお会いしたことを除けば国王陛下や王妃殿下とお会いしたことがない。
そんなわけで今日は私1人で登校してる。
「おはよう、ルシア。あら王太子殿下のエスコート無しって珍しいわね?」
セーラがきょとんとした顔でこちらを見ている。
「おはよう、セーラ。なんか今日は用事あるみたい」
そう答えながら机の上に荷物を置く。
「はっ?!」
お昼、ランチを食べようとカフェテリアへ移動していた時セーラが変な声をあげて立ち尽くした。…と思ったら突然私の目の前に立ち塞がって「今日は違うとこでランチ食べましょ!?」と何故か慌てたように私をUターンさせようとした。
「えーー…ここまで来たならカフェテリアで良いわよ」
そう言いながら目の前に立ち塞がっているセーラを避けて前方へ歩こうとしたその時。
最近ようやく見慣れた美しい金色の髪を靡かせた美青年…アルバート殿下が廊下の端に立って誰かと話している。
隣にはロイド様がいるがアルバート殿下は逆隣りの方を向いて何かを話しているようだ。こちらからでは話し相手はちょうどアルバート殿下の影になっていてよく見えない。
クリス様かしら?と思ったらアルバート殿下の影から出てきたのは可愛らしい色素の薄いブラウンの髪をハーフアップした小柄な女子生徒だった。
何やら親し気に話しているなぁと思ったらアルバート殿下がすごく嬉しそうに笑っていた。
……ん?
あ、アルバート殿下って勝手に女性に対して苦手意識持っているって思ってたけどこんなに嬉しそうにお話もできるんだね。ちょっとびっくりした…。
そりゃクラスには女子生徒もいるし話すことはあるだろう。だけどあんな笑みを浮かべて話すところは見たことない。作り物の王太子スマイルではなく自然な笑顔。
私の前で話すときはいつも自然な笑顔だった。だけど自分が特別仲良くしてもらってると勝手に勘違いしてたのだろう。一緒にいる時間も多くなったことも勘違いに拍車をかけている原因かもしれない。
今まで無意識に自惚れていたことに恥ずかしくなりながら、セーラに「やっぱ違うとこいこっか?」と声をかけた。
セーラは複雑そうな顔をしている。
そしてその日からアルバート殿下と一緒に学院に行くことがなくなった。
2日目も一緒に来ないことに驚いてたセーラだったが3日目には眉間に皺を寄せていた。
ソフィアも最初一緒に登校してないことをセーラから聞いて驚いていたが3日目に「不敬罪で捕まる覚悟で私王太子殿下に聞いてきます!!」とプンスカ怒り出し今にも殿下の教室に殴り込みにでも行くのではないか?という勢いだった。
「そ、ソフィア落ち着いて…」
ソフィアのおかげで沈んでいた気持ちが少し落ち着いた。
…とは言え元気がないことも嘘ではなくて、放課後になってもまだ帰りたくないなぁと思った私は特に目的もないけども図書館へ行こうと教室を後にした。
「…一体王太子殿下は何をお考えなのでしょう…」
「分からないわ…実は例のご令嬢と一緒にいるのあれから何度か私もルシアも見てるのよ…。このままこの状態が続くようなら私も不敬罪覚悟でお話に行くわ!」
ソフィアとセーラがそんな会話をしていたこと等私は知らなかった。
そして何気なく図書館へ行ったことを後悔することになるなんて今の私は思いもしなかった。




