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アルの正体

王宮のとある一室。


私は後ろにアンとフィナを控えさせ目の前のソファーに座っている少年をじっと見た。

少年は居心地悪そうにこちらの様子をチラチラ見ている。


私の知ってる少年は茶色い髪を無造作にはねらせたわんぱく坊主でよれよれのブラウスに少し丈の短くなったズボンを穿きボロボロのスニーカーを履いている。


しかし目の前に座っている少年は明るい金色の髪の毛はさらさらしていて綺麗で高級そうなシャツに光沢のあるパンツに新品のような革靴を履いている。



「…あなたはだれなの?何者なの?」

私の問いに答えず俯くアルと名乗っていた少年。


まぁ王宮の中を護衛を連れ立って歩いてる少年って時点でおおよその検討はついてるけど。




コンコン

部屋のドアがノックされフィナが対応に当たった。


「ルシア様、王太子殿下がお見えになっております」

フィナの言葉に少年がビクッと体を震わせた。


アルバート殿下が部屋に入り、私と視線が合わさった時にこりと優しそうな笑みを浮かべたが、少年の姿を見るや否や眉間に皺を寄せた。


少年を見据えたまま私の隣にドカッと座るアルバート殿下。


「シア、彼は俺の弟の第二王子だ。もちろん庶民ではなくれっきとした王族だ。」


…やはり、王族であったか。しかもアルバート殿下の弟君の第二王子。

そう言われてみるとアルと名乗った少年の本来の姿を見れば目鼻立ちははっきりし美しくも凛々しい感じのお顔立ちやら美しい金色のさらさらした髪の毛やらアルバート殿下に似ているではないか。


「さて……どういうことか説明してもらおうか?エドワード」

アル…エドワード第二王子がアルバート殿下の言葉に震えながら口を開いた。


「兄上が王都へお忍びで色々見聞を広めておられるのは僕も知っていました…だから僕も王都へ行くことに憧れを抱いておりました…。兄上が王都へお忍びに出かける際ご自分の髪色や目の色を変えることができる魔具をお持ちでいらっしゃったことは知っておりましたので僕も同じ性能の魔具を宮廷魔導師から作ってもらいました…」


エドワード殿下がアルバート殿下の顔色を伺いながら話していたが『宮廷魔導師』のくだりでアルバート殿下の眉間の皺が一層深くなったことを私もエドワード殿下も見逃さなかった。

エドワード殿下は「ひえっ」と情けない声をあげる。


「…あいつらが無断で未成年のエドワードにそのような物を与えたことについては後で言及するとして…エドワード、お前はその俺が持っていた魔具と同じ性能の魔具を用いて王都へ出たのか。」


「はい…」


「ではその時にシアと出会ったのだな?」


「はい…シアと出会ったのはその時…ひええ」


今度は私の名前が出た瞬間に先ほどの眉間の皺より更にひどい皺ができていた。アルバート殿下の圧で人1人殺せそうなオーラを感じる。


「…お前、仮にも年上の女性で今や聖女となった人だぞ。愛称で呼ばずきちんと呼べ」


「えっ…兄上は「良いからきちんと呼べ」…はい…」


お前はどうなんだ?と暗に言いたかったのだろう。エドワード殿下は思わず突っ込みそうになったがまたもやアルバート殿下の圧で大人しくなった。


「…初めて僕が王都へ出た時は見る物全てが新鮮でどのお店も興味深くとても楽しかったんです。

1回だけにしておこうと思ったけどまた行ってみたくなり…

2回目行った時にシア…ルシア嬢にお会いしました。まさか人と交流するとは思ってなくてびっくりして思わず兄上の愛称を自分の名前として教えてしまったのです…。」


あぁ…『アル』ってアルバート殿下の愛称だったのね…。

そしてもう1つ分かったことがある。


「アルバート殿下も王都へよくお忍びで行ってたのですね?」


「ん?あぁそうだよ」


「なるほど…道理で…。いえ、前にハンバーガーを召し上がってもらったじゃないですか?あの時不思議に思ったんです。

殿下が庶民の食べ物を食べ慣れてるように見受けられたので」


そう、私が前に領地でアルバート殿下にハンバーガーをご馳走した時、殿下は王族であるにもかかわらず何の躊躇もなくがぶりとハンバーガーを食べたことに違和感を覚えた。


普通なら私の両親のように食べ方が分からなかったり食べ方を教えても躊躇したりするはずだ。


「あーー…確かに俺も色々食べ慣れてるからな、今度美味しい店に連れて行こう」

今までの険悪ぶりが嘘のように私を笑顔で誘ってきた。


「お?…ということは王都へ行きたくなったら王宮住みになっても行けるのですか?」

本来の疑問を投げかけてみれば「食いつくとこそこ!?」と何やらよく分からないツッコミをいただいた。いやいや今まで王都へお出かけできてた私にとって、それは十分食いつくとこだろう…あ、アルバート殿下は私も王都へ何度もお出かけしてるのは知らなかったわ。



「あの…!兄上、僕も気になることがあるので王都へご一緒したいです」


おそらくエドワード殿下が言っているのはあのパン屋のことだろう。

私は少しは報告としてどの位の成果が出ているか聞いているが実際に見てみないことには何も言えない。


「それなら私からもお願いします、アルバート殿下。私とエドワード殿下を王都へ連れて行ってください。」


私達の言葉にため息をつきながら了承したアルバート殿下。

「俺もついて行くからな?」と念を押されてしまった。


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