聖女の学院生活
朝、学院前に王家の紋章が刻まれた馬車が停まる。
アルバート殿下の手を借りて馬車から降りた。
初めてこのように登校してきたときは辺りは騒然としていた。
それでなくてもジュピター家は禁術を使い死罪が確定するだろうと学院中で話題になっていた時だ。
もう1つの話題である新たな聖女がアルバート殿下と共に登校してるではないか、騒がないことの方がおかしい。
一部では真の王太子殿下の婚約者はその新たな聖女ではないかという噂も流れた。
共に魔界から召喚された魔獣を討ち取った者同士、共に助け合いお互いに背中を預けてるうちにそんな恋心が芽生えたのではないか…?と…。
だが断言しよう。その当事者が。
そんな甘い話はまっっっっっったくないのだ。
いや、よく考えたら告白のようなものをされた気がしなくもないが果たして告白だったのか?今となっては分からない。
というかそのケルベロスのゴタゴタでなんて言われたか忘れたと言うのが正直な話だ。
だがかと言ってその話をぶり返されても困る。
もし万が一告白だったとしても今私は色々なものに追い込まれてる為とてもとてもそれに応える余裕等ないからだ。最近は生きることで精一杯です!!
甘い話は全くないし、甘い話になっても余裕がないと噂の真相を聞いてきたクラスメイトに答えればドン引いた顔して立ち去っていく。そしてその噂はたちまち消えてった。ごめんね、期待に応えられなくて。
そんな訳で今やアルバート殿下と一緒に登校してもびっくりされなくなった。
アルバート殿下がなんなら教室までエスコートしてくれても前まで騒がれていた訳だが、今では騒ぐクラスメイトもいなくなった。
いや騒がれたい訳じゃないけど、こういうのってしばらく噂は続くよね?寧ろ噂をかき消したいって本人願ってもしばらく騒がれてるもんだよね?こうピタッと騒がれなくなるの?と何かの力を感じなくはないが、そこを突っ込んで騒がれるのも嫌だしそっとしておくことにした。
そして私の中で大きな変化だった髪色と目の色も他の人は慣れた様だった。
これまた最初のうちは『私』と認識されないくらい違和感があったようだけど。
最初次の日目が覚めれば元の色に戻ってるのかなぁ?と考えたりもしたけど色が変わった日から2週間近く過ぎた現在でも変化なしということは、これが自分の色となったのだろう。
さらさらと淡い金髪と美しい緑と青のオッドアイがお人形のように見えなくもない。(自画自賛)
前まで素朴な可愛らしさだったけど今の私は洗練された可愛らしさ。(自画自賛)
……とまぁこんな感じで今までの生活が一転したのです…。
学院での授業は王宮での勉強に比べたらとても簡単に感じられて、逆に王宮の勉強に重きを置いてもそれなりに上位に組み込めそうな気もする。一応基本は何の分野でも大事だから授業もちゃんと受けるけども。
一番激変したのは実技の授業。
今まで見学しかできなかった実技の授業も率先して取り組むことができるようになった。
しかもそれまで魔力がなくて出来なかっただけであって腐っても光の大賢者と呼ばれた時もあった私は効率よく魔法を扱うことができる。
手応え的に実技も上位に組み込むことができるだろう。
「え?リリアンヌが?」
ランチでリリアンヌから驚きの出来事を聞かされた。
「えぇ、以前私は王太子妃の侍女として将来王宮へあがると申しましたよね?今回ルシア様が聖女として王宮へあがられたことで王太子殿下より打診がございまして…侍女の勉学の一環としてルシア様に仕えてはどうか、と」
リリアンヌがクールキュートのお顔を緩ませ可愛らしい笑顔で教えてくれた。
「ですので来週からルシア様の方へご挨拶に伺わせていただきますので、よろしくおねがいしますね?」
王宮へ帰れば護衛の騎士からメイドさんから色んな方に迎えられ自分に与えられた部屋に戻って行く。
そういえば色々忙しくして忘れていたけど最近王都へ行けてないな…というか王宮住まいになったら王都へ行くことも制限されるんじゃなかろうか?と部屋までの道中で考えていた。
その辺り後でアルバート殿下に確認してみよう、そう思った所で前方から1つの集団がこちらへ向かって歩いてきた。
私は私で色んな人を連れ立っているから1つの集団のようではあるのだが、あちらも負けず劣らずな人数を連れ立っている。
騎士が先行して歩いてる為誰が主なのかは初め分からなかった。
しかし私の先方を歩いている騎士たちがあちらの主が誰なのか分かったからか、端の方へ寄り敬礼している。
私は騎士ではないから敬礼はしないけれど騎士に倣ってあちらの集団に道を譲った。
恐らく国王陛下の側近か宰相か…はたまた王族の誰かか。
それならばこちらで習ったように端に寄り綺麗な角度でお辞儀したまま通り過ぎるのを待つか。
そう思い、習った角度のお辞儀をして集団が通り過ぎるのを待っていた。
だがその集団はちょうど私の前で止まってしまったのだ。
あ、聖女としてご挨拶した方が良いのか…?
お辞儀したまま考えていれば聞いたことのある声が私の耳に届いた。
「…シア?」
思わず顔を上げれば、髪色やいつのも恰好と全然違うけれど見知った顔がこちらを見て固まっているのが分かった。
その人物を見て私も同じくらい…いやそれ以上に驚いた。
「……アル?」




