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嵐の前の2

その日はもうてんやわんやだった。


ケルベロスが現れたという事実は合同合宿に参加していた生徒全員に伝えられ、合同合宿は急遽打ち切り学院に戻ることになった。そして学院の伝令によってその生徒の保護者にも伝えられた。


学院に戻る時も念のため、騎士団を護衛につけた馬車にそれぞれ生徒を乗せた。


学院では緊急の全校集会をして関係者以外は全生徒家に帰らせた。



私達はというと学院長室に集まった。

驚くことに学院長室にはなんと国王陛下もお越しになっていた。

先程ディール先生が報告が受けたことを今度はディール先生が国王陛下と学院長に説明した。

少し白髪の交じった美しい金色の髪を後ろに流したダンディな国王陛下と立派な白髭を持った優しそうなおじいちゃん学院長が静かに聞いていた。


「…そうか、あとは現地調査に向かった騎士団の報告を待つか…君たちはよくやった。特にアルバート、ソフィア嬢、そしてルシア嬢」


その時国王陛下が私の方に向いた。


「ルシア嬢、君は聖なる力に目覚めたのだな、ソフィア嬢同様王宮の聖堂で聖女として今後生活することになるだろうが、今日は君達も疲れただろう…各自自分の家に帰るように。ルシア嬢には改めて後ほど遣いに連絡を寄こさせよう。それでは皆の者、解散だ。」

私達が頭を下げ国王陛下とアルバート殿下が先に退席した。

その後をロイド様とクリス様がついて行った。



王族が退席したからと言って私達はすぐには退席できない。しばらく時間を置いてから私達も学院長室を後にした。




「そういえばルーク様はあの朝どこにいたの?」


「あの時魔力補充していたことはみんな知ってるよね?僕は森の中に入って魔力補充していたんだけど、動物達が騒がしくてね、何か嫌な予感がしてひとまず先生方に報告に行ってから君達と合流しようとしたんだけど、集まってるはずの場所に誰もいなくてね…先生方とセーラ様の班の方々の手を借りて君達を探してたんだ。」


「そうだったのね…心配かけてごめんね?」


私がルーク様やセーラに謝ればセーラが抱き着いてきた。


「良いのよ…ルシアが無事に戻ってきてくれたんだもの!それよりルシアの髪も目の色もとても綺麗ね!前の色合いも落ち着いて素敵だったけど今の色も同じくらい好きよ?」

私のことを気遣って話題を変えてくれたセーラの優しさが嬉しい。


「ふふっ…ありがとう」

笑顔でお礼を言えばその場にいたセーラやソフィア、リリアンヌが頬を赤らめた。

ルークは何故か後ろを向いている。



「覚醒したルシアの笑顔は強烈ね…」

「えぇ…アルバート殿下がこちらにおられたらまた暴走なさるところでした」

セーラとソフィアがひそひそ何やら話しているが、まぁ気にしないことにした。





家に帰ればお父様とお母様が出迎えてくれた。

2人とも心配してくれてたのだろう。髪色や目の色が変わったことに驚いていたけれど、私が帰ってきたことを涙を流して喜んでくれていた。



「学院からの遣いと王宮からの遣いでシアの身に起こった出来事は聞かされていたが…本当に無事に帰ってきてくれて良かった…」


魔力が覚醒したことも喜んでくれていた。私が魔力無しだと一部の人間から蔑まれていたことを知っていた両親はこれで私が傷つかず済むと安堵したようだ。


「ただシアが聖女に認定されたら王宮の方へ行ってしまうわね…寂しくなるわね」

とお母様は少し寂しそうに笑っていたが。



学院は1週間程休みになった。

一応生徒達の心のケアも必要かもしれないとのことでここも念のため休みになったようだった。


私自身帰ってきたその日の夜急な魔力覚醒で体が参っていたのか熱を出し、次の日は寝込んでいた。



その次の日も熱が冷めずベッドの中で寝込んでいたら、私が熱を出して寝込んでいることをどこからか知ったのかアルバート殿下がお見舞いの花束を届けてくれたらしい。



3、4日過ぎた頃、ようやく微熱まで収まりゆったりとしたワンピースを着て部屋で寛いでいると

「アルバート殿下がお越しです」

とアンが私の元へやってきて告げた。



このアルバート殿下の訪問が私の今後の生活を大きく変えるきっかけになる。



ワンピースの上にカーディガンを羽織り客間へ行くとお父様とお母様、アルバート殿下が既にソファーに座っていた。


「お待たせして申し訳ございません。」

お父様に着席を促されて私はお父様とお母様が座ってるソファーの方へ座った。


「やぁ具合はどうだい?」

アルバート殿下が心配そうに私を見る。


「おかげさまで微熱程度まで熱も下がりました。お見舞いありがとうございました。」

私が礼をすればアルバート殿下は笑顔で「少しずつ良くなってるなら良かった。」と答えてくれた。


「さて、まだ微熱程度でも熱があるシアにこんな話をするのは申し訳ないけれど、先程君の親御さんにも話していてね、君には聖女の認定を王宮の敷地にある聖堂で正式に受けてもらう。その後君には王宮で生活してもらうことになる。」


「あ、あの質問よろしいですか?」


「なんだい?」


「私が生活するところはソフィアみたいに聖堂ではないんですか?」


「あぁその理由は色々あってね、最大の理由は君は聖女は聖女でも大聖女の素質があるからなんだ。聖女の存在も珍しいのだが、聖女の中でもとりわけ力の強い大聖女は本当に珍しい存在で、大聖女である君には王宮で保護しようと陛下と意見が一致してね。」


「な、なるほど…」


「そんな訳でシュレーゼン家にはシアの引っ越しの準備をお願いしたい。もちろんこちらも迎える立場として最大限の準備は整っているから何も心配せずこちらに来てほしい」

アルバート殿下のこの指示でこの日からシュレーゼン家の使用人達は私の引っ越しの準備に動き出した。


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