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嵐の前の1

「ルシア様!!!!」

ソフィアが勢いよく私に抱き着いてきた。


「ルシア様!!ルシア様!!!もう!!無茶ばかりなさって!!!本当に…本当に…ルシア様の身に何かあったらどうしようってずっと怖かったんですからね!!!!!」

大人しいソフィアが珍しく声をあげて怒っている。

目には涙をためて、頬には前に泣いたような跡が残っていた。


「ごめん…ソフィア…。もうソフィアったらこんなに泣いて…体の水分なくなっちゃうわよ…」

「一体誰のせいだと思ってるんですか!!!うええええええん」

我慢できずにとうとう泣き出したソフィアを私は「ごめん」と言いながら抱きしめ返した。



「ほんとだよ」

静かな怒りの声が隣から聞こえてきた。

怒ってる声も美声だなぁ…と現実逃避してれば、私に抱き着いたソフィアがそっと離れ、その瞬間体をぐりんとその声の主が自分の方へ向かせた。

「シア…君の勇気ある行動は結果としてはみんなの命を救った…そのことにはとても感謝している。だけど君の行動が最善とはとても言えない。」

静かに怒るアルバート殿下に私は何も言えず下を向いた。


…確かに殿下もいるのに軽はずみな行動だったかもしれない…。戦うよりどうやって逃げるかを本当なら考えるべきだった。


「はい……皆さんを危険な目に遭わせてしまってごめんなさい……」

私がシュンと謝れば急に力強く抱きしめられた。


「シア…違うだろ…シアの何が一番だめかってシア自身の命を軽んじてるところだ。これからはもっと自分を大事にしてほしい。

…怒ってごめん。シアの勇気ある行動で俺達は助かったんだ…本当にありがとう。

でももう頼むからこんな無茶はしないでくれ…本当にシアが無事で良かった…。」

最後は切実な声で懇願するように念を押せば更にギュッと抱きしめられる。

泣き声を抑えるように「シア…」と呟き決して離そうとしなかった。





「みんな!!無事だったか!!」

私達は森の中を抜けて朝いた場所へ戻った時、先程の騒動で忘れられたルークが教員何名かとセーラ、リリアンヌを連れて帰ってきた。ルーク達も教員達もロゼリア様の状況と私の状態を見て驚いている。


ロイド様が担いでいたロゼリア様を置いて教員に先ほどの出来事を報告してくるとその場を離れようとしていた。

ロイド様もロゼリア様を運んだり結界を作るソフィアに魔力を提供したりと疲れてるだろうに…。それよりもロゼリア様の扱いがひどい気がすると指摘したら「もはや死罪を免れぬ罪人なんだから良いだろう」と投げやりな返答をいただいた。


ロゼリア様は目を覚ましても大丈夫なようにロープで縛られている。

クリス様にロゼリア様の見張りをバトンタッチしてロイド様が教員の元へ行こうとした時、ルーク達がやってきたのだ。



「そちらに行く手間が省けた。報告は俺からしよう」

私の隣に立っていたアルバート殿下が教員の1人、私達の担任の先生でもあるディール先生にこれまであったことを報告してくれた。

ディール先生は身分関係なく生徒なら誰にでも対等に接する男の先生でアルバート殿下も所属する生徒会の顧問でもあり、頼りになる先生だ。




「なるほど…んじゃロゼリア嬢によって魔獣は召喚されたが何とか撃退したんだな?」


「あぁ…直ちにロゼリア嬢の護送と現地調査の為の騎士団を派遣させよう…というか既に派遣させているが」


え…?随分用意が良い…。まるで今日の出来事が起こると予測してたような…ま、まさか先ほど私が命がけでしたことは無駄だったのか…!?


「…シア、君の考えてることは何となく分かったが、初めからこの合同合宿は仕組まれたようなもんだと言ってただろう?俺が何の準備もなくこの合同合宿に臨むと思った?」


ジト目で見られてる…。

聞けばアルバート殿下には常に影が何人か付いているのだが今回はその数を増やし、騎士団も他の生徒達に気付かれない場所で待機させていたそう。



「…とは言え、多少の時間稼ぎは多かれ少なかれ必要だった。何と言っても相手があの地獄の番犬ではな…そういう意味ではシアはよく頑張ったと思う。俺達を命がけで守ってくれてありがとう」

今日何度目かのアルバート殿下のハグは大人しく受け取っておくのが賢明だと何となく思い、大人しく抱きしめられる。


「あぁー先ほどの報告にもあったが、ルシア嬢の魔力覚醒であのケルベロスの討伐の成功の一端を担っていたと言ったな?じゃあこのルシア嬢の髪色と目の色は魔力覚醒の影響か?」

デーィル先生は私の方を向きふむ?と首を傾げた。


魔力覚醒とは本来魔力無しの人間に起こり魔力を発生させる。

主に魔力無しの平民にごく稀に起こる現象で、魔力覚醒に関しては今も解明されていない。

ちなみに今回のケルベロス討伐は私とアルバート殿下が協力しなんとか退治できたという報告をしている。


それよりやはりと言うべきか、目の色にも変化があったのね。目の色だけは鏡で確認しなければ分からなかったが。


「恐らく…そうだと思います。」


「ふむ…そうか、しかしルシア嬢。君のこれまでの学院での生活態度を見ていれば俺も君の性格はそれなりに把握しているが、今回の一件で君の周りは少し騒がしくなるぞ?ましてや聖の力も備わったという話じゃないか?騒がしくなるのは君の本意ではなかろうが…気をつけろ?」


魔界の魔獣を倒す等騎士団や宮廷魔導師がそれなりの人数で編成して向かわねばとても成功できることではない。それを軽々しくやってのけたとなれば、多方からのアクションは予想される。


私はこれからのことに頭を抱えた。

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